7,これが生徒会の活動なわけがない
「剣人―。一緒に帰ろうぜー。」
「ごめん。今日生徒会があるんだ。」
まっすぐ家に帰らないなんていつ以来だろう。今更ながら少し後悔している。あの生徒会に加入してしまったのだ。あの会長副会長コンビにこれからも対峙していくのかと思うと、嫌気がさしてくる。久しぶりの三喜夫の登場回だが、これで出番は終了だ。
「渡辺君、一緒に生徒会室行こ!」
「ああ、行こうか。」
生徒会の唯一の癒し、西園寺だ。冷静に返事できてはいるが、声をかけてくれて内心ウキウキである。何を隠そう、俺は西園寺のために生徒会に入った。彼女だけを危険な目に合わせることはできないし、このままでは多くの仕事を背負って疲弊してしまう。それに西園寺が俺に入ってほしいと言ってくれたんだ。ノーという男なんてどこにもいない。そして、仲も一緒に深めていき、いずれ告白してみせる!
「正直なところ私だけだったら不安だなって思ってたの。でも渡辺君が入ってくれたから安心だね。」
「そんなに期待されすぎても困るよ。」
「ふふ。私もまだ覚えたてだけれど、書類のまとめ方とかいろいろ教えていくね。」
ああ、幸せだ!こんなに一緒に会話ができるなんて!まだ初日だが、生徒会に入ってよかった!この時間がずっと続けばいいのに。
とまあ、そういうわけもいかず、生徒会室に着いてしまった。西園寺が部屋の扉をガラガラと開けた。これからが本番だ。心してかかろう。
「お、ちょうどよかった。こんにちは、二人とも。これから会議を始めるぞ。」
何だか神妙な面持ちで会長と副会長が座っていた。この二人が真面目な雰囲気を出しているのを初めて見た。さすがに仕事中は真剣なのか。安心した。変な人であることは変わりないだろうが、根はしっかりした人達だってことが分かった。では俺も気合を入れよう。
俺と西園寺も席につき、会長からの第一声を待った。
「本来役員選挙が終わってメンバーが確定してからするべきなのだろうが、君達が選ばれないことはまずないだろうからな。今回は先に、私が考えているこの学校をよくするための政策を伝えておこうかと思う。では、発表しよう。それは…」
それは...?
「学校校則第十二条【スカート丈は膝の見えない長さにする】を廃止するぅぅぅ!!だっ。」
「...え?スカート丈?」
「そうだ。長い間構想していたのだが、人数がしっかりしてきた今!校長に進言しようと考えている。」
もう帰ってやろうかと思った。風紀がどうとか、もっと生徒会長らしいことを言うのかと思いきやくだらない。他にするべきことがあるんじゃないのか。
「渡辺君、『何を下らんことを。他に議論することがあるだろ、このメス豚が。』って思ってるでしょ。」
「え、あ、い、いや。」
「メス豚か...!たまらん!」
いやいや、そこまで言っていない!メス豚が、以外は図星だったからついどもってしまったけど。というより、なんで横井さんに思っていることが見抜かれたんだ?顔に出やすいタイプではないと思うんだが。
「そこまで思っていませんが、議論するほどのことじゃなくないですか?別にスカート丈の長さなんて何でも…」
「それは違うぞ!スカートの丈を短くすることでだな、いやらしさを...」
「女子にとっては由々しき問題なのよ。」
食い気味で会長が力説してくるのかと思いきや、横井さんが割って入ってきた。いやらしさと聞こえたけど気のせいか。ここから先はこの人が説明するらしい。
「女の子は感情的な生き物よ。ちょっとしたことでテンションが上がるし落ち込みもする。その感情の矛先の一つがスカート丈なのよ。落ち込んだ時はたくさん食べるかカラオケ行くかだけれど、足が細くなったとかで嬉しい時はスカート丈を短くするわ。そして恋愛でもそう。好きな男の人がいたらその人の気を引きたいと思って、スカート丈を短くする人もいる。あと女子高生はおしゃれに気を遣うの。スカート丈が長いとやっぱりダサい。自分のフォルムに合わせて長さを決めないといけないの。こういった女子高生の自由を奪うことはあってはならない。だからこそこの校則はなくすべきよ。」
まくしたてるようにして長い説明を言い終えた。ぜえぜえと横井さんの息づかいも荒くなっている。だが、言っていることは確かに説得力があった。もちろん男の俺には経験がないが、スタート丈の長さは女の感情表現だってことか。確かに議論の余地はある。ストレスを貯めてばかりだと良くないからな。
「そういうことなのね、お姉ちゃん。最初聞いたときはよく分からなかったけど、生徒たちの学校生活をよくするためのものってことなのね!」
「あ、ああ。そうとも!小さいことかもしれないが、このような改善を一つずつ積み重ねることが大事だからな!うん!」
歯切れが悪いな。本当にそう思っているのか?
「三人はどうなんですか?短くしたいものなんですか?」
「もちろんではないか!多くの男性からの視線を集めていやらしい気持ちに…」
「さあーて!続きは今度にしましょうか!議論は明日からよ。あ・し・た・か・ら!結論は急ぐべきではないわ!ね、会長!!」
「あ、ああ。」
「お姉ちゃん、何か言おうとしてなかった?」
「なんでもないのよ!ね!?」
「そ、そうだな。うん!何も言おうとしていないぞ!」
いや、言おうとはしていただろ。この人の本性を知っている俺には、何を言おうとしていたかだいたいの予想はつく。そしてこの一連の流れを見て察した。スカート丈を自由にするというこの案、横井さんはもっともらしいことを言っていたが、会長の考えは別のところにある。
「あ、そうだー。花蓮にお願いしたい仕事があるんだったー。ちょっと手伝ってくれー。」
「う、うん。」
そう言って、二人で棚の書類整理を始めた。にしても、セリフが棒読みだったな。
「渡辺君、ちょっと来て。」
「え。分かりました。」
横井さんに呼ばれて会長と西園寺から離れ、教室の外へと出た。またこのパターンか。今度は何だ。
「ふう、危なかったわ。少し油断するとすぐこうなるのだから。」
「あのう…」
「ああ、ごめんなさい。声が漏れてたわね。何のことか、あなたなら察しがついているでしょ?」
まあ、おそらくさっきの話のことだろう。会長のスイッチが入って暴走しようとしていたのは薄々気付いていたが、それを感じさせまいようとした横井さんの迫力にも圧倒された印象の方が強い。そのせいなのか、疲れた様子ではある。
「いつもあんな感じで?」
「ええ、それはもう苦労してきたわ。」
副会長が過去の苦労話を話してくれた。




