表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

24,校則に屈しるわけにはいかない

「荷物でもお持ちしましょうか?」


「いえ、いいわよ。あなた今日どうかしたの?」


「いえいえ。後輩として当然の行動ですよ。強いて言うなら、先輩への気遣いを日々忘れてはいけないと、改めて考えるようになったといったところでしょうか。」


「ふーん。何も企んでいなければいいけど。少し気味が悪いわ。」


 多少ゴマすりもあることは否定しないが、副会長の俺に対する印象はどうなっているんだ。何もしていないのに、評価が低すぎるような。いや、何もしてきてなかったからか。いつの間にか怠け者の烙印を押されていたらしい。だが、それについては納得がいかない。だって、あれだけ生徒会当選のために奮闘したんだ。一緒にたくさんの修羅場を抜けてきたから、認めてくれていると思っていた。お互い信頼しあえる仲だったはずなのに。あ、あれか。風呂場での事件か。あれが俺の印象を全て悪くしたのか。それなら返す言葉がない。逆の立場だったら、要注意人物に認定している。やはり、小さなことを積み重ねて挽回するしかないか。


「薄々気付いているかとは思うけど、あなたに話したいことがあるのよ。」


 早速本題を持ち出してきた。一緒に帰ろうと言われた時から、察しはついている。何なら、どういったことを話されるかもだいたい分かる。


「会長が言っていたことですよね。スカート丈。」


「そうよ。分かってるなら、話が早いわね。本格始動するそうだから、事前にあなたに話しておいた方がいいと思って。会長がこの提案をするに至った経緯をね。」


 ぜひとも聞いておきたい。これからの活動の主軸になるみたいだが、さっき急に聞かされたわけで、全然納得はいっていない。スカート丈についての論争を、生徒会を挙げて取り組んでいくということに誰がすぐに賛同できるのか。できるはずがない。構想期間も長かったと会長は言っていたが、俺からしたらくだらないこととしか思えないのだ。しかし、なぜそこまでこだわっているのか。少しでも納得できるように、聞いておくべきことはたくさんある。


「ぜひ教えてほしいところですが、そもそも副会長は納得しているんですか?やるべきことはたくさんあるはずなのに、どうしてこんな...。」


「こんなどうでもいいことしなくちゃいけないの、って言いたいのよね。」


「…はい。」


「実は最初、私も同じことを思っていたわ。前に、あなたに言ったわよね。女子にとってスカート丈は大事って話。」


「ええ。覚えていますよ。感情を表しているってのと、おしゃれでってことでしたよね。」


「そう。あの時は納得してもらうために言ったのだけど、半分本当で半分嘘なの。中にはそういう人もいるかもしれないけど、私の周りではあまり聞いたことないわ。」


 おそらく、そんなことだろうと思っていた。スカート丈についての説明ではなく、副会長に似合わず必死さが伝わる話し方だったことが印象的で、今も鮮明に覚えているのだ。いつもと違う様子だったから何かあるのだろうと、その時も気になっていたのだ。


「正直な所、スカート丈を短くするのに大した理由なんてないのよ。せいぜい周りが短くしているから自分も、ぐらいだわ。」


「だったら、スカート丈の規制なんて気にしなくていいんじゃないですか。」


「私もそう思っていた。変に短くしてパンツを見られるのを気にするぐらいなら、校則通りにしてればいいわけだし、このままにしておきましょうよと会長にも直接言ったわ。そしたら、会長の雰囲気がいつもと少し変わったのよ。」


「会長の雰囲気が?」


「ええ。その後会長がね、『スカート丈に校則は必要なのか?』って聞いてきたのよ。『生徒たちの規律を守るための校則であれば何も言うことはないのだが、無意味に生徒たちの自由を奪うような校則に対して、私は許すわけにはいかないのだ。スカート丈だけではない。生徒手帳を隅々まで読ませてもらったが、この学校には不可解な校則が多すぎる。これからのこの学校の在り方、後世の生徒たちのためにもおかしな校則は無くす必要がある。そうは思わないか?』その言葉を聞いて、私は何も言わずに首を縦に振ったわ。全く言う通りだっもの。中身はどうあれ、会長の情熱的な嘘のない言葉に心打たれたわ。会長の魅力に引き込まれてしまったのよね。」


 人の心に言葉を届けることは、会長の十八番である。説き伏せてしまうと言うと聞こえが悪いが、あの人の話し方は確かに頷いて受け入れてしまう。俺がその場にいても丸め込まれていただろう。副会長が会長信者に落ちぶれた姿も、容易に想像できる。


「ただ、校則を変えるなんて簡単じゃないですよ。この学校も歴史がありますし、そうなるとここの校則は長く続いている伝統みたいなものになりますから。」


「実は、会長が無くそうとしている校則は全部二年前にできたものなの。」


「やっぱり歴史がありますね…って、二年前?!最近じゃないですか!」


「そう。二年前に、校長が新しく代わったタイミングでおかしくなったみたい。この学校では、校長が代わる度に職員会議で校則の見直しをしているみたいなのだけど、その会議が校長のワンマンで進んでいったみたいでね。あれよあれよと生徒の自由を奪うような校則が決められていったとのことよ。渡辺君、生徒手帳持ってる?」


 自分の胸ポケットに忍ばせている生徒手帳を取り出した。生徒会に入ったから、学校のことについて自分で調べたり生徒から質問を受けたりすることも多いだろうと思って、いつでもすぐ取り出せるようにいつも身に着けているのだ。しかし、今日まで中身を見たことはない。


 副会長から言われた通りにページをめくってみると、校則が八ページに渡って記載されていた。こんなに項目があったのか。多い。しかも小さい字でびっしりと書かれている。こんなもの読もうという気にならない。


「家に帰ってから読みます。」


「何言っているの。今じゃないと絶対に見ないでしょ。早く読んで。」


 読まないと帰してくれそうにもないので、再び生徒手帳に目を向けた。第十二条【スカート丈は膝の見えない長さにする】が確かに書かれているが、ざっと読んだだけで他にも気になる校則がたくさんある。第二十一条【派手な下着を着用してはいけない】、第二十六条【ストッキングを着用してはいけない。タイツの着用は可とする】、第三十一条【マフラーを着用してきてはいけない】などなど。やりすぎに見えるものが、割と多くある。


「同じ人が考えたような内容が結構ありますね。」


「生徒を縛り付けているような校則が、二年前の会議でたくさん追加されていたみたい。極めつけは最後のページよ。」


 これらの校則は、女性陣が一方的に不利益を被っている内容だった。うちの学校は三対七で女子の割合が多く、おしゃれを気にする女子高生たちには我慢ならないだろう。その反面、これは男にとってはわりかしどうでもいいこととも言える。金城みたいな鼻につくような奴は例外かもしれんが、学校へ行くのにおしゃれをしたいという野郎は少ないだろう。ずぼらな俺からすると、むしろ校則で服装を決めてくれた方が楽だと思う。しかし、副会長が言う通りに最後のページを見てみると、そんなことはすべて吹き飛んだ。


「男女交際禁止だってえええ!!」


 知らなかった。この学校に、こんな校則があったなんて。今時ありえない。いつの時代の高校だ?アイドルでも恋愛オッケーがあるこの時代なのに、意味が分からない。校則は、学校の秩序を守るには確かに大事だ。人生経験豊富な大人たちが学生たちのことを考えて、深く練られて作られたものなんだろうと思っていたから、不満など言わずに受け入れた方が間違いないと信じていた。そんな俺でも、この一文に関しては首を縦に振るわけにはいかない。これは裏切りだ。


「副会長!」


「は、はい。」


「こんなふざけた校則、根こそぎ変えてやりましょう!」


「え、ええ。そうね。」


 これほど卑劣なことを考える校長がいたとは。今すぐにでも、どんな顔なのか見てやりたい。いや、会ったことはあるはずだな。毎週配られる校長先生の言葉とかいう全く読む気にならないプリントの中で、俺たちの前でよく登場している。普段はどこで何をしているのかよく分からん。


 あとは、覚えていないが、一回だけ入学式の時に見ているはずである。でも、おかしいな。絶対に校長の挨拶もあったはずだ。いくら世間一般的につまらないと言われている校長の話でも、入学式という特別な時であれば寝るなんてことはそうそうしない。今、思い返してみると…そうだ。校長より断然強烈な出来事があった。会長だ。入学式の冒頭に会長が出てきて面食らった後、しばらく呆然としていたんだった。覚えていないのも無理ない。まあ、ともかく...。


「打倒校長。目指せ男女交際解禁ですね!」


「その前にスカート丈だからね。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ