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【完結】誘惑のヴィクトリア~皇太子妃になりたくないので皇子以外を全力で誘惑します~  作者: 茄乙モコ
【第2章】嫉妬する女たち(恋心、意識編)
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第28話 暗躍するメアリー(2)

カティーサークが私室に戻ると彼女はヴェールを被ってソファに座っていた。

俺はその時(にわ)かに違和感を感じたが、ヴェールから透けて見えるピンク色の髪に惑わされ直観を鈍らせた。


ヴェールを被っている以外は()()()と同じだった。

彼女が最初に「寝屋(ねや)の日」で部屋にいた時と。

ソファの真ん中に座っているのも、少し肌の透けたネグリジェを着ているのも。

そしてテーブルの上にはあの時に一緒に飲んだ10年ものの赤ワインが置いてあった。

ご丁寧にグラスまで…。


俺はきっと侍女長の仕業だなと思った。

あの時と同じにするなんて気が利くじゃないか…。


ただ違うのはあの時は彼女は俺を見るなり立ち上がって挨拶したが、今はただ座っているだけだった。

俺もあの時と同じように向かいのソファに座り、そしてグラスに注いだワインを一機に飲み干した。


「どうしたんだ。ヴェールなんか被って。結婚式のつもりか?それともそんなに俺を見たくないってことか?」


俺はまたワインをクイっと飲んだ。

彼女は黙ったままだった。


「どうした。今度は何も話さないってことか?」


俺は彼女をジロッと睨んだ。

彼女は(なお)も黙っていた。


じっと見ているうちに俺は彼女から漂う雰囲気に違和感を覚えた。

そして彼女が目の前にいるというのになぜか俺の鼓動は波打たなかった。


ヴェールを()がそうと手を伸ばした時、彼女はさっと立って窓の方に移動した。

そして後ろを向いたまま黙って立っていた。


ヴィーじゃない!

俺はなぜかそう思った。

じゃあこの目の前にいる女は誰だ。

本物の彼女は…。


俺は立ち上がって問い詰めようとした時、頭がクラっとした。

おかしい…。

そんなに飲んでないはずなのに。


「お前は誰だ!」


俺はソファの背もたれに手をつきながら女を見据えた。

女は俺に近づき背もたれについた手の上に自分の手を重ねると、甘ったるい声で俺に絡みついてきた。


「殿下の手にやっと触れられましたわ。どうです?体が熱くなってきたんじゃありません?私は殿下の恋しいヴィクトリアですよ。」


女はそう言いながら俺の体に手を這わせてきた。

ねっとりと絡みつくようなその女の手に俺の体は反応していた。

まるで飢えた獣のように俺の体は女の体を求めていた。


「触るな!」


俺は女の手を払いのけ、一歩後ろに退いた。

また頭がぐらっとした。

手で頭を押さえながら、女の顔を見ようとした。

ヴェールの奥からグリーンの鋭い眼差しが光っていた。


「メアリーか。メアリーだな!ここで何してる!」


女は微笑みながらゆっくりとヴェールを脱ぎ、ウィッグを外した。


「殿下、そう焦らないでください。ゆっくり話しましょうよ。」


メアリーはそう言うとベットに腰かけ足を組んだ。

先ほどとは違い不敵な笑みを浮かべていた。

俺はなぜ彼女がここにいるかより、ヴィーのことが気になった。


「ヴィクトリアはどこだ!彼女は今どこに…。」


俺の頭はクラクラしていた。

体は熱く、呼吸が乱れていた。


「殿下、焦らないでと言ったじゃありませんか。せっかちな方…。少しは私を見てくださらないと。せっかく殿下のために美しく仕上げて来たのに。」


メアリーは依然として不敵な笑みを浮かべていた。


俺はこの女が笑う度に言いようのない不安が襲ってきた。

ヴィーはどこだ!

どこにいる!


そう思ったら体が勝手に女の首を(つか)んでいた。


「いいかげんにしろ。ヴィクトリアはどこだ!」


「くっ苦し!」


女はもがき苦しんでいた。

俺は思いっきり女をベットにたたきつけると叫んだ。


「言え!!彼女はどこにいる!!」


すると女は喉を押さえながらゆっくりと起き上がった。


「そんなにヴィクトリアが大事ですか。…そうでしょうね。ずっと見てらしたものね。ダンスの時もその後も。でも…もう手遅れですわ。」


メアリーはくすくす笑いながらカティーサークを見た。


「殿下、苦しいでしょう?ワインに何が入っていたかもうお気づきのはず。それと同じ媚薬を入れたワインを誰に渡したと思います?そしてそれを持っている人は誰といると思います?」


女は薄笑いを浮かべていた。

俺は女が言おうとしていることを想像し体中に怒りと恐怖が駆け巡った。


「殿下がいけないのです。性急に事を進めようとなさるから。だから私も急がざるを得ませんでしたわ。殿下が彼女にこんなことなさらなかったら、私だってこんな手段には出なかったのに。残念ですわ。彼女は綺麗な無垢の体でしたのに…。」


そして女は吐き捨てるように言った。


「もっと苦しんでください、殿下!私が苦しいように!」


メアリーはこれ以上ないくらいに笑った。

そう、この顔よ!

殿下の苦しむこの顔が見たかったのよ!

私はどうしたってあなたを手に入れることは出来ないんだから。

あなたの記憶に一生刻む傷を私がつけるのよ。

そして、私を一生忘れないで…。




カティーサークは顔が真っ青になりながら衛兵を呼んだ。

早く…。

一刻も早く彼女を!


「その女を縛って牢に閉じ込めろ!すぐに騎士たちを集めるんだ!急げ!!」




そして彼は真っ暗な闇の中に飛び出して行った。






メアリーの狂気炸裂の回です。(・v・;)重すぎる純愛=狂気がテーマですので、言ってしまえば彼女もその一人です。

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