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【完結】誘惑のヴィクトリア~皇太子妃になりたくないので皇子以外を全力で誘惑します~  作者: 茄乙モコ
【第2章】嫉妬する女たち(恋心、意識編)
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第23話 メアリーの悪意(3)

最近の俺は()()()ないと思う。

カティーサークは深いため息をついた。


彼女のことになると理性が利かなくなっている。

こうして見えない場所にいると不安で仕方がない。

また隠れてレイヴン侯や他の男に会っているのではないかと、悪い想像ばかりしてしまう。

そしてそれを想像しては自分の中の狂気が収まらないでいる。


舞踏会の日以降さりげなく護衛騎士のクロンに見張らせているが、全然駄目だ。

こんなことで俺の懸念(けねん)がなくなるわけじゃないのに、それでも聞かずにはいられない。


「最近のヴィクトリアの様子を報告してくれ。」


カティーサークは冷たい視線のままクロンを見た。


クロンは微笑みを讃えていた皇子の中に、こんな欲を持った獣がいたことに驚いていた。

眠れる獅子がまるで覚醒するかのような場面に立ち会っているようだった。

そして今まで自分は殿下の何を見ていたのだろうと。


「はっ!ヴィクトリア嬢は最近は隣の部屋のメアリー嬢と仲が良いようですね。連日お互いの部屋を行き来し、夕方までおしゃべりしてます。」


「そうか…。こんな任務を押し付けて悪いな、クロン。引き続き頼む。」


報告を聞いて何も起きていないことに少し安堵(あんど)したのか、カティーサークはいつもの微笑みを浮かべた。

その表情を見てクロンも肩の力を少し抜いた。


「殿下、もうヴィクトリア嬢を正妃にしてしまえばいいんじゃないですか?彼女以外考えてないなら同じじゃないですか。」


カティーサークはクロンをちらっと見て、ただ冷たく微笑んだ。

それが出来たらどんなに楽だろうと。


俺は彼女を誰にも渡すつもりがないくせに、彼女を(しば)り付けたくないと思っている。

あのサン・ビセンテにいた彼女は自由で綺麗だった。

そして再び目の前に現れた時も、あの輝きを保ったままさらに美しくなっていた。

あの輝きを持ったまま手に入れたいんだ。


今無理やり正妃にしたら、きっと輝きはなくなってしまう。


そして俺は彼女に俺自身を求めてもらいたいんだ…。

だからこそレイヴン侯が憎くてたまらない。

彼はいとも容易(たやす)く俺が欲しくてたまらないものを手に入れた。

あの温室で二人でいるのを見た時、最初に殺してしまえば良かったとさえ思った。


君は知らないだろう。

俺がこんな(みにく)い嫉妬にかられてるなんて。

俺がどれほど君を好きかなんて。


裏切られたと思った時から、俺は君に遠慮するのをやめた。

そしてこれからも…。

君は俺のことを少しは考えてくれているのだろうか。



「クロン、午後は剣の鍛錬だったな。少し早めに行くぞ。」


俺は体を動かして少し気分を変えようと思った。


そして軍服の上着を羽織り準備をした。



何より彼女はこの皇子宮の自室にメアリー嬢といる。


そう思っていた。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦



私とメアリーは侍女を一生懸命、説得していた。


「ね、マリー。1時間だけでいいから服、交換して!」


というのも今の姿のまま皇子宮を出たら目立ってしまう。

下手をしたら上の階にいる殿下にまた見つかってしまうかもしれない。

そのため、侍女の服を着て変装しようとメアリーは言い出したのだ。


「ほら、昔よく服を交換して遊んでたじゃない。令嬢ごっこ、マリーも楽しんでたでしょ。」


「それとこれとは話が違います!それにここは王宮なんですよ!」

マリーは必至に反対していた。


「侍女のマリーさんだったかしら。私も一緒に行くから大丈夫よ。もし見つかっても、どうしても兄に会いたかったって言えば許してくれるわ。ヴィクトリアにはついて来てもらっただけだって。」


メアリーも一緒になってマリーの説得に加わった。


「ホントに、本当に大丈夫なんですか?」


マリーは不安気に私を見た。

それもそのはず。

レイヴン侯のことで以前よりも神経質になっていた。


「大丈夫よ。それに何を言われたってそう簡単に心が折れたりしないわ。(つら)の皮が厚いのはマリーもよく知ってるでしょ。」


私は自分の言葉を自分に言い聞かせていた。

そう、簡単に折れたりしない。

皇后にもあの男にも。

私は自分の意志で動くのよ。


「お嬢様…。わかりました。でも1時間だけですよ!」

「ありがと、マリー!」


私はマリーに抱きついた。


最初はそんなに乗り気じゃなかったけれども、メアリーのお兄さんに会いに行くのも騎士団を覗きに行くのも少しワクワクしていた。


「そうと決まればさっそく着替えね。ヴィクトリアの髪の色は目立つから束ねて帽子を被りましょ。」


メアリーもお兄さんに会いに行くのを楽しみにしているようだった。


ちょっとくらいの息抜きならいいよね。

そんな軽い気持ちだった。




そうして私たちは皇子宮を出て騎士団の訓練場に向かった。




ヴィクトリアはピクニックにでも行くかのような感じであったが、メアリーは全く違うことを考えていた。


メアリーは訓練場が近づくにつれ動悸が高まるのを感じた。


確か今日の殿下の予定は騎士団と共に訓練をするはず…。


そんな場所にヴィクトリアがいたらどう思うかしら。

皇子宮を勝手に抜け出したことを(とが)める?

それとも騎士団の誰かと密会してたとでも思う?

自分の好きな人が思い通りにならないって辛いわよね、殿下。


ヴィクトリアも私の口車に簡単に乗っちゃって…本当におめでたい子。

でもあなたは最高よ、ヴィクトリア。

もっともっと殿下に(あらが)ってちょうだい。

私をもっと楽しませて…。


メアリーは不適な笑みを浮かべていた。






少しずつ読んでくださっている方が増えて、嬉しく思います。ありがとうございます。

余談ですが登場人物の名前はほとんど帆船や軍艦から取っています。ヴィクトリアはVictoryを元にしています。カッコイイ帆船なので興味のある方は是非。

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