表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】誘惑のヴィクトリア~皇太子妃になりたくないので皇子以外を全力で誘惑します~  作者: 茄乙モコ
【第1章】ヴィクトリアに誘惑された男たち(厄介な皇子編)
12/42

第11話 仮面の下の狂気

静まり返った部屋にはカティーサークとヴィクトリアのただ二人だけが残された。


私は床を見ながら頭を巡らせた。

彼は話をすると言っていた。

もしかしたらまだチャンスがあるかもしれない。

私は機会を伺った。


カティーサークはゆっくりと腰を上げ、ヴィクトリアに近づいた。

柔和(にゅうわ)な笑みを浮かべ左手を彼女の前に差し出した。


(ひざ)をついたままじゃ痛いよね。あっちのソファでゆっくり話そう。」


あまりに優しい彼の口調は、逆に背筋をヒヤリとさせた。

目の前の皇子が何を考えているのかさっぱりわからなかった。


私は彼の左手に軽く手をのせ「はい。」とだけ答えた。

彼は私の手をしっかりと(つか)み私の体を起こした。

そして耳元で(ささ)くように言った。


「今日のヴィーは特に綺麗だ。ドレスも口紅も…。」


一瞬どきりとしたが顔には出さなかった。

私が「ありがとうございます」と言い終わる前に彼の言葉がさえぎった。


「当然、()()()()だよな。」


「…もちろんです。」

私は嘘をついた。


カティーサークは探るようにヴィクトリアの顔を(のぞ)き込むと、ソファに座らせた。



私は彼が本当に先ほどの皇子なのかと思った。

そこには冷静で聡明な皇子はいなかった。

獲物をじわじわと追い詰める執念深い男の姿だった。


やっぱり私は彼が何をしたいのかわからなかった。




彼は私の左側に座り微笑みながら言った。

「さて、始めようか。」

「始めるって何をですか?」

私は恐る恐る聞いた。

「俺は()()()()()が知りたいんだ。」

「本当のことって…。」

「とりあえずレイヴン侯にしたのと同じことを俺にしてもらおうか。さっきもこうやって座ってたじゃないか。ヴィーの左側にレイヴン侯が。」


私は血の気が引くのを感じた。

レイヴン侯にしたのと同じことをさせるなんて。

地獄だ。

彼は(つみ)を許していない!

これが彼の下した(ばつ)なのだ。


「…できません。」

「どうして?レイヴン侯にできたことがなぜ俺にできない。」

カティーサークの顔にもう微笑みはなかった。

「それは…。」

「やるまで一歩もこの部屋から出さないよ。安心して、ヴィー。時間はたっぷりある。」


私はぐっと唇を噛んだ。

誰が言っただろう、穏やかで優しい皇太子などと。

そんなのウソ!

目の前にいるこの男はネチネチと嫌味たらしく私を責めている。

本当にやるまでこの部屋から出してはもらえないのだろう。

いや、やったところで彼の気のすむまで出してもらえないかもしれない。


それでも、それをする以外なすすべはなかった。


「わかりました。…でも、怒らないでくれますか。」

「もちろんだ。」


私はレイヴン侯にしたのと同じように左指を(から)ませ、右手を彼の首筋にのばし耳に触れた。

そして体を少し近づけ顔を上げた。

「…これ()()です。」

私は目を反らした。


「これ()()?違うだろ。()()()()、だろ。」


すると彼は私の(あご)をグイっと指で持ち上げキスをした。


私は反射的に腕に力を込め、彼を突き放した。


()()()()()()()()()()んじゃなかったのか?」

彼は悲痛な笑みを浮かべた。


「びっくりして…。」

私は自分の唇を指で触った。


彼は私の髪にゆっくりと指を通しながら言った。


「ここにいる間は君は俺のものだ。頭の先から足の爪先の、髪の毛一本に至るまで。よく覚えておいて、ヴィー。俺は君をいつでも抱けるんだよ。」


彼は怒るんじゃない。

ずっと怒っていたのだ。


そして私など、いつでもどうとでも出来ると…。

私は皇子の顔の下の本性が恐ろしかった。


「部屋から下がれ。」


私は()()()解放された。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ