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夜中の3時に紅茶をどうぞ  作者: 坂本 尊花
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プロローグ「何時もの岩場にて」

 その夜、私は星空を眺めていました。

 別に感傷に浸っていたとか、嫌なことがあったとか、そういうわけではありません。単なる日常の1ページで、とかいうそんな理由です。


 ーーーいや、もしかしたら違うのかも。


 両親はとっくの昔に他界し、幼い頃から私は独りでした。しかし飢えることはありませんでした。村のみんなは優しくて、いつも食料を持ってきてくれるし、村の外れの物置小屋に住んでいるからお金を地主様に納める必要もない。言い換えれば、やる事がなくて退屈だったのです。そしたら、気が付いたときには星を眺めていました。理由は分かりませんが、星を見ていたのです。


星は綺麗でした、「手を伸ばせば届くかも」なんて事は考えませんでしたけど。


 私は、星の話を誰かにすることはありませんでした。

 皆様は畑を育てる使命があるので、私と違って暇ではないのです。・・・・・・それと恐らく、迷惑な私は迷惑を掛けたくなかったんだと思います。「迷惑だと思われたくなかったから」と言ったほうが正しいのかもしれません。


 「あっ」


 少し考え事をしているうちに、月が隠れてしまいました。

 今日はどうやら雲が多く、星を見るには適さない空模様のようです。こうなると、もうそろそろ帰るべきでしょうか?そう思った時ーーー

 木を避けて辿り着いたこの黒い岩場で、私と周りの幾何学模様だけが夜の色を帯びて、夏なのに凍えそうな風が一つ吹きまして、


ーーー辺りが、沼のような夜で包まれました。


 夜は色を増すように、しかし無に返すように変化しまして。

 そしてその色は、黒として、宵として、闇として、本来無い筈の形を成し幾何学模様と私を呑み込みました。


ーーー・・・・・・息、


 「止まる」


 夜は煙草が吹く白のように、しかしその真逆の性質で一瞬にして肉に染み付きました。喉に詰りました。瞳の月を焦がしました。私は、これを知っています・・・・・・それは私が慣れ親しんだ、唯一無二の心地良さ。妖怪変化のように形を変えてしまっても、分かってしまう心地良さ。そして、誰もが恐れた、しかし私は恐れることができなかった、忌み子。名はーーー


 『くらがり』


 ・・・・・・どのくらいの時間が経ったでしょう?

長い間眠っていたような安らかな感覚を経て、しかし目前に見える世界は変わらぬ暗がり。顔を出した月は銀杏のような形をしていて、それは私が何かに包まれる前に見たもの。もう、このまま死んでさえいいとさえ確信したその瞬間、私はとっても奇怪なものを見ました。


それはーーー月を隠すように現れた、


一人の、銀髪の少女です。


プロローグ、つ・づ・く。

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