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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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四大公爵家主催

 大輪の薔薇が咲き誇る庭にうら若き乙女の楽し気な声が響く。

客観視すれば楽し気な声。当事者からしたら腹の探り合いの息絶えない戦場だが…


「まぁ!ロゼリア様にリズビア様ようこそ我がアンデルセン家へ」


 薄い黄色のドレスを纏った少女はくせ毛で毛先が奔放になっている赤紙が快活さを印象づける。


「お招きいただけけて光栄だわ」

「まぁ、ロゼリア様をお招きしない不届き者などこの場にいるのでしょうか?」


うふふと笑い合う2人が怖い。

この間のお茶会よりも戦場じゃん。早く帰りたいよ~


「リズビア様にはお初にお目にかかりますね。申し遅れました。私アンデルセン公爵家の一人娘ハレンシンシ・アンデルセンと申します。以後お見知りおきを」

「ありがとうございます。ガーナ公爵家が次女リズビア・ガーナと申します。本日はお招きいただけて嬉しいですわ。ぜひ今後ともよろしくお願いいたします」


 ハレンシンシ嬢が柔らかな笑みでこちらこそと言ってくれたおかげで少し肩の力を抜ける。

案内された円形のテーブルには椅子が9脚

 さすが辺境伯以上の年の近いご令嬢になると縛りがすごい。

 既に椅子に座っているのはおそらくゼルダ公爵令嬢だろう。ゼルダ公爵家とアンデルセン公爵家は遠縁にあたるらしい。確か4代前のゼルダ公爵家のご子息がアンデルセン公爵家のご令嬢と結ばれたそうで…

四大公爵家で年が近いご令嬢がいるのは現在ゼルダ、ガーナ、アンデルセンの三家のみ。もう一つは貴族名簿上では身体が弱く外に出ることすら叶わないご令嬢いるのかいないのか…はっきりしていない。ただご子息がお一人いたのは確かだ。

 四大公爵家ではアンデルセン公爵家は男の子に恵まれなかった故、アンデルセン公爵令嬢は王太子妃候補から早々に外されたと聞く。

ご令嬢は婿養子を取らなくてはならないから

 私からしたらある意味候補外になれた彼女は羨ましい。

令嬢に促されて椅子に腰かける。


「ごきげんよう、ロゼリア様。そちらにいらっしゃるのは?」


 水色の髪を綺麗に結い上げられ少したれ目なエメラルドが私をまっすぐに見る。


「はじめまして、ゼルダ公爵令嬢。私はリズビア・ガーナと申します」

「貴女がリズビア様でしたか。アマリリス・ゼルダと申します。いつもシルビア様と仲良くさせていただいているので今後はリズビア様もよろしくお願いいたしますね」

「こちらこそよろしくお願いいたします。私はシルビアと違ってあまり社交界に顔を出していないのでいろいろ教えていただければ幸いですわ」

「では、私のことはアリスとお呼びください」

「わかりました。アリス、よろしくお願いしますね。私のことはリズとお呼びください」

「よろしくお願いしますわ、リズ」


 年が近いと話が膨らむ。しかもシルビアの友だち

絶対いい子だよ、この子

 和気あいあいと話していると残りのご令嬢が到着したようだった。

 侯爵家のイリエ・スカルフ様、辺境伯爵家のミッチェル・デュア様、ペレッチェ・デュア様、カロライン・ダン様、ケイト・ダルネス様

どの令嬢も自分よりは年上

 デュア家の下の令嬢とスカルフ侯爵令嬢は王太子妃候補だったはず。

アリスも王太子妃候補だったっけ。え、是非やっていただきたい。

 こうして令嬢が皆そろったことでお茶会は幕を開ける。





「実は先日アルフォンス伯爵家のお茶会でこのような噂を耳にいたしまして―」

「まあ!男女の園に赴かれたなんて」

「夫人に知られたら大目玉ですわよ」


ふふふ、あはは

めっちゃ盛り上がるお話。私とアリスはよく分からない部分がいくつかあるがとりあえず話は聞いておく。

 アリスはたまにお菓子に手を伸ばすのだが、私はずっと何か食べてる気がする。

 飲んで、食べて、飲んで、食べて、話の相槌打って…これの繰り返し

お菓子がおいしい。

このマカロンとかすごくおいしい。くちどけがよい

今度買いに行こう。


「そういえば、リットン伯爵夫人の茶会で面白いお話を伺ったのですわ」


 ダン令嬢がこちらを一瞥する。

とうとう来たか。


「とある方が手土産にマリン・ビーナに頼んでいた品をお渡しになったのだとか」

「まぁ!それは新作ということですか?」

「はい。なんでも今までにない綺麗な装飾を施されたピンだったそうです」

「それは羨ましいかぎりですわ。ねえ?ロゼリア様」


 スカルフ令嬢がお姉さまに話を振る。


「そうですね。ですが、私はまだ実物を見ていないので何ともお答えできませんわ」


 お姉さまは上品に微笑んでティーカップに口づける。


「その手土産とはどなたが?」


 デュア令嬢―ミッチェル嬢がダン令嬢に尋ねる。

先に答えられてはよくないから令嬢たちに向けて声をかける。


「それは」

「私がお渡しいたしました」


 本来このような場で声を被せることは無礼にあたるが、爵位が上であれば無礼講となる。

一瞬驚きを表したダン令嬢も私が微笑めば、開こうとしていた口を噤む。


「リズビア様がお渡ししたんですか?」

「はい。マリン・ビーナに伝えていた商品が完成しそうと伺いまして、あの日いらっしゃった皆様にお渡しすればきっと多くの方に伝わると思ったので」

「リズビア様はドレスのデザインだけでなく装飾品のデザインもおありなんですね!」


 ハレンシンシ嬢が声を弾ませる。

ここで大きく流れが3つに分かれているのが分かる。

1つ、興味を示さない。お姉さまとアリス

2つ、装飾品に純粋に興味があるハレンシンシ嬢とダルネス嬢

3つ、私にいい感情を向けない、陥れようとする眼をしたスカルフ嬢、ミッチェル嬢、ペレッチェ嬢、ダン嬢

 ああ、面倒くさい。3つ目の相手は相手をすること自体が面倒くさいのに

なんで半数がそこにいるんだ。

 お姉さまは今回傍観者に徹しているから助けはないと思っていた方がいいだろう。

ふぅと息を吐きだし令嬢方に向き合う。


「お褒めいただき光栄ですわ。あれは私とビーナ殿が十分だと思ったものを提供したのです。皆さまの意見が欲しくて」

「?というとあれはまだ完成品ではないのですか?」


 ダルネス嬢が首を傾げながら尋ねる。


「ええ、そうなんです」


 完成品と言えば完成品だけど、全員が納得したものではないのだ

そう全員が


「でしたらあれは不良品ではありませんか!!そんなものをいくら何でもお渡しになるなんて」

「そうですよ!!万が一何かあればいかがなさるんですか⁈」


 スカルフ嬢とミッチェル嬢が待ってましたと言わんばかりに声を出す。

そんなあからさまでいいのだろうか?言動と表情が


「お言葉ですが、お渡しした品は完成品です。十分な安全性を持っているためビーナ殿の許可のもと手渡しました」

「それでは先ほどの発言と食い違いますが?」


 ペレッチェ嬢が小馬鹿にしたように私を見てくる。


「あら、最後まで話を聞かずに勝手に盛り上がるだなんてこれでは令嬢方の話した話の信憑性が疑われそうですわね」


 ロゼ姉さまが本気で小馬鹿にした声音で物申す。

 くすくすとアリスとアンデルセン嬢が笑われ、指摘された側は顔を真っ赤に染めている。

可哀そうに。


「リットン伯爵夫人のお茶会でお渡ししたものは確かに完成品ではあるのですが、あの装飾品を作った職人が大変変わったお方でして…。凝り性らしくて自分の中ではまだ納得できないからと納品日が延長しているそうなんですよ。ですから、彼が認めたらその瞬間にそれが本当の意味で完成品となるのです」


 実際、ビーナ殿も私も満足しているし私のデザイン再現度もかなり高いものだと思っている。しかし、職人のおじいさんはまだイケる!とこっちの話を聞かずにのめり込んでしまっているらしい。

本人が認めない限り高貴な方には渡せない!!とまで言われてしまえば私達に出来ることはない。

 だが、おじいさんは私の爵位で高貴と言ったのだとすれば爵位が下のものに提供し話題性を作ることは止められていない。そこを付いたのがリットン伯爵夫人のお茶会の手土産だったりもする。


「職人の方が納得してくださればそれは私達の手にも渡るのかしら?」

「ええ、もちろん」

「どのような品なのか教えていただくことは可能ですか?」

「はい。ドレスの装飾であるコサージュなどに引けを取らないヘアアクセサリーとなるように…と考えてデザインは作成しました」

「素晴らしいですわ!」「是非私も買わなくては!」


 ハレンシンシ嬢とダルネス嬢が好色を示してくれたおかげで次のドレスのデザインの話などに話が広がる。

うん。楽しいね!


「あら、お怖いお顔でいらっしゃるわよ?カロライン」

「…姉妹そろって似た性格をされていらっしゃるのね」

「誉め言葉だわ、ありがとう」


 だから、お姉さまとダン令嬢がバチバチと火花を散らしていることなんて全力で見えないふりをした。



爵位と人が一気に出てきて作者も書いてる途中に混乱してしまう事態が多発した回…


【補足と爵位について】

ファンネルブ王国の四大公爵家はガーナ、ゼルダ、グランビア、アンデルセンといいます。

公爵家の次が侯爵家で、6家います。

侯爵家の次が辺境伯爵、その次が伯爵~と爵位が続くんですが、今回の茶会は王族を除けると上位貴族3爵位で行われています!


いや爵位って難しい!!

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