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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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手土産

「う~」


公爵邸の廊下をスタスタ歩くロゼリア姉さまの後ろを付いていきながら、唸り声を上げてしまう。


「唸っても文句言っても今日はダメよ、リズ?」

「わかってはいます。分かってはいるんですけどぉ~行きたくないんですもん!!」


クルリとドレスがお姉さまの動きに合わせて軽やかに舞い上がる。

その動きすらもお姉さまの前ではすべてお姉さまをより美しく可憐に見せるための技術に過ぎない。さすがはお姉さま。次代の華


「約束を先に取り付けたのはリズでしょう?」

「そうですが、そうなんですが…聞いてませんよ。四大公爵家主催の辺境伯以上しか入れないご令嬢のお茶会に出向くなんて!」


ああ胃が痛い。帰りたい。出たくない。

怖いもん。令嬢の最高峰しかいない場所しかも7歳以上が半数以上の茶会に何故5歳の私が⁈

確かにお姉さまにはミルクジャムの普及にあたってお茶会での提供を協力してもらった。見返りはお姉さまのお茶会への動向。

なんでも領地祭でのドレスを私が作ったことで若きご令嬢方は私に次のドレスデザインを頼みたいのだとか…。えー、絶対無理だよ。

というかそういうのはマリン・ビーナに渡してるよ?専門者に聞きなよ。

という私の心情など誰も知らず、私は領地祭後ずっと領地にいたから王都では私にお目にかかれない。まぁ元から社交界自体参加してないんだけどね、私は。

そう、私は。これ重要

私本人に会えないとなると次に白羽の矢が立つのはロゼリア姉さま、お母さま、そしてシルだ。シルは体調不良とか王太子妃候補襲撃事件によってなるべく外に出なくて済んでいるらしくそこまで被害はないのだとか…

一方、次代の華であり領地祭で実際にドレスを着ていた姉さまにはそれはそれは大層な被害が出たらしく。これは私が悪いのだろうか?と思ったけど口には出さないよ。

いらぬ怒りを買いたいとは思わないから。

茶会にいけば必ず聞かれ、同じ説明を何度もしお姉さまの限界もとうの昔に超えているそうで今日のお茶会には本人を連れていくと宣言したそうだ。このことを私が知ったのは今日の朝です。

え、凄い急じゃん??とか思ったら姉さまは笑顔で「逃げ道は潰さなくてはいけないでしょう?」とおっしゃられた。ものすっごおおくいい笑顔で

めっちゃ怖かった


「四大公爵家主催でしたら何か手土産がいるのでは?」

「それはミルクジャムを用意しているわ」

「ミルクジャムだけだとあきられませんか?もういい加減手土産として普及はすんだと思うのですが…」

「もちろんわかっているわ。そこでリズビアの腕の見せ所よ」


おっと?

お姉さまが楽しそうに笑う。私は引き攣った笑みで相対する。


「私ね、おばあ様からお聞きしたの。リズが領地でミルクジャムを活用したお菓子の作成にも着手していることを」


おばあさま!!まさかの裏切りですよ

あんなにかわいらしく2人で内緒ですよとお伝えしたのに!

いや、確かにミルクジャムを活用したお菓子の話は料理長たちと考えたよ。現にいくつかはお茶会で説明はしている。

が、ノグマイン商会側でもまだお菓子への加工販売は行っていない。

理由は砂糖やはちみつが高価であるからだ。

お菓子にするとやはりジャム単体より値が張ってしまう。それを買ってもらうためには平民側にはもう少し浸透が行き届いてからでも問題ないとアローとビンズが言っていた。

しかし、貴族はそうもいかない。

分かってはいたけど…速いんだよな。流行の移り変わりが

人気が出て皆の興味が出るまでがおおよそ一ヵ月。その後みんなが実物を手に取り名を知られるのは二か月後。よくもって変化がないもの(アレンジできないもの)だと三か月から五か月で衰退する。もちろん需要があればもう少し長いがそれでもアレンジなしだと半年もてばいい方だろう。


「つまり、ミルクジャムを活用したお菓子を作れと‥‥‥いうことですか?」

「リズはレシピを知っているのでしょう?」


確かに知ってはいるけど…


「そのレシピを周りに開示する必要はないわ。ただ、こんなお菓子も作れるし今後は販売予定と言っておけばいいのよ。それよりもあちらは装飾に興味がおありだから」


ん?なら―


「マリン・ビーナに伝えていた品をお渡しすればよいのでは?」

「え?絶対いやよ?というか受け取らないでしょうあの人たち。四大公爵のプライドとかで下手したらこちらの親切もねじ曲がって捉えられかねないわよ」


え、怖ッ

なにそれ。親切心は親切心として素直に受け取りなよ。


「施しは受けないというのが高貴な方の中にはあるから仕方ないと言えば仕方がないのだけれどね」


ロゼ姉さまはどこ吹く風のように仰るんだけどさ、私今日そんな場所に行くんですよ?泣いちゃいますよ??


「それに、あちらはリズビア・ガーナに興味津々のようよ?せいぜい喰われないように気を付けなさい」

「え?」

「さ、厨房に着いたわ!料理長に話はつけてるから3時間以内によろしくね」


トンッとロゼ姉さまに背中を押されて厨房に足を踏み入れる。

ちょっと待ってほしい。すごく待って。こんな状況でお菓子とか作ってる暇ないから⁈


「ロゼね―」

「「「リズビア様!!」」」


ビックッ!!

ロゼ姉さまを引き留めるより先に厨房の全員に名前を呼ばれる。

何何々??さっきとは全然違う意味で怖いよ?みんな目輝かせてるんだけど何?


「ご指導よろしくお願いいたします」


料理人たちはキラキラとした瞳で頭を下げる。…指導じゃなくて指示だと思うんだけどな。


社交界って本当に怖いんですよね。

ロゼリアはそれを嫌って程知っているから忠告はしてくれる優しいお姉ちゃんです。

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