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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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ベレット子爵領

馬車の中はブルーノ伯爵令嬢の襲撃事件を聞いてから少しだけ重々しい空気が漂っていたが、ヌベレット子爵領についた時にはそんな雰囲気はどこかに飛んで行った。

なぜなら…


「いや~ガーナ公爵家のリズビアお嬢様から直々にご指名いただけるなんて!!私は感激で今日が天に上る日かと思いましたよ!」

「ま、まぁヌベレット子爵はご冗談がお上手ですね」

「そんな!冗談でこんなこと言いませんよ。お嬢様はマリン・ビーナにも才を見出されたお方ではありませんか」

「あの、えっと」

「まだ5歳というのになんと聡明であらせられるか!」


なぜかヌベレット子爵は私をべた褒めである。

その言葉と態度、そして力説するときの息の粗さから本心なのはすっごく伝わる。

うん。それはこっちの護衛含むヴィオ、レットそして当事者の私自身が引いてしまうほどに

というか、領地祭の話はまだ沈下していないのか私がマリン・ビーナに認められたという話が未だに会う人、会う人に言われる。

恐るべし社交界の最先端デザイナー(マリン・ビーナ)

恐るべし社交界(噂の巣窟)

「ヌベレット子爵、お褒めいただき光栄ですわ。本日は事前に申していたように瓶をいくつか拝見させてください」

「かしこまりました、こちらになります」


子爵の案内を受けて、大きな倉庫の中に入る。

そこには使われていない瓶が大きさごとにまとまって棚に収納されていた。

膨大なガラス瓶が天井近くまである大きな棚に入っているというのは圧巻の光景で、外から入り込む光をガラスが反射し、反射された光を別のガラスが反射してキラキラ光る。


「すごい…」

「本来は箱に詰めておくべきなんでしょうが、あいにく取引先が決まっていないのに箱も用意できなくて。乱雑にしまうとせっかくの瓶に傷が入るじゃないですか。だからこうして展示のように保管しているんですよ」


ヌベレット子爵は取引先が決まっていないことに対し自嘲気味に笑う。

でも、表情にはどこか子爵自身のガラスに対する―作った領民に対する―心遣いが感じられ、この瓶を誇りに感じているように見受けられた。


「子爵はこの瓶をどう思っていますか?」


これは純粋な疑問だった。

瓶を大切に扱う子爵自身を少し知ってみたいなという思いものせつつ、純粋に瓶をどう思っているか聞いてみたくなった。

ヌベレット子爵は、幼い少女の疑問に嫌な顔せず真剣な表情で少し考え、口を開く。


「そうですねー、大切な()()()だと思っています」

「贈り物ですか?」

「ええ。領民が私達に納品という形で送った“贈り物”であり、他の誰かに使用してもらうための“贈り物”ですから。もっと言うなら、この領地から誰かに贈って、その誰かがまた誰かに贈る…そんな“贈り物”だと考えています」


“贈り物”

そんな風に考えられる子爵はとても素敵な方だと思う。

ヌベレット子爵領の瓶の純度が他の品よりもいいと言われる理由を、垣間見たように感じる。


「とっても素敵な考え方ですね」

「そう言っていただけて嬉しく思います。私は、貴族は領民なくては成り立たないと思うので、領民からいただいたものは大切にしたいと考えてしまうたちなんですよ」

「その考え方を持っているからこそ領民は貴方を尊敬していると思います」

「ありがとうございます」


その後、他愛のない話をしつつ何種類もの瓶を見て回った。

瓶の色や蓋の閉まりやすさ、厚さによる熱伝導率等を見ながら一つ一つを見て回れば気づけば日が傾き、外はすっかりオレンジ色に染まっていた。


「本日お願いした3種類をぜひお取引お願いしたく思います」

「かしこまりました。我が領からガーナ公爵領まででしたらおそらく3日ほどあればすべての品を届けられると思います。」


子爵がサラサラと羽ペンを滑らせて、契約書にサインを綴る。

サインされた用紙は、まったく同じものが3部ありそれぞれが1部ずつ持ち、残りの1部は取引商談に預けることとなっている。

今日は本家だから明日領地に戻ってアローに相談して……3日後に商談が動いたとしたら早くて一週間以内には輸入できるだろう。

あとは、ジャムと薬草の兼ね合いによるかな~


「本日は遠路はるばるお越しいただきましてありがとうございます」

「こちらこそ長い間お付き合いいただけまして有意義な時間となりました。また、後日よろしくお願いいたします。それではごきげんよう」


馬車に乗り込み、挨拶を交わす。

挨拶が終われば優秀な護衛たちは素早く出立し、公爵邸を目指す。


「思ったより理想に即したものが見つかるのが早くてよかったわ」


車内で伸びをしながら溢せば、レットたちからも同意を得られる。

タイムリミットにはギリギリ間に合うかどうか…。

成果を途中で放り投げたりはしたくない。しかし、このタイムリミットに成果を出せなくてはおじいさまの協力は得られない。そして、領地から本家へ返らなくてはいけなくなる。

正直本家にいると王太子に会うから(強制茶会にて)な~

…‥‥‥‥‥‥あれ?そういえば茶会やってないね。

??私、領地にいるから~って話殿下にしたっけ?

え、したよね。しなかったっけ?あれ、わかんないんだけど

最近手紙…出してないね。いや、そもそも来てないし問題ないはず

手紙出してないからって嫌がらせされないよね?なぜ手紙を出さないみたいなこと―

いやいや一国の王太子がそんなこと気にしな――あの腹黒(殿下)が気にしないだろうか?

ないと言えない自分が嫌だ。

それほど気にしてないけど絶対嫌味の10個と長期の嫌がらせ(私にとって)をしてきそうで怖い。会いたくない。

会ったら私の胃が終わる。あ、待って胃がキリキリしてきた。


ああ、本家に帰っている間に悪魔(でんか)が来ませんように―


私は本邸につくまで必死で祈ることしかしなかった。


フラグですね

悪魔…めっちゃくちゃいい顔してますよ今頃きっと

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