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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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いい人なんていないけど

領地に来てから10日が経過した。

おじいさまから与えられた課題に結果を出すにはあと残り21日しかない。

そう、21日しかない。

一ヵ月なんてあっという間だ。

 あっという間なんだけど、今日は協会にきています!


「リズビア様~」

「はいは~い、この本読む?」

「こっちも読むの!!」「いや、こっち!」


ちっちゃい子たちにわらわらと囲まれる。


「じゃあ、順番に読んでいこうね」


 手に取っていた本をみんなに見えるようにしてから読み聞かせを始める。

 だいたい教会の孤児院にいる子は読み聞かせを始めると静かにするいい子たちが多い。

私が読み聞かせをしている間にヴィオには教会のお手伝いをお願いし、レットには教会を出て行く子達の今後について相談にのってもらっている。

今日のメインの目的はレットの仕事である。

 本当は私直々に伺いたいところではあるがいかんせん年齢があれで濁されたり、なめた回答をされたりしかねない。

いくら公爵令嬢といえ6歳児は6歳児でしかない。

平民の子より読み書きそろばんが出来て、マナーが出来ていても5歳児は5歳児なのだ。

まともに将来を語る方が珍しいだろうね。

 そのため、私はちびちゃんたちの相手を仰せつかっているのだ!

レットが孤児院の年長組の今後の相談にのってもらっている理由は簡単。就職斡旋というやつだ。



ことの発端は2日前

おじいさまに“影”の話を伺ったからだ。

“影”というのは所謂情報屋。中には暗殺なんかも担うところもある。

…殿下の影であるロイと名のった彼は後者の人間だ。

 公爵家に“影”は存在しているが暗殺も担う者は公爵にしか従わない。

つまるところおじいさまやお父さま、レイ兄さまの命令は聞くが私の命令は聞かないし、聞けない。

 しかし、情報屋としての“影”は公爵家の人間なら持ってもいいらしい。

というか多くの力のある貴族には個人の“影”がついているそうで、私にもいずれ必要になるとおじいさまに言われたのだ。

確かに今後のことを考えると情報源はあるに越したことはない。主に殿下から円滑に離れるためには必須条件といっても過言ではないだろう。あっちは暗殺情報屋を従えているのだ。

こっちはノット暗殺情報屋で逃げなければいけないのだから、逃げ道となる手段確保は大切。

もちろん殺されないように円満にお別れできることが一番ハッピーだけどね!!

 個人で持つ“影”は家に仕える“影”とは違って信頼関係が必須条件となる。

 家に仕える“影”は一族的なものが存在し、絶対な信頼関係と服従が存在する。一方、それのない個人で雇う“影”はいつ裏切るか分からないものであり、互いの利害関係が一番になるものだ。

そこで考えたのが孤児院である。

 もとから情報屋を担っている人にお願いするのが一番手っ取り早いのは手っ取り早いが、あちらが私をなめることがあってはならない。

なめられていいように使われるなんて御免だ。

 それよりは恩を売っている孤児院の人間の方が有益になると考えたのだ。

彼等を一からにはなるが情報屋として育てるのは簡単ではない。なんせ真の情報屋はいくつもの顔を持ち、命の危険が伴うともいわれている。

それを彼らに強いようとしている私は決して優しい人間ではない。

むしろ恨まれる立場の人間だろう。

…それでも、これからを考えれば必要不可欠な駒である。

チクリと胸に痛みが走る。

本当はこんなお願いをしたくはない。だけど—私は…


読み聞かせていた声がわずかに震える。

あぁ、私はどこまでも甘さを捨てきれないのだ。



情報屋って難しい立場ですよね…

それを6歳の子が考えるってうん。無茶苦茶ですね。

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