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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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悪魔の微笑み

「お姉さま!」


 殿下に手を繋がれたまま半分以上諦めてついて歩いていると前方から愛おしい妹の声が聞こえた。


「シル!!」


 シルビアが驚きの表情のまま私と殿下を見つめる。

そりゃ驚くよね。人に囲まれていたはずの私がなぜか殿下に手を繋がれているんだもの。

しかも、私は殿下との婚約を断固拒否しているというのにね。


「王太子殿下に御挨拶申し上げます」

「やぁ、シルビア嬢。今から母上に挨拶かい?」

「いえ、まだ家族で予定していた時間ではないのですがお姉さまのお姿が見えましたので」

「なるほど。さっきそこでリズビアを見つけて拾ってきたんだ」


 何が拾っただ。誘拐の間違いだろう。

 シルビアも思うところが山の様にあるのだろうけど、ぐっと飲みこんで「そうなんですね」と返す。

 いや、思うところがあってもシルのことだから大体察してくれてそう。

察したうえで野暮だとか思ってツッコまないでいそうだわ。そこは突っ込んでくれていいのよ。私を助けるために


「では、少し早いですがお姉さまと2人で先に王妃殿下に御挨拶申し上げてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、歓迎するよ」


シルビアは私の隣に立って小声で「大丈夫ですか?」といってくれる。

一応妹の前だから「何とかね」とあいまいに笑って誤魔化しておく。


「じゃあ、行こうか」


 殿下は私達を一瞥してからまた歩き始めるのだが……………うん。おかしいよね

なんで手をつないだままなの?

シルビアとは繋がないのに私の手は握ったまま

おかしいですよね

おかしすぎますよ

シルビアが一緒にいるから逃げたりなんてしないのになぜ手の拘束は外されないのか。


「殿下、お手をお放しいただけないでしょうか?」

「え、何で?」


こっちがなんでなんですけど???


「私もう逃げませんよ?シルビアがいますし、お手をお放しに―」

「うん?放す理由ないよね」


言葉のキャッチボールが出来ない。どうして?

人の話聞いてた?

え、はっきり言えと?手をつなぎたくないんです!!って

こんな大勢の貴族がいる中で?それこそどんな嫌がらせだよ


「私だけと繋がれていますとあらぬ噂が立ちかねません。殿下も知っているでしょう?貴族はそのような噂を好むのだと」

「知っているよ」

「でしたら、私の手を放してくださいませ」

「ん~じゃあ、シルビア嬢とも手をつなげばいいかな?」


 そうだね、私の手を放してシルビアとぜひとも手を繋いでいただきたい。

そうすれば変な噂を立てて騒がれずに済む。


「殿下、私のことなどお気になさらないでください。問題ありませんから」

「そう、ならこのままでいいよね」


ン????

 頼みの綱であるシルビアの方を向けばいい笑顔が返ってくる。それはどういう意味なのか全然わからないけど見捨てられたことはわかるよね。うん。

お姉さまの心は泣いてますよ。

 殿下は殿下でシルビアの言葉はちゃんとキャッチボール出来てるし。どうして?

私の言葉のキャッチボールはなかったことにするくせに

理不尽でしかない。

 結局王妃殿下の御前に行くまでずっと手は拘束されたままだった。


「母上」

「あら、ウィル。小さなお姫様を連れてどうしたのかしら」


 殿下に母上と呼ばれた女性は少し癖のあるパーマのかかった栗色の髪を肩口で揺らし、ぱっちりとしたエメラルドの瞳は慈愛で満ちていた。

この方が国母、エレノア・ペルフェス・デ・ファンネルブ王妃殿下


「彼女たちが母上に御挨拶申し上げたいとのことでお連れいたしました」


殿下の言葉を受けて、シルビアが頭を下げる。


「お初にお目にかかります。ガーナ公爵家が三女、シルビア・ガーナと申します」

「お初にお目にかかります。王妃殿下、ガーナ公爵家が次女、リズビア・ガーナと申します」


2人そろって淑女の礼をとる。


「お顔を上げてちょうだいな。本日はよく来てくださいましたね。ガーナ家の小さなお姫様達。いつもウィルがお世話になっているわ」


お世話になっているかは別として嫌がらせは山のように受けてます。


「王妃殿下に僭越ながら私達でプレゼントを用意いたしました」


シルビアがおずおずとラッピングされた箱を手渡す。


「まぁ!ありがとう。これは綺麗な包装ね。開けてしまうのがもったいないわ」

「中身は私達が刺しました刺繍が施されたハンカチになります」

「つたないものですが、喜んでいただけたようで幸いです」

「今から開けるのが楽しみね」


よし、これで帰れる。むしろ帰る。

王妃殿下に御挨拶申し上げて撤退しようと口を開く。


「では―」

「今開いてはいかがでしょうか、母上」


 悪魔が今日一番の笑顔で話しを遮ってくる。

この人どれだけ私の邪魔をするんだろう…いや、うん。知ってる。嫌がらせ大好きだもんね

人の話これっぽっちも聞かないし、顔色見て心の中分かっててやってるんだもんね!!

私を早く帰らせる気なんてないんだな?!

絶対そうだ。だって笑ってるよ、あの人。

もうやだぁ~

あの人悪魔だよ。腹黒な笑みじゃなくても違った意味でイキイキしてるもん。


 拝啓ヴィオとレットへ

 腹黒悪魔のせいで私はまだ帰ることが出来そうにないです。あと泣きたい


心の中で、家で待っている2人に思いを馳せ現実逃避をするしかこの場を乗り切れそうにありません。ああ、帰りたい。




ウィルの人の話を聞かないこともなかなかだけど、シルビアもさらっとリズビアを売っちゃうんですよね~

そう言うところが好きですけどね。そしてもっと書いていきたい(希望)


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