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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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領地祭3日目

「お嬢様、大丈夫ですか?」

「へーきだよ~。それよりシルは大丈夫?」

「はい。シルビア様はゴッテルさんとともにお部屋へ一度下がられております」

「そう…。まぁ、お開き前には顔を出すように伝えておいてちょうだい」

「かしこまりました」


 頭を下げ、ヴィオが部屋を出て行く。

 シルビアがあんな風に言われているなんて知らなかった。今日が初めてだとは思えない呆れた様なミシェッタ嬢と対峙していた時の表情。おそらく外でも言われていたんだろう。あそこまではっきりとしたものでなくても。

 一方今年の領地祭がほぼ初めてといっても過言でない私は表的でなかった。なぜ?

こういったらあれだけどシルと私なら圧倒的に外に出ない私の方が噂の餌食となりやすいはず。まして今までの行動からしても―


「なんでだろ」

「何がですか?」

「うわっ!」


 ビックリして振り返ればレットがきょとんとした表情で立っていた。手には水桶を抱えて

 いつからそこにいたのだろう。まぁ、私の部屋だからいいんだけど

思考の渦に飲まれて全然気配感じなかった。


「で、お嬢様何がなんでだろうなんですか?」


 グラスに水を注ぎ手渡されるので受け取り、飲み干す。

先ほど怒りに任せてずっと喋っていたから知らぬ間に喉が渇いていたらしい。


「あの伯爵令嬢たちはどうしてシルビアに王太子妃になる資格がないと言ったのかなって」

「自分が王太子妃になりたいという妬みからなのでは?」

「ならどうして私が出て行ったときに怯むのかしら?普通は私にも罵倒すると思うのよ。でも彼女達はしなかった。私を標的にしていなかった。それが不思議―って、レット何その顔」

「いやいやいや、熱が出たあの日からお嬢はいろんな意味で変わられましたけど。うん。なんていうかそこに気づかないって…。あぁでもお嬢様らしいっちゃらしいんですけど」


 レットは手元に口を当てぶつぶつといい始める。

褒められていないってのは分かった。明らかに貶されているわけでもないけど


「お嬢様」

「なに?」


レットは私と目線を合すために床に膝をつける。


「お嬢様は熱が出られてからお変わりになりました。教会に赴き孤児たちに手を差し伸べ、屋敷の者たちとも積極的に関わり公爵家で最も使用人の立場を重んじてくださっています。ロゼリア様やレイチェル様の衣装を考案し、それはかの有名デザイナー:マリン・ビーナの目に留まり才能を買われました。領地祭では他領の特産を意欲的に見出し領主の頭角もあると言われているのです」


ん?

ちょっと待て。前半はまだいいよ。間違ってないし。教会へ行ったのは私が上手い具合にドレスを片付けたかっただけだけど。深くは言うまい。

 しかし、後半のなに?他領の特産を意欲的に見出す??領主の頭角????

なあに、それおいしいの?


「そんな貴女様を王太子妃に相応しくないなど誰が言えるでしょうか」

「ちょおおおおおおおと待った!!!!」

「うわっ!お嬢様声を抑えてください。いくらパーティーホールから離れているとは言え、いつだれが聞いているか分からないんですから」


 おっと、忘れていた。

両手を口に当てごめんなさいと頭を下げる。

 いやでもね…誰が王太子妃に相応しいって???

あれれ、おかしいな。私は王太子妃になりたくなくて頑張っているはずなのにどうしたんだ

真逆に言っていないか?どうして?


「それって誰が言ってるの?お父さま?お母さま?それともお姉さまとお兄さま?」

「この話は屋敷の者だけでなく他領の貴族や使用人も話していますよ」


………


「そんな有名であるお嬢様に向かって伯爵令嬢たちも恐れ多くて何も言えないのではないでしょうか」


………………


「それにお嬢様はめったに人前に出なかったこともあり話題の人物として皆耳にしていたことでしょうし」


 そのあとレットがなんて言っていたかは聞いてない。

それどころであるはずがない。

どうしてこうなった。いや、領主の頭角って公爵家には既にお兄さまという素晴らしい次期当主がいますし私なんてそれに比べたらなんとお粗末なことだろう

 確かに悪口よりはいい意味で有名な方が嬉しいよ。でもさ、私は王太子妃になりたくなかったはずなのにどうしてこうなってんの?

何を間違えたんだろう。わかんないけど

 ミシェッタ嬢に叩かれた頬の痛みよりもレットによってはじめて知った事実の方が私にはダメージが大きい。

誰か嘘だと言ってほしい。

 髪を整え、ドレスを整え、頬の赤みが引いたのでパーティーホールへと戻る。

 だが心の中は大いに荒れ狂う。

 最初の穏やかな気持ちはどこへやら。可能なら今すぐ自室でエリオットにこのことを手紙で綴り図書室にでも籠って現実逃避したい。


「こんにちは。リズビア嬢」


下げていた視線を声のする方へと移せば目の前には二度と会うかと思った人物が立っている。


「こんにちは、マルコス様。わざわざ我が領まで足をお運びいただきありがとうございます」


メガネの奥にでは相変わらず胡散臭そうな笑みを貼り付けた彼

今日は厄日なのかしら?


王太子妃を辞退するはずが押されている事実を知っちゃた。

でも、そんなに一筋縄なはずがないのも社交界

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