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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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領地祭1日目

 ホールには多くの人々が訪れ、私は訪れた方々に挨拶しながら世間話をしていく。

 もちろんほとんどの会話内容がお姉さまとお兄さまの服についてなのだが…

いやね、ほんとお2人が目立たれるのはいいんだけどさ

別に言わなくてよくない?私が案を出したなんて

お姉さまが堂々とご友人方に話されてるのが聞こえたときは肝が冷えた。黙っておいてほしい。目立ちたくないんですう!!!!

社交界慣れしているお姉さまと違って私はいわば引きこもり。社交界なんて基本行っていない。そんなことするなら勉強か土いじりの方が楽しいもの

 エリオットには貴族令嬢がそんなのでいいのかと言われたが気にしたら負けだと思ってる。

 そんな私が領地祭に出るのすら奇跡?に近いのにお姉さまはさも当然と「このドレスはリズビアが―」なんて言ってくれちゃっているのだ。

やめてください。お姉さまのご友人の嬉々とした視線が痛いです。

妹は目立ちたくないのです。

 お兄さまに関しては直接聞いた相手に対してはさらっとはぐらかすくせに、まったく関係のない会話の途中で自分から「リズビアが僕のために考えてくれた衣装だから今日はいつもより自信が持てるんです」的なことを言う。おかげでお兄さまのご友人からは羨まし気な視線が多数寄せられる。

2人にやめてくれと視線で訴えればとってもいい笑顔を返された。

あれは絶対やめる気がない奴だ。

 もう半ばやけくそに訪れる人にライ麦パンを渡し「うちの領の特産品ですの」と口封じし始めている。仕方がない。これは私わるくない


「こんばんは、リズビア嬢」

「!こんばんは、ようこそおいでくださいました。ヒルデ様」

「相変わらず人気ものですね」

「あはははは、そうでもないですよ」


人気者…ね。嬉しくはないかな


「我が領はいかがでしょうか?」


 ヒルデ様にライ麦を勧めながら伺ってみる。

 集まる人に一度は尋ねるが皆うわべだけですぐに服の話に移ってしまう。その点ヒルデ様ならいろいろ答えてくださる気がする。直感でしかないけれど


「そうですね、領民がとても笑顔で貴族にも気さくというんでしょうか。心から出迎えてくださっているのが伝わりますし、領民の方々はガーナ家の皆さんをとても誇りの思われているのは伝わりました」


誇りに思ってもらえている。その一言で先代たちの努力が実を結んでいることを実感できる。うれしいな


「それに下水などが綺麗に整備されている点は我が領にはまだ不十分であるため目を引きました」


 下水…確か我が領は4代前の公爵が長期的で大規模な政策を行ったはず。最初は領民に反発されて一時期は領民との間に亀裂が生じていたらしいけれど最終的にはみんな納得してくれた。だからこその今に繋がるわけで…


「コングラッツ伯爵領では下水整備は行っていないのですか?」

「していないわけではないのですが、領民の納得が得れていないのと下水設備意外に望まれているものが大きくて着手できていない形ですね。情けない話ですが」

「情けなくはないと思います。領民の声を聴くことは大切です。領民あってこその領地であり貴族なのですから」


ヒルデ様はぽかんとした表情をこちらに向ける。

それがなんだかおかしくて笑みが深まるのを感じながら、伝える。


「領民の意見を尊重することも領民のためを思って貴族が政策を施すこともどちらも大切です。けれど意見は衝突してしまうもの。だからこそ互いを知ることが大切なんですよ」


ヒルデ様が手にしているライ麦を指さす


「お互いを知ったうえでその様な特産品が生まれ、民の喜びが領地の活気になり私達の次へのやりがいへ繋がる。そうして我が領は今まで発展してまいりました。きっとコングラッツ伯爵領も出来ますよ」


だって同じ人間なのだから。出来ないと思っていないならやりよう次第だ


「リズビア様」


後ろから声をかけられる。

確かメドイッシェル伯爵家の方だった気がする。


「ヒルデ様、どうぞ我が領の領地祭をお楽しみください。失礼いたします」


ドレスの裾を摘まみ上げて優雅に淑女の礼をとる。

礼儀作法は完璧にしたから問題ない!

出来てないとお母さまとおばあさまが怖いんだもの

怒られたくなければ子供は頑張って褒められるようにするまでです。

 顔をあげるとヒルデ様はなぜか固まっている。それに違和感を感じながらも気のせいだろうと次なる客人の挨拶に向かう。


 あぁ、忙しいけど領地祭は楽しいわ。領地を知れる機会だもの頑張らなくちゃ!


まだ1日目なんです。あと2日もある…

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