領地の特徴
ライ麦パンが食べたいです
今日はおじいさまの書斎に来ています。
書斎と言ってもお父さまの書斎の様に机の上に束になった書類はないし、おじいさま自身が書斎に張り付けという状態は全くない。
お兄さまと2人で隣り合わせに座りながらおじいさまご指導の下、領地についてお勉強中です。
まぁ私は0からスタートなので基礎の基礎から学んでますが、お兄さまは勝手に資料を手にとっては比較し紙にまとめ分からないところをおじいさまに聞くというような感じです。
手がかからない優秀な兄さまで私は鼻が高いですよ。
「ガーナ公爵領はファンネルブ王国建国から54年後にできた領だ。初代ガーナ公爵は戦争で大きな功績を収めたのと王の優秀な補佐官であったことから公爵と言う爵位を賜った。もともとガーナ公爵領は今と真逆で飢えた土地で民は困窮していたんだよ。それが今のようになったのは先代たちの努力あってこそなんだ」
「なるほど。では、もともとは貧しかった土地がこれほど豊かになった理由は何ですか?」
おじいさまの説明をメモしながら疑問点を書き出しては聞いていく。
「一つは戦争が終わりを告げたこと。二つ目はガーナ公爵が東遠の国で栽培されている劣悪な環境にも対応できる作物を手に入れたこと。三つ目は領地の者の声を直に聞くことをずっと続けてきたことだな」
「二つ目の作物と言うのが我が領の主要な作物でもあるライ麦と芋ですか?」
「そうだね。ライ麦はパンやお菓子に使用される。芋と言っても我が領はサツマイモと言う芋がメインに栽培されている。栄養価が高いのも栽培が盛んな理由の一つだ」
パンやお菓子の材料が我が領の主生産物と言うのは嬉しい。だってパンもお菓子もよくお世話になっているもの
芋も種類があるのか…。家に帰ったら一度どんな種類があるのか調べてみましょう
「では、三つ目が関係するのはなぜですか?」
「三つ目は領民が持つ我々へのイメージが他領よりいいということだ」
「?」
「昨日のリズビアたちが商業団に直に視察に行き話を聞くことでいろいろな関係性が見えたといっていたね」
コクリと頷く。
話を聞いたことで全く関係のないと思っていたこととの関連性が見えてきたわけだし…
「他の領地ではね上の者にしか話を聞かなかったり、ただ労働している姿を見て終わるところもあったりするそうだ。問題点などは紙面での報告のみ。それでは大まかな問題点は分かっても細部の問題点は見えないし、民の本心を聞くことは出来ない」
確かに直接話したからこそ問題点がよく分かったし、みんなで話し合うことでいろんな考えに触れられた。あれをしないというのは民と領主の間に生まれる距離が大きくなるのではないだろうか。
「自分の意見を少しでも取り入れてもらえたら嬉しいだろう?それに一方的に何かを決めるのではなく少なくとも意見を聞いてもらうこと、意見を聞き入れることで領主にとっても領民にとってもいい関係性を築ける。無論、すべてがそうそううまくいくわけではないから時には領主として一方的に何かを決めなくてはならない。しかし、ずっとそうであるよりかは話し合いをし、民を知り、民が我々を知ることが大切なんだ」
「なるほどぉ」
我が領はそんなすごいことをしていたのか。
なら、その取り組みをおじいさまもお父さまも行い、そしてお兄さまも行うのか。
だから昨日商業団の方たちはあんなにいろんな意見を出していたんだ。すこしでも自分たちの暮らしが、領がよくなりますように…と
「そのおかげでうちの領は他に比べて収穫祭が賑やかで盛大なんだよ」
お兄さまが資料から顔をあげてペンをクルクル回しながら教えてくれる。
「そうなんですか?」
「だって領民は僕らが領主であることを望んでくれているからね。だからガーナ公爵領での収穫祭っていうのは領主側からしたら豊作と領民に感謝を伝える催しであり、領民からした収穫祭っていうのは豊作と領主への感謝の祭りなんだ」
「他の領はただの豊作を祝う祭りなんでしょうか?」
お兄さまは「多くはそんな感じだね」と頷いてまた資料に目を向ける。
ガーナ公爵家だからこその他領と違った思いがある豊作祭。
それは、先代の当主達からずっと続いてきた大切なことが繋がってきたからこそのものなんだと思う。
その思いはきっと―
「大切にしなくてはなりませんね」
その言葉にお兄さまは小さく頷き、おじいさまが柔らかく笑う。
書き留めていたメモ帳はあっという間に文字でいっぱいになり、おばあさまに見せたら優しく微笑まれ新しいノートを頂くのはもう少し先の話。




