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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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やり直し

「なんで12日後なんだと思う?」

「…姉さまそれ本気で言ってますか」


シルビアは読んでいた本から顔を上げ私のことを心底ありえないといった風に見つめる。

最近シルは私が発言したことに対してこのような表情か、呆れた顔をすることが増えた。

そして必ずと言っていいほどに周りも同じような反応をする。

解せない。


「申し訳ありません、シルビア様。お嬢様はご興味がないと覚えておられないタイプですので」


そう言ってレットが空いたティーカップに紅茶を注ぐ。

覚えてないってことは一回は聞いているってことだ。しかもシルが知っているからそこそこガーナ家に関連があることなんだろうな。

う~んと頭を捻れどまったくヒットしない。

なんだったっけ


「そう言えばリズビア様は一度も顔出ししておりませんでしたか」

「顔出し?」


ゴッテルは心底呆れたように眉を顰め、こちらを見つめる。と言うよりソファーに座っている私をそこそこ背の高いゴッテルが立って見つめるため、見つめるよりは見下ろされているの方が正しい。


「シルビア様はお身体がすぐれなかったので昨年はやむなく断念されましたが…貴女様は一体何をされていたのですか?」

「…何してたっけ?」

「質問を質問で返さないでください」


ゴッテルは私を睨みつけるが正直怖いとは思わない。

自分の今までの行動が招いた結果だし、正直ゴッテルの反応は理不尽でもなんでもなく当たり前の反応だから私は気にしない。しかし一年前のこの時期になにをしていたのかなんて全く覚えていない。

本当になんかあったっけ?


「昨年お嬢様は旦那様にねだられていたお人形で一日中遊ばれていましたよ」

「あぁ、そうね。確か一日中人形遊びした日があったわね」


めずらしくなんの勉強もなかった日だ。あの日お父さまに駄々をこねて買ってもらったぬいぐるみでひたすら遊んでいた。遊んで食べて寝て…今考えればよく許されたなあんなこと


「姉さま悪いことは言わないので今一度公爵家の当主の予定は頭に入れておくべきですわ」

「うん。そうする」


シルは垂れていた髪を耳にかけ、ティーカップに口をつける。

妹に諭されては姉としてしっかりせねばと思う。

というか私の方が妹みたいになっている気がしてならない。おかしいな~

紅茶とともに用意されたお茶菓子に手を伸ばす。

今日はマカロンらしくいろんな色と種類のものが用意されている。

ひとつつまんで口に入れる。程よい甘さが口いっぱいに広がり口角が緩む。

あぁおいしぃぃ!!


「そういえば、姉さまには届きました?」

「ふぁにふぁ?」

「殿下からの―」

「げほっ!」


むせた。盛大にマカロンが変なところに入っちゃったよ。

ゴホゴホしてるとレットが背中をさすってくれる。ありがとう。


「…届いたんですね」

「う、うん」


正直届かなくてよかった。むしろ届かないで欲しかった。

あんなお誘い嬉しくない。


「姉さま返信は出されましたの?」

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」


沈黙が談話室に落ちる。

一か月後に王妃様の誕生会が開かれる。王妃様たっての願いで誕生会は夜間ではなく昼間に行われ、形式としては王城茶会と同様になるらしい。王城茶会には王都にいる子爵以上の階級のものには招待状が届く。それはあくまで主催者から各家の当主並びにその奥方へ

つまり今回であれば王妃様からお父さまやお母さまに招待状が届き、家族全員で参加するのが普通なのだ。な・の・に!

つい先日殿下から私宛になぜか届いた王妃殿下の誕生日茶会への招待状。

意味が分からない。

うちに出してないのか?と思ってお父さまとお母さまに確認したら王妃様から招待状は届いているという。どうして送られてれてきたのか謎は深まる一方。


「姉さま、せめて返信はしましょう。仮にも友達なのでしょう?」


違うちがうと首をブンブンと横に振る。

友達じゃないよ!共犯者だもん。しかも勝手に脅されたんだよ。できることならあんな腹黒情緒不安定とは関わりたくない。でも従わないと婚約破棄のことをばらされかねない。個人的にはばらしていただいてもいいんですけどお母さまやお姉さまに何と言われるか…。

ヴィオにも怒られるし。

はぁとシルが小さな溜息をつく。


「それでも返信は書かなくては礼儀に欠きますわ」

「…た‥ん」

「?お姉さま聞こえませんよ」

「…‥‥書いたよ。定型的な返信は」


そう。ちゃんと出したのだ。定型的な返信文のものを


【この度はわざわざ殿下から王妃殿下の誕生茶会への招待状をいただき大変うれしく思います。当日お目にかかれることを楽しみにしております。】


的な内容で私はわざわざヴィオの監修のもと書いて出したのだ。

なのに!なのに!!


「では、なぜ最初に伺った時黙っていたのですか」

「歓談中に失礼いたします。それについては私から説明させていただきます」


レットが私の代わりに説明していく。

ヴィオの監修のもとちゃんとした手紙を返信したこと

それについて返信があったこと

その中身が―


「殿下からの返信にはお嬢様が送った手紙とともにただ一言『やり直し』と書かれたメモが入っていまして…」

「…」

「「………‥‥は?」」


そう。出したはずの手紙がまさか送り返されしかもやり直しと言われたのだ。やり直しと

やり直しってなんだよ!!!!!!!!


「で、殿下がお姉さまに―」


シルビアはそうこぼすと俯いて肩を震わす。

ゴッテルはありえないといった顔で口を開けたまま固まっている。


「それは災難でしたね、姉さま」


シルはいたわるように微笑んでくれる。

さすが私の妹!殿下の理不尽さに泣きそうな私を慰めてくれるなんていい子なの

私は立ち上がってシルの側へ移動し、ギュッと抱きしめる。


「シル~大好きぃぃぃ」

「私も姉さまが大好きですわ」


抱きしめ返してくれる妹が可愛すぎる。

殿下の嫌がらせによる不満が薄れていく気がする。


「やり直しって酷くない?」

「そうですね。でも返信をもう一度求められているわけですから送り返さないというのはいけないと思うのです」


ごもっともです。


「なので、ヴィオや周りに確認するのではなくありのままのお姉さまで手紙を出せばいいのではないでしょうか?」

「…それでいいのかな?」

「むしろ姉さまと殿下は一応友人ですから友人らしい手紙を求められているのではないかと」


え、友達らしいってなんだ?

????私友達って言えるのエリオットぐらいしかいないんだけどな~

ハードル高くない?

でも、まぁとりあえず


「がんばる」

「はい、頑張ってください」


シルビアに応援されたので頑張ります。


結局12日後になにがあるのかは聞き忘れるというね…

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