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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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神殿広場

更新が遅れた理由にはいくつかあるんですけど、大いなる原因はパソコンが壊れたことが原因です。

いや~充電さしっぱにしてたら過充電でバッテリーが膨らむというね

パソコン買い換えに1か月半もかかり、更新が遅くなってしまいました。

皆さん充電のし過ぎにはくれぐれも気を付けてくださいね!

 3日後


 白いドレスに身をまとい髪はおろして左サイドだけリボンを編み込む形でアレンジを加えた姿で私は公爵家の馬車に揺られている。

 隣にはレイチェルお兄様が白を基調とした下地に一本の黒いラインが入ったズボンにわが家紋のエンブレムが胸元に刺繍されたジャケットを着用している。いつもお兄様はかっこいいと思うが今日は一段とかっこいいと思う。

 これは他家のご令嬢たちの視線を独占してしょうがないでしょうね。

 お兄様はまだ婚約者が決まっていない。公爵家の長男であり将来的な約束がある立場にいながら婚約者の話が一度も出てきていないのはお兄様ぐらいなのではないかしら?

引く手あまたであろうお兄様はどんな方を一体婚約者に選ぶのやら…。


「ケホッ」

「シル、大丈夫?」


 顔色はさして悪くないように見えるけど咳をしたシルビアは申し訳なさそうに眉を下げる。


「申し訳ありません。体調は整えたつもりなのですが咳がなかなか止まらなくて」

「無理しちゃだめよ?」

「ありがとうございます、リズ姉さま」


 シルビアは嬉しそうに私に微笑む。

 レイ兄さまもシルを気遣うそぶりを見せるも本人が大丈夫というからか言葉にはしなかった。


「3人とももうすぐ大神殿につくよ」


 お父様の声掛けに馬車の窓をのぞき込めば真っ白な神殿の城壁が続いている。


「シルビアは体調を最優先しなさい。無理をして後に響いてはいけないからね」

「かしこまりました、お父様」


 お父様隣に座るシルの頭をなでながらいたわる言葉をかけてくださる。


「レイチェルは何度か大神殿には来たことがあるから大丈夫だろう?」

「そうですね。と言っても3回ほどですが、大体は覚えています」


 お兄様は大神殿に3回も訪問したことがあるのね。

 私もシルビアも今回が初めてだからお兄様からなるべく離れないように気を付けておきましょう


「リズビアは…殿下たちもいらっしゃるからくれぐれも失礼のないようにね」

「…はい」


 どうしてお父様一瞬言いよどんだのですか?

 お兄様は肩を震わせて笑ってらっしゃるし、シルは困ったように微笑むし

 私は不服ですという表情を全面的に出しながらお父様を見れば、お父様は苦笑しながら頭を撫でてくださった。

そんなことで気がそれたりしませんからね‼


 ガタン


「閣下、大神殿に到着いたしました」

「わかった」


 業者の声掛けからお父様、レイ兄さま、シルビア、私の順で馬車を降りる。


「ようこそ大神殿においでくださいました」


 白い神官の衣装を身にまとった男性が私たちを出迎える。


「ご子息様は左手にあります神殿広場にて神官が神殿の説明を行わせていただきます。閣下は右手にございます東棟の大会議室へお願いいたします。ご子息様方はあちらの神官について行ってください」


 案内された方向には女性の神官が立っており、柔らかいお辞儀をされる。


「じゃあ僕たちはあっちに行こうか」

「はい、兄さま」


 レイ兄さまの後ろをシルの手を握ってついて行く。

 女性の神官は私たちが近づくと再度一礼し、黙って広場のほうへ案内し始める。

 建物は言わずもがなすべて白であるが、光の当たり具合なのか少しずつ同じ白色でも明暗が違う気がする。

例えば壁の白は下側よりも天井側のほうが際立っているように見えるし、柱は逆に床に近いほうが明るく天井側は暗いように見える。

といっても本当に光の当たり方や影による見え方の差なのかもしれないけど


「こちらになります」


 案内されて足を踏み入れた神殿広場は室内にかかわらず芝生に覆われており、あたたかな日差しが降り注ぐ大きな天窓に覆われていた。


「すごい」

「あたたかで落ち着きますね」

「お褒めいただきありがとうございます。こちらは主神・ファゼウスの導きにより光が人々の癒しになることを体感できるように建設された広場になっております」


 女性神官が柔らかく微笑む。

 信仰心はあまり持ち合わせていないが個々の構造は先ほどの説明を受け納得できるものだ。神殿内部でありながらこれほどまでの太陽光が降り注ぐ場所があるとは圧巻である。


「リズ、シル行くよ」


 お兄様は神官に一礼し、先に到着している令息令嬢たちのいる方へ足を進める。

すでにかなりの人数が来ているようだ。


「おや、ガーナ公子久しぶりですね」

「お久しぶりです、ナーガス、パトリック、スヴェン」


 お兄様に声をかけてきたのはどうやらご友人たちのようだった。お兄様には目線であとは大丈夫ですとだけ訴えれば、意図をくみ取ってくださったようで一つ頷いて令息方のほうへ向かう。私とシルは少し離れた場所にてあったベンチに腰を下ろす。


「シル、体調はどう?」

「問題ありませんわ。むしろここにきてから少し楽になった気がします」

「本当?神殿効果ってやつかしら」

「まぁ、姉さま神官様に咎められますよ?」

「咎められては困るから内緒ね?」


 おちゃめにウィンクしてみればシルビアがくすくすと笑う。

それにつられるように私も笑う。

少しでもシルの体調がよくなっている?のならよかった。


「ごきげんよう」


 水色の髪をハーフアップにしたアマリリスが私たちの方へやってくる。


「アリス‼お久しぶりですね」

「リズに関しては本当に議無沙汰していますね。シルは体調が良さそうでよかったわ」

「ご心配をおかけしてますね、アリス」

「友達ですもの心配させてくださいな」


 アリスのエメラルドの瞳が優しく揺れる。


「アリスのドレスとてもかわいいわ‼マリン・ビーナのところの?」

「さすがリズ。お目が高いわね。そうよ。カロワインの最新モデルでお願いしたの」


 アリスが着用しているドレスは薄手のレースが胸元と腰回りに重ねてありボリューム感もあるが薄手の生地のおかげで重たくなりすぎず上品も兼ね備えられている。

また、動くごとに裾が広がるのがかわいらしさをプラスしている。

さすがマリン・ビーナだ。

きっとここ数年はアリスの着ているドレスが10代前半の子女に人気となることだろう。


「神殿ということでやはり皆さん白ベースの服装ですね」

「そうね。神聖国の神官方ですからいつも以上にお父様も服装を気にされてましたもの」


 いつも以上に…ね

 やっぱり親世代はピノが教えてくれた外交問題に敏感になっているのだ。

犯人が不明な現時点で神聖国側への無礼をこちらが働けば、やはりファンネルブ王国側に問題があったのではないかといった印象を持たれかねない。そうならないための対策の一環なのだろうな。服装に気を使うことも、神聖国側の要求をのむのも。


「綺麗なご令嬢方がそんなところにいるなんてもったいないですよ?」


 うーわー早い早い

 声のした方に顔を向ければ太陽光にあてられ輝く金髪と麗しいご尊顔を際立たせる白の礼装を身にまとった殿下こちらに歩いてきていた。


「「「王国の若き太陽にご挨拶申し上げます」」」

「堅苦しいのはいいよ」

「ありがとうございます」

「殿下も来られていたのですね」

「ああ。今回は私だけでなく弟も参加するように陛下に言われてね」


 殿下が後ろに立っていた殿下に比べ背が頭一つ分低い少年を前に促す。


「ほら、リンデン挨拶を」


 殿下と同じ金髪に少し自信なさげな大きな新緑の瞳が印象的に映るこの方が殿下の弟君であるリンデン・デ・ファンネルブ第二王子殿下


「は、初めまして!リンデン・デ・ファンネルブと申します。公爵令嬢の皆様にこうしてご挨拶できてうれしい限りです」

「初めまして、リンデン殿下。殿下とは遠い親戚関係になります、ゼルダ公爵家のアマリリスと申します」


 アリスの礼の後にリンデン殿下はアリスの手を取り、優しくその手のひらへ口づけを送る。


「お初にお目にかかります。ガーナ公爵家の次女リズビア・ガーナと申します。こちらが妹の―」

「三女のシルビア・ガーナと申します。殿下にお目にかかれましたこと大変嬉しく思います。今後もどうかよろしくお願いいたしますね」


 二人そろって淑女の礼をとる。


「貴女が兄様がおっしゃられたご令嬢なのですね⁉僕、一度お会いしてみたいと思っていたのです‼」


 リンデン殿下が興奮気味に私の手を取る。

びっくりした私はリンデン殿下の言葉を脳内で再度繰り返す。

ちょっと、待て。後ろで肩をおおいに震わせている悪魔は一体私のことを何と言っていたの。


「リンデン殿下、お兄様であられる殿下は一体私のことを何と申されていたのですか?」


 リンデン殿下に握られていた手を私も握り返す。ちゃんと重要なことだからそこのところは詳しく教えていただかないと‼

スッと伸びた手が私たちの手に覆いかぶさる。


「おや、リズ。リンデンも私も殿下なのだが?」


 ええ、この方がその犯人です。

いや、そうじゃなくて―


「え、いや、リンデン殿下と殿下で分けて―」

「殿下だと区別がつかないな」


 聞いてました?リンデン殿下と殿下で私ちゃんと分けてましたよね???

あと人の話は最後まで聞きましょうね?

というか今まで殿下で問題なかったじゃん

今更何て呼べと?


「リンデンのことも私のことも名前で呼べばいい」

「…殿下」

「リズ、殿下は却下だ」


 横暴すぎやしないかね?この王子は


「ウィル王子様とリンデン王子様とお呼びしたのでよろしいですか?」

「…もう一押しほしいとこだが」


 もう一押しとは?

 え、これ以上何と言えと??


「ウィル第一王子様」

「なぜ遠ざかる?馬鹿なのか?」


 急な罵倒。酷くない?


「はぁ。なぜ君はこの問いがわからないのか理解に苦しむよ」


 殿下はため息を吐き出す。

 いやいやため息吐く前に手を放せ‼しれっとリンデン殿下の手は放しているのに私の手は握ったまんまなんですよ?


「私には殿下の問いが大変難しく理解に苦しみます」

「殿下呼びは却下したはずなんだがな」


 えー面倒くさいぞ。この王子様


「シルビア嬢、私の求める回答はなんだ?」


 殿下はシルビアに質問を振る。まるでシルビアには答えがわかっているような問い方だ。


「殿下が求められる回答に沿っているかはわかりませんが、ウィル様、リンデン様とお呼びするべきなのでしょうか?」

「さすがシルビア嬢は物分かりがいいな」


 悪うございましたね。物分かりが悪くて


「さて、答えが出たんだ。リズもわかっただろう?」

「ウィル様、リンデン様」

「よろしい」


 殿下がサラリと髪に触れ、触れるだけの口づけを落とす。

ねぇそれいる??

その工程いる?

大変不服な私を置いて回りはなぜか生暖かい視線が漂う。

リンデン殿下においてはなぜか嬉しそうにしているし(興奮している?)

殿下は満足気にしている。意味わからん。


「さすがリズね」

「アリス…何が?」

「あら、無自覚なの?」

「だから何が?」

「何というかリズのそういうところちょっと残念ね。まあ見てる方は楽しいからいいんだけど」

「何もよくないから助けてよ」


 助け船をくれなかったことに対して苦言を呈せばアリスは困ったように笑う。


「王族相手に会話に割って入れと?」


 そんなこと出来るわけはないのはわかっている。それが貴族社会のルールだから。でも、愚痴ぐらいは聞いてほしい。


「愚痴ならいくらでも聞いてあげるから我慢なさって」

「本当に?」

「ええ、だって私たち友達でしょう?」

「~っ、アリス好き‼」


 アリスに抱き着けばアリスからも抱擁が返ってくる。

 いい友達がいてくれて嬉しい‼特に社交界での友達というか交友がほぼない私には仲のいい令嬢がアリスくらいしかいないのだけど

ぎゅっと抱き着いていれば耳元でアリスが笑ったのが息遣いでわかる。


「ということで、頑張ってきてね」

「え?」


 アリスに引っぺがされたかと思えば勢いよく反転させられる。

目の前にはなぜか意地悪な表情の殿下が…


「ゼルダ嬢のことが君は好きなのか」

「え、ええ。友達としてアリスのことは好きですよ」

「なら私のことは?」

「ふぇ?」

「リズは私のことをどう思っているのかと思ってな」


 そんなの苦手というかできれば近づきたくない存在なんですけど、そんなこと正直に言ったら今後どうなるかわからないから言えるわけなくない????

え、今日一の難問じゃん


「あ、えっと殿下のことはこの国の次代を担っていく素晴らしい方だと思いますし、周りをよく見ていらっしゃる洞察力も兼ね備えられた方だなと」

「つまりは?」

「つまりは?!え、殿下はかっこいいですね??」

「ほう、そう思っていたとは光栄だよ」


 あ、よくわかんないけど乗り切れました?

ホッと一息ついた瞬間、ガシッと肩に手が置かれる。

ひぇっ


「だが、もう一回やり直しでお願いするよ」


 なぜ?!


「殿下呼びは却下だといっただろう?早く慣れることだな」

「―っ!!」


 こんの鬼ぃぃぃぃぃぃぃ!!



いつだってリズは殿下に振り回されてますよ

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