領地祭まで1か月
さてさて季節は廻り、1か月後に領地祭を控えました。
ということで、
「今年は領民の領地祭を知りたいの!!」
「リビアがなんか言ってんぞ」
書類にペンを走らせながらアローが悪態をつく。
私も手元の資料に目を通しては修正をしてヴィオに回していく。
「酷くない?」
「書類仕事が溜まってますからね。アローもイライラしてるんですよ」
「そんな時こそ息抜きにさあ」
「いいじゃない!私はリビアと領地祭回りたーい」
「私もハンナと回りたーい!」
「はいはい領地祭は一か月後なんだから、今は仕事裁こうね」
エリオットがハンナときゃっきゃしてたら困ったように窘めてくる。その後ろには眉間に皺のよったアローの姿が見えてちょびっと反省する。
アローを怒らすと執務室から追い出されかねない。
「でも、領地祭は領民は領民。お貴族様はお貴族様でお祭りするじゃん」
「そうね」
ビンズの言葉に頷く。
貴族はお祭りというかパーティーなんだけどね。
ビンズからしたらパーティー=お祭りなのかしら?
「そんな中で領民の方に参加したいって難しくない?」
「確かに全日ってのは難しいけど、一日ぐらいなら何とかなるの」
にっこり笑う。今年はどうしても領地祭は領民の過ごし方が知りたくて華鏡祭の後からずーっとお父様とお母様にお願いしていたのだ。一日、たった一日でいいから領民の領地祭に参加させてほしいと。
お父様はすごくすごく渋っておられたけど、つい一週間前にOKをいただいたのだ!!
いや~、頑張った私。粘り勝ちというやつである。
また、今年の領地祭にはシルは領地に来れないとの連絡をもらった。どうやら華鏡祭の後からちょくちょく体調を崩しているらしく、今度本邸に帰るときは風邪薬を持って帰ってあげようと思う。
「リビアは領地祭参加したことないの?」
ベイクの問いに頷く。
「基本的には公爵家のパーティーの準備とかしていたから」
「エリオットは領地祭参加したことあるのにね」
ベイクの言葉に内心ぎくりとしてしまう。
そりゃ、公爵令嬢である私はなかなか外に参加はできないからね~
「まぁ、各々役割が違うから仕方がないよね」
「ふ~ん。でも、領地祭に参加したいってなんか目的があるの?」
「目的というか雰囲気を知りたくて」
「雰囲気ね」
ベイクはそれだけ呟いて自分の仕事に戻っていく。なんなんだ。雰囲気だけ知りたいって駄目なの?え?
知りたくない?雰囲気。どんな屋台があって、領民がどう思っているのか。何が人気なのかとか。私は知りたいけどな…。
「そういや、うちの商会も今年の領地祭は屋台というか簡易店舗出店するから」
「え?!そうなの?」
私聞いてないんですが?!
アローに視線を向ければ頷かれる。
「ノグマイン商会も知名度が出てきてるんだ。こういう領地祭とか祭に簡易店舗出店で少量を低価格で売ってとっつきやすくすることで新規顧客や再リピーター獲得に繋がんの」
それは確かに一理ある。
ノグマイン商会の名は王都でもそこそこ知れている。貴族のターゲット層はある程度種まきできたから次の段階へのシフトチェンジといったところか。
「なるほど」
「ちなみに、カスクードも販売する」
「やったー!」
椅子から立ち上がって喜べばヴィオとレットから窘めるような視線をいただく。
はい、すみません。はしゃぎました。
「リビア本当にカスクード好きだよね」
「食べ応えあって好きよ」
以前、料理長にお願いして作ってもらったカスクードは、ケイジュたちに好評であったため調理法に特許を得てノグマイン商会の取引先や系列店舗のパン屋さんにお願いして1か月試験的に販売したところ、当初のメインターゲット層である男性陣の人気を得ることが出来た。
それからいろいろと種類を増やし、お店によっては人気トップ5に食い込んでいるという。
女性陣にはかぶりつくというのはやはり抵抗があるらしく(私はあまり感じないのだけど)、カスクードを5等分ほどにカットしたものを販売したところ、一口サイズで人気を得ることが出来たのだ。
そんなカスクードが領地祭で食べられるなんて最高だわ!!
「まぁ、そういう事だからその書類もよろしくな」
アローが満面の笑みで私を見つめる。
「ふえ?」
ヴィオが持ってきた書類。持ってきたヴィオの顔が見えないんですけど?
「ナニコレ…」
「領地祭用の提案書」
アローが淡々と答える。
「どうしろと?」
「もちろん精査するんだよ、お前が」
「鬼かな?」
「はは、鬼のが優しいかもな」
「…」
上げて落とすとはこういうことを言うと思うの。
「ううううううううううううううう」
「あーあ、リビアが唸りだしちゃったじゃん」
「いつものことだろ?」
「「「「確かに」」」」
アローの言葉にエリオット、ハンナ、ビンズ、ベイクが頷く。
レットとヴィオも静かに頷いているなんて私だけが知らないのだ。
いつだっていじられキャラのリズビアです。




