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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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どうしてこうなった

 優雅に紅茶を啜るリズビアの対面に座る殿下は驚きの表情からすぐさま張り付けた笑顔で取り繕う。決して人に動揺を見せるなという帝王学の教えを発揮する。

 スッと手を挙げ後ろに控える侍従に何か言づける。


「少しの間2人にしてもらいたい」


 殿下の言葉にヴィオとレットが狼狽える。狼狽える2人の顔を見ずにそっと手で退出を促す。殿下に退出を言われてしまえばそれに従うしかない。


「ヴィオ、レット退出を。殿下と2人でお話するから」

「「かしこまりました」」


 応接室から従者が出て行き殿下と2人きりの空間になる。

 さっきまでならきっと緊張で胃がやられていたところなんだろうけどいろいろと吹っ切れたからもう大丈夫…なはず。


「さて、リズビア嬢先ほどの言い分はよくわかりました。しかし僕の最初の質問にはまだお応えしてもらえてないようなのですが?」

「ギクッ…」


 あいにく忘れてはくれなかったようで、殿下の顔を伺えばとてもキラキラした眩しい笑顔をむけられる。

圧が、圧が凄いです。

 しかし、2人きりの状況でこのままだんまりっていうのもよろしくない。意を決して口を開く。あぁ、早く終わらないかな~


「で、殿下がは‥‥すぎて」

「?はい?」


 うっ。面と向かって言うのってきついな。想像の5倍ストレスになっている。

 でもこれって私が自ら言ったっていうより殿下に言わされているわけだから不敬罪にはならないよね?ならないよね?


「ですから、殿下のその笑みが——です」

「申し訳ないがリズビア嬢、もう少し大きな声で言ってもらえませんか?」


 あああああ!もうどうにでもなってしまえ!!

 いつの間にか謝罪茶会からやけくそ茶会(?)になっているが気にしてられない。


「ですから、殿下のその笑みがうさん臭すぎて、腹黒そうで何考えているか分からないから怖いのです!!」

「…」

「殿下の笑みは前まではとてもかっこよくて素敵だと思っていたのに、今では腹黒にしか思えない。故に怖いのです。ですから出来る限り殿下にお会いしたくないのです」


 とりあえず、言いたいことは言い切った。

 殿下の表情は俯いてしまったために伺うことはできない。でもこれで怒られでもしたら理不尽の極みでしかないだろう。


「‥‥」

「‥‥」


 沈黙が痛いんですけど。

なんか言ってほしいぃんですけどぉぉ


「ふ、ふふふ、あはははッ!」

「!!」


 え?怖い怖い怖いなになになに、急に笑い始めたとか怖いです。

 私の言葉によって殿下の頭がおかしくなっちゃったのかしら。お医者様でも呼んだ方がいい気がするんだけど。とりあえず、外の者を呼ぼうと立ち上げろうとすれば急に腕を掴まれる。もちろん掴んだ相手は1人しかいない。


「で、んか??」

「いやいや面白い。はぁ~久しぶりにこんなに笑った」


 握られた手に嫌な汗をかく。鼓動が早鐘を打ち黄金の瞳(殿下)から目を離せない。

離したら何が起こるか分からない。


「まさかこんなに変わるとは。なぁリズビア嬢」


 ゆっくりと顔を上げた殿下の表情は今までと違いとてもイキイキとした悪い顔をしていた。

こんな殿下を見たことがない。今までも―夢でも―

はじめての顔に驚きが隠せない。


「俺を腹黒と正面から言い切ったご令嬢は初めてだし、ましてや今まで他のご令嬢と何ら変わりなくいや、それ以上に俺に酔っていた令嬢が本性に気づくなんて‥‥」


 金色の瞳が光を帯びる。


「おもしろい」

「—ひゅッ」


 あれ?なんか間違ってしまった??

 それより殿下の雰囲気がさっきまでと全然違う気がするのだけど…


「殿下、先ほどまでと全然雰囲気が違いませんか?何かおかしなものでも―」

「ふはっ。頭がどうかなったんじゃなくてこっちが俺の素であって今までのはただの猫だよ」


…おふっ

え、今まで私殿下の猫かぶりに心ときめかせていたの?怖い

普通に怖い。よかった。気づけて。というか―


「‥‥それを私に打ち明けてよろしいのでしょうか」

「さア?それはリズビア嬢の捉えようにお任せする。しかし、これで俺とリズビア嬢は共犯者だな」


 どこをどうして共犯者になりました、私達。

 確かにいろいろ暴言(?)というか公爵令嬢としてあるまじきことを口走った気はするけれど決して共犯者になった記憶ないです。


「君は俺が好きな奴と婚約するまで隠れ蓑を演じてくれる。その代わりに君が婚約者候補から外れたいということを黙っている。これが一つ目の共犯。そして二つ目に俺は君にウィル・デ・ファンネルブの本性を見せた。さて、君はなにを俺に差し出す?」


 知らない間に取引が始まっているんですが。私取引した覚えないんだけど。どうしてかな?王族怖いね。うん。この人将来私を殺すかもしれないから怖いことに変わりないんですけれどもね。


「…わかりません。分かりませんが、それでも殿下の利になるものを提供出来たらと思います」

「ふ~ん。なら、俺の友人になれ」

「友人ですか」

「あぁ、俺の素を知ってる奴は少ないから貴重なんだよ。だからお前は貴重な人間なわけ」


 どうしてかな。急に胃がキリキリと

 え、今すぐヴィオ達呼び戻したい。


「友人になれば友人価格で取引してやってもいいぜ」

 

 これでノーと言えるほど私の神経図太くないです。


「わかりました。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」


 今まで掴まれていた手をさっと握手する握り方に変えられる。

これが王族。これが王子。

うん怖い。

 満面の笑み(素か猫かぶりかわからない)な殿下と対照的に胃がキリキリして絶望する私。

何がどうして婚約者候補から友人に変わったのか…

私はただただ関わりたくなかったのに。


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