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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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華鏡祭2日目

「リビア!そんなに走ったら危ないって」


足を動かして人と人の間をすり抜ける。


「早くしないと終わっちゃうんだもの!!」


後ろにいるエリオットに聞こえるように声を張る。

 だって今日は華鏡祭2日目。自由行動が許されている日なのだ。

 昨日頑張ったご褒美ということで、お父様にエリオットとヴィオとレットと城下の出店を見て回ってもいいというお許しをいただいたのだ。

たった1日で全部回れるとは思っていないけれど、それでも多くを見て回りたいと思う。

 基本的に城下の店に出向くときは馬車での移動だから、こうやって走り回ったり、自分たちで歩いてどこかに行ったり、いろいろな店を見て回るというのはないのだ。

何なら店に行くよりも商人が家に来ることの方が多い。これは公爵家という立場だからこそということは重々承知であるけれど…。それでも城下に憧れないわけではないわけで

 人ごみをかき分けて進んだ先では華やかな服装の人々が踊り舞う。

 シルクハットの中から鳩を取り出したり、はたまたウサギを取り出したり、その隣では笛を吹いている人が何人もいてその前で薄いレース状の布を幾重にも重ねて踊り子が軽やかなステップを踏む。


「凄い…」


思わず零れる言葉。

 初めて見た光景に少し圧倒される。私たちの年齢だとまだお城のパーティーとかも参加することがないから催しでこのようなものを見る機会もなかった。


「手品に、踊り、あっちではジャグリングもしてるね。この辺りは見世物が多いみたいだからお土産とかは別の場所に行かなきゃだな」


隣に並んだエリオットが前を向いたまま説明してくれる。


「エリオットは昨日も見たの?」

「いや、昨日は親父と一緒に花売りしてたよ」


 花売り…。華鏡祭の象徴といえる国花の販売は花屋や庭師にとっては一番の稼ぎ時といっても過言ではないものね。

町にいる人の多くが左胸や耳元にサテンクリィフェを身に着けている。

中にはサテンクリィフェを2本以上持っている人もいる。…どれだけの運命を持っているのかしら?


「ここ見終わったらお土産見に行くだろ?」

「うん!シルにお願いされた本とかいつもは見られないものや食べ物も食べたいな」

「お土産はシルビア様のだけか?」

「うん」


 シルに頼まれたのは小説の新刊と歴史書、あとは隣国の辞書と経典の第4巻。本当はシル自身で今日取りに来る予定だったのだが、昨日のお茶会が響いたのか朝から微熱があるとのことで今日はお屋敷で療養中なのだ。

あの子は元から体が強い子ではなかったから仕方がないことだけれど、明日のパーティーには一緒に参加してほしい。私の心の安寧のために。


「そっか、じゃああの手品が終わったら移動して早めに昼食を済まそう」

「お昼は何食べるの?」

「串肉と上げ焼きかな」

「何それ、おいしそう」

「たぶんリビアは気に入るやつ」


 お肉を串に刺してどう調理しているのかしら?気になる。あ、おなか減ってきた。

ぐぅぅううううううううううう


「…」

「……ぷっ。ふっくっ」


 エリオットが笑いをこらえようとしてこらえられずに噴き出す。

いや、うん。確かにお昼ご飯の話をしてすぐにおなかを鳴らす私も私だと思うのよ?それでもさ―


「そんな笑わなくてもいいじゃん!!」


 隣のエリオットに向って文句を言うも、言われた本人はいまだにおなかを抱えて笑っている。もういっそのこと声出して笑ってくれたほうがましな気がしてきたわ。


「お2人とも、手品が終わりましたので移動しますよ」


ヴィオの言葉にエリオットがようやく笑いをおさめる。おかしくないか?私の抗議は届かないというのに…。


「リビアは朝からテンション高めでしたから消費が激しいんですよ。笑って差し上げないでください」

「ねぇ、ヴィオそれはフォローになってる?」

「リビアのフォローよりは事実を述べたまでですね」


ヴィオが味方かと思ったら実は違っていた。なんてことだ。


「早くいかないと串肉屋が行列出来ちゃいますよ?」


レットの言葉で渋々移動を開始する。


「串肉ってどんなの?」

「牛肉や豚肉をこれぐらいの串に刺して焼いてる」


エリオットが手で串の長さを表す。

思っていたよりも串の長さは長い。だって私の指先から肘ぐらいの長さよ?それだけでおなか一杯になりそう。


「味付けは塩コショウから付けタレ、チーズ、香辛料など屋台ごとに違うようですよ」


何それ、絶対おいしいやつじゃん!!


「リビア、食べれるのは1人1本だけだからね?」


エリオットの念押しにうっとなる。

 だって、全種食べてみたいじゃない。確かに少し前の自分が1本でおなか一杯になるって思ってたけどさ…

ちらりとエリオットを見る。

エリオットは困ったように笑う。同じように前を歩くレットやヴィオに視線を投げかければ2人も困ったように笑う。

じぃぃぃぃぃぃーーーー


「リビアの視線が凄いから、全員違う種類を購入して分けて食べよう」


レットの言葉に破願する。

やったぁ!

みんなで分けて食べればきっとおいしさも倍増するし、色々食べれるしいつもなら出来ないけど今日だからできるっていう思い出にもなるしいいことづくめね!!


「ついでだから飲み物も大きめを2人で分け合おうか」

「確かに、荷物が大きくなると移動に響きますからね。無難なのはハーブ水とリンゴジュース、オレンジジュース、ブドウジュースあたりかと」

「ヴィオとリビアで1本、俺とレットで1本でいい?」

「まさかエリオットリビアと一緒に飲むつもりでしたか?」


ヴィオがエリオットを信じられないものを見る目で見る。

見られているエリオット側はため息を吐き出しながら笑っている。


「その目やめろ。考えてないから」

「何の確認ですか?」

「一応の確認は必要だろ?」

「二人とも仲いいよね~」

「「…」」


どうして二人とも黙るの??!!私なんか間違ったこと言いました?

レットに助けを求めればレットは苦笑を漏らすだけ。

嘘じゃん。仲いいことはいいことじゃないか。なぜそんな顔をするのかわからないよ。


「…リビアって天然だよな」

「そういうところが怖いですよね」


3人がうんうんと頷く。ええ、意味が分からない。

 そのあとも串肉屋につくまでいろいろなものを見て、話して、歩いてを繰り返す。


「もうすぐ着くね」

「まだすいてそうでよかった」

「味は…塩コショウとタレとチーズと野菜タレのようですね」

「ヴィオよくここから見えるね」


 結構距離あるんだけど。私が小さいから見えないのもあるけどエリオットも見えてないからかヴィオの方を驚いたように見ている。


「目はいいほうなんですよ」


 ヴィオは目もいいんだね。…私の侍女は何でもできちゃう優秀な侍女ですって誰かに自慢したい。ヴィオの凄さを改めて知ってにこにことしていれば前からやってきた男のこと肩がぶつかってしまう。


「わっ!ごめんなさい」

「いえ、俺の方こそすいません」


 少年に慌てて謝ると向こうもうつむいたまま謝罪する。黄色の髪の毛がくるくると巻いている。これは意図的に巻いているのかな?

少年はすぐに私から離れて私たちと逆の方向に歩き出す。

服装はどこかよれていて決して質がいいとは言えない布で作られているのが分かる。

町の人間が着ている服より質が落ちるってことはよっぽど生活が苦しいとかなのかしら?

それにしてはあのよれ具合…。まるで何日も服を洗っていないような―


「リビア?」


エリオットに呼ばれたことで自分が立ち止まっていたことを知る。


「あ、ごめん。すぐに―」


違和感。

エリオットたちのもとに走ろうとして自分の左手に違和感を覚える。さっきぶつかられたからとかじゃなくて軽いのだ。手首が

そっと手首を見ればそこには赤い数珠はどこにもなくて…


「…ない…」


見世物を見ていた時、歩いていた時、家を出たときはちゃんとしていた。だって肌身離さずのほうがいいって書いてたから。


「リビア?どうかし―」

「どうしよう!ブレスレットがなくなっちゃった」


ブレスレットってちょっと付けたときとのけたときに違和感あるんですよね。

(作者は結構違和感感じちゃうので…)

リズもきっとそんな感じだったんだと思います!


というか、どこで落とした?ブレスレット

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