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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
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出会いは繋がる

「だー!!わかんないいいいいい」


 宿の一室で持っていた本から顔を離して、脱力する。


「リビア、あまり大きな声は…」


 ピルマが困ったように眉尻を下げる。そうだよね。他のお客さんに迷惑かかるかもだよね。でも、でもね…


「わかんないんだもんんんんんん!!!!」


 私は―というか、私、ピルマ、パネッサの3人は宿で『ベソラの華』の解読をアローから命じ…頼まれている。おかげでこの部屋は床までびっしりと広げられた本、本、本。

いつぞやの課題の再来かな?ってぐらいですね。はい。


「まあまあ、アローさんも探せとは仰いましたけど既に接触は叶ってしまいましたし…」

「だからって諦めるわけにはいかないだろう?」

「パネッサ」


パネッサは黙々と本を捲る。

 諦めるわけにはいかないというパネッサの言い分も間違いではない。ただ、アローが考えなしに接触したのが今日の朝だった。本人曰く偶然見つけたから接触したとのこと。

どこまでが本当化は知らないけど、おかげさまで私達3人は大いに苦しんでますよ?

 だって、いつ相手が来るかわかんないけどなるべく早めに見つけなくてはならないのが現状だ。この間の閣下からの課題より鬼畜じゃんね。

おかしくない?

 それを文句言わずに黙々と調べる私達偉くないですか?誰か褒めてほしいぃ

 ファイシャはアローと一緒に交渉チームに入っている。レットはアロー達のところに“水晶の華”が接触したことを私達に伝える伝達係。ヴィオは資料になりそうなものを運ぶ係。


「せめてヒントとかあればな~」

「あるじゃないですか」


パネッサは本から視線を離さず答える。


「どこかの国の訛り」

「「…」」


そうだけど、そうじゃないんだよ!?パネッサ!

せめてどこの国かとかが明確になっていれば…

 はぁ。ため息を吐いて窓の外を見る。

 今この瞬間にもあちらは上手く接触を測れているかもしれないのだ。

頑張りたい。そうは思っても…

 はぁ。もう一度溜息が零れる。


「しかし、“水晶の華”という海商はかなり昔からあるんですね」


ピルマの言葉に頷く。


「もう300年以上の歴史があるよね」

「始まりは東方小国だったのが色々な国出身の組員を入れて、今では世界に名が知れた商談になっていますもんね」

「凄いよね~」

「でも、どの時代も船員は皆男性ばかりなんですよね」


 乗組員はどの資料を捲っても男性だった。おそらく航海は身体的にもしんどいから女性は中々入りづらいのかもしれない。ただ、そうなると益々『華』という言葉に引っかかりを覚えてならない。

『華』とは東方では、女性・華やかさ・優雅・繁栄を表す。

『水晶』は人目を惹く・輝く・透明・目利きの良さを表すとされているそうだ。

東方の小国から始まり、今まで継続して“水晶の華”という言葉を使っているあたりから言葉の意味としては東方のものをあてはめることが妥当だと思う。

 華っていうのは女性を表すものではないってことなのかな~。こっちの方だと華は品ある女性を表すと言ってもいいものだ。やっぱり文化の違い?

 もしそうなら…そもそも“水晶の華”として伝わらないと思うんだけど…。う~ん。

せめて、


「せめて名前が割れた船員の出身国とか分かれば―」


 船員の名前を書いた紙を本をどかしながら探す。

どこに言ったんだっけ?確かこの辺にあるはず。あ、あった。

名前を書いた紙は本の下敷きになっていて、頭の方の文字だけが見える形になっている。


ベン―

ラーヒ―

・ソ―


ん?あれ、これって‥‥‥


「ピルマ、鋏とかなんか切るものない?」

「え、あ、ちょっとお待ちくださいね」


 ピルマが部屋から出て行く。

 本に埋もれていた紙を拾い上げて書かれた文字をまじまじと見つめる。

ベンネル・マルフォイ おそらくベンネルが名前でマルフォイは姓だろう。

なら、リ・ソホは?並び的に東方の国の名前だろう。リは名前でなくて姓、ソホが名前。

ラーヒズヤ・ラヨン・ヴァルマ ラーヒズヤかラヨンどちらかが姓になると思うけどどっちかは分からない。可能性としては前者だけど確証はない。真ん中のラヨンが姓の可能性があるけど、どちらかというと真ん中はミドルネームだったり隠し名だったりすることが多い。となればだ、ここはラヨンが名前だとすると…。


「…リビア、何か分かったんですか?」

「ん~とね、パネッサ。“ベルマの華”の前半は解けたかもしれない」

「え?!」

「リビア、鋏ですよ~」

「ありがとう」


 ピルマから鋏を受け取りそれぞれの名前で切り離していく。

それの順番を入れ替えて並べる。


ベンネル・マルフォイ

リ・ソホ

ラーヒズヤ・ラヨン・ヴァルマ


 名前の先頭文字であるベ、ソ、ラに印をつければ―


「「これって!!」」


 ピルマとパネッサが驚きの表情でこちらを見る。

それに頷き返す。


「多分これが“ベソラ”なんだと思うよ。問題はこのあとの“華”だけど」


 もしこの仮説が正しいならおそらく“ベソラの華”というのはベソラにとって大切な何かなんだと思う。あの時、情報屋は『『ベソラの華』を見つけられれば―』と言っていた。

見つける前段階で躓いているのだけど、見つけるということは実在していて空想ではない。

華、女性、訛り、海、渡航、海商、交渉…


『レトの実は海の向こうじゃ一個3ベルで買えるんだよ。なのにここでは1個6ベルだって?ボりすぎじゃないかい』


 交渉の場で出会った女性。国外を知っていて―


『観光と仕事の一環さ。お嬢ちゃんは?』


 仕事で来ていて―


『ファラさんの言葉に若干の訛りがある気がして、この辺では聞かないからきっと海の外側なんだなって思って』

『なるほどね。あんたみたいに気づくやつはめったにいないよ』


 訛りがあって―

…あの人は腰になにをつけていた?思いだせ、思いだして。

赤と黄色の腰ひもに水晶のような小さな玉をつけていたはず。そして、服装は他国の衣装だったけど特徴としては航海をするときの船乗りの男性がよく着ているものに似ていて…


『あたしはベルムだよ』


……。


『この話はもう50年前にちょっとした客から聞いた』


 50年前ならあの人はおそらく10代ぐらいだったはず。もしそうなら?あの時私はなんて思った?そうだ。ファラさんとはすぐに会えそうだって


「ピルマ、ベルム国の言語の本を至急ヴィオに言って持ってきてもらって!!」


 もしかしたらそうなのかもしれない。


「パネッサは東方、特にベルム近郊の本をこの中から見つけて調べるわよ!」

「え、は、はい~」

「わかりました」


 ピルマが大慌てで部屋を出て、パネッサは訝し気にしつつも部屋内の散乱した本を選別する。記憶力のいい彼のことだ、選別はきっとすぐに終わるはず。

あとは―























時間との勝負だ

定期的にリズビアは叫んでますね。

公爵令嬢がそんなに叫んじゃダメなのに…(おそらくヴィオに見つかったら小言言われます)

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