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生真面目悪魔は日常を生きる

「ねえ、これを見て頂戴!近所の露店で手に入れたの!50年...ん?500年?ぐらい前に作られた魔導具で、90セルだったのよ!安くない?いい買い物をしたわ!」


そう、満面の笑みで話す少女ーーーーアルフィーナは、自分の頭ほどありそうな物体を持ちながら私に言う。

私が助けられたあの日からもう2年が経つが、この少女は一向に変わる気配がない。それが良いことか悪いことかは別としてではあるが。


「そうか、それはよかったな。...しかし、魔導具は限られたごくわずかのものたちにしか作成出来ないと聞いていたのだが。それを見る限り、お前の生成魔法でも作れそうな気がしないか?」


アルフィーナが掲げる物体、それは円盤の形で鏡のようになっている。ーーーーーーいや、現状ただの鏡にしか見えないのだが。

ちなみに1セルでリンゴが5つほど買えて、手鏡を買う場合はおよそ5セルになる。


「そんなわけないじゃない!この魔導具は凄いのよ?なんと、これを覗けば通常の1.5倍ぐらい実物より細く映るのよ?なんて素晴らしい魔導具かしら!!」


「ぼったくり商品じゃないか」


そう一言言うと私は素早くアルフィーナから魔導具もどきを近くにあった窓から投げ捨てる。そして、数秒後に辺りに響き渡る悲しい破壊音。


「ーーーーーーわぁああああん!!エレスのばかぁぁぁ!!なんで投げ捨てるのよおおおおお!」


アルフィーナが飛びかかってくるがそれをひらりとかわす。


「いや、要らないだろ。この家には鏡なんて腐るほどあるじゃないか」


「鏡なんかじゃないわよ!ま・ど・う・ぐ!!」


「どこがだよ...」


そして私は再び飛びかかってくるアルフィーナと取っ組み合いを始める。

しかし殆どの家では詐欺で90セルをぼったくられた、という話は普通笑い話にもならない。それが何故こんな茶番で済んでいるのかという点の理由はアルフィーナの家にある。

トワンソン家は代々強力な魔導師を輩出してきた家系であり、王家に対する忠義は並みのものではなく、絶大なる信頼を置かれてきた。

その二点だけで王国指折りの家格にまで這い上がったトワンソン家の武勇伝は、当時の周囲の貴族たちの中でも語り草とされることが多かったそうな。

そんな出来事が100年ほど前にあり、それは今のアルフィーナにまでしっかりと受け継がれている。

そして今目の前にいるアルフィーナは次代のトワンソン家の当主であり、立派な貴族令嬢なのである。

そんな家に拾ってもらえた私は本当に僥倖と言えようか。

さらに幸いなことに、今代のトワンソン家の当主ーーーーーーアルフィーナの父にあたるーーーーーーも大変人柄が優れた人物で、私のことも快く了承してくれた。

ーーーーーー私がアルフィーナの家族になったあの日、今までほとんど水浴びをしたことがなかった私は初めて“お風呂”と呼ばれるものを目にした。

まずは身だしなみを整えてもらって。

次に私は人間社会の言葉を改めて習った。アルフィーナは言葉遣いも整えてようとしたが、そればかりは断固として拒否させてもらった。

アルフィーナは「私の『天使エレスちゃん☆』の夢があああぁぁ!!」と崩れ落ちていたが、こればかりは素知らぬふりをした。

そうする内に、自分の感情を表情に、言葉に、相手に伝えられるようになっていった。

そして中身も整えてもらって。

こうして今の“エレス”に至ったわけであるが...当初とは全く程遠い姿である。


「ーーーーありがとう、アルフィーナ。お前には感謝してもし足りない」


「!?なによ、急に。そんなこと言っても私は騙され...ハッ!これは俗に言う“ツンデレ”ってヤツかしら!!?」


アルフィーナがなにか呟いているが、まあいい。こうした日々のありがたみを再び思い出せたから。


「そういえばアルフィーナ。確か今日はハルフさんと会う約束をしていなかったか?」


「あぁ!!露店の魔導具ですっかり忘れてたわ!」


「あれはもう忘れろ」


ハルフ・フェルリーナーーーーーーこのゼンダース王国王家の右腕として活躍するフェルリーナ家の令嬢で、才色兼備として名高い才女である。齢は17と、アルフィーナより3つ上で、彼女はハルフを姉のように慕っている。実際姉妹のように仲睦まじい姿はこの二年間の間にも確認されているため、私とハルフは既に旧知の仲となっている。


「ハルフさんは確か午後から来られるとおっしゃっていたから...今の時間は...っと」


アルフィーナは壁に立て掛けてある時計を見やる。

すると時間は既に午後に差し掛かろうとしていた。


「ーーーーわああああああ!!大変大変!もう来るじゃない!今日は魔法の稽古もつけていただこうと思ってたのに!」


「...ったく。お前も騒がしいなぁ...」


呆れ半分にアルフィーナを眺めていると、


チリンチリン


「「あ」」


家中に呼び鐘が鳴り響く。そして重なる私とアルフィーナの声。

アルフィーナは光の速さで玄関まで駆ける。そして、


「お久しぶりでございます、ハルフさん。息災でございましたか?」


先程魔導具もどきで騒いでいたものとは同一人物とは思えない対応っぷり。


「あら、いつも丁寧にありがとう、アルフィーナ。勿論私は元気よ?...2ヶ月ぶりくらいかしらね」


そう、微笑むハルフ・フェルリーナ。銀髪碧眼の女性は最後に会った2ヶ月前と何ら変わりない。

しかし、悪魔のなかで当たり前とされる黒髪紅眼の自分からすると金髪や銀髪を風にたなびかせるアルフィーナやハルフの姿は、とても眩しく時々羨ましく思えることも無くはない。


「エレスもーーーー元気そうで良かったわ。...ところで、今日はアルフィーナに魔法の稽古をつけるっていう話だったわよね。鍛錬所に行きましょうか」


そう考えていたせいか、私はハルフの今の“間”に気付くことが出来なかった。


「来られて早々に、申し訳ありません、エレスさん。では案内させていただきますね!」


めっちゃ今回頑張りましたよ!短いけどな!!

こんくらいの長さで良いんだったらこのペースで出せないこともなくなくなくはない。

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