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生真面目悪魔は光を見る

今回は初めなので固いストーリーとなっております。



『そんなこと、気にしちゃだめよ!自分らしく生きましょう?』


ーーーーーー私は、この言葉を永遠に忘れない。



☆☆☆



ーーーー私が、自分が“悪魔”であると気付いたのはいつだろうか。

それは、遠い昔のことであり、その記憶も、時の流れと共に薄れかけている。


ーーーーーー“悪魔”ーーーーそれは、長い年月を生きるにもかかわらず()()()他者に愛されたことがない生き物である。

見た者には畏怖の感情しか与えず、存在するだけで悪の対象となる。

快く思われたことがなく、虐げられ続けてきた彼らこそが、一番の被害者なのではないか、と私は思う。

気付いた時には周りには誰も居なくて、今思えばここまで生きるだけでも奇跡に近いことだ。

そして、いつか自分が悪魔だと気付いた。その時は絶望の感情を越えた何かが全身を渦巻き、それは筆舌に尽くしがたい。

それも当たり前だ。“悪魔である”というだけで自分の未来が決定してしまったのだから。

しかし、それに終止符を打ったのは“自分以外の悪魔の存在”だった。ニンゲンが調べたのだろう、悪魔の生活方法が事細かに書かれた本をたまたま見つけたのだ。

これがなければきっと自分は何処かで野垂れ死んでいた、とはっきり言える。

ニンゲンの面倒くさい言語もなんとか覚え、ニンゲンの文化を知る。ニンゲンに馴染んで行く自分に嫌気が差すことが頻繁に起こり、いっそのこと本も燃やして、自分も死んでやろうか、といつも思っていた。

ーーーーーー彼女に出逢ったのは、そんなときだった。

醜い姿、心をしたニンゲンのことを一度たりともそんな感情に思ったことなんてなかったのに。

いつもなら真っ先に憎悪の感情が上がるのに。

この時はただ目の前に現れた少女のことを“美しい”と思った。そんな感情を生まれて初めて持ち、それに気づいた途端、自分の頬を熱い何かが止めどなく流れていった。

初めて自分の存在を認めてくれたその少女は、私に問いかけた。


「なんで...泣いているの?」


「分からない」


「何か悲しいことでもあったの?涙は悲しいときに流すのよってお母様が言ってたもの」


「悲しくは...ない」


「...?じゃあ嬉しいのね。だから泣いてるのよ!」


「そうかも...しれない」


こちらが何も言っていないのに、自分の中で話を完結させてしまう少女。

私は今...嬉しいから涙を流しているのだろうか。感情がうまくまとまらないが、何故かそれがとてもしっくりくる。

私の返答に、表情を輝かせた少女は、


「あなた、名前は?」


「エレス」


「家名はないの?」


「......分からない」


それを聞いた少女は、少し考える素振りを見せて、


「じゃあ、私の家名をあげる!私の名前はアルフィーナ・トワンソン。そして、今日からあなたの名前はエレス・トワンソンよ!私、ずっと年が近い兄弟が欲しかったの!よろしくね、エレス。あなたは今日から私の家族よ!」


ただでさえ今は頭が働かない私に、少女ーーーーアルフィーナは私に家名を与える。

しかし、アルフィーナーーーー彼女らしい名前である。まだそれほど彼女について知ったわけではないのだが。

未だ頭の整頓が追い付かない私がトントン拍子に進む話にストップをかける。


「待て。ーーーー家名は、貰えない。」


思わぬ返答だったのか、それを聞いた彼女は目を見開き、


「なんで?」


純粋の塊のような彼女の疑問にーーーーーー私は真実を告げるべきか迷う。

ここで自分の正体を彼女に打ち明けるのならばーーーー十中八九、アルフィーナに嫌われ、逃げられてしまうだろう。

しかし、ここでそれができなければ、彼女の家に連れていかれることになり、すぐに正体がバレ、即刻殺されるだろう。

今までの私なら前者しかあり得ないと思っていた。というか後者の可能性すらも考えたことがなかった。

なのに、目の前のいたいけな少女の顔を泣き顔にさせたくない、というだけの理由が自分の考えをまとめさせない。

その直後、甘い匂いが私の鼻腔をくすぐる。


「ーーーーーー」


何事かと思えば、二メートル程離れていると思っていた距離が、いつの間にかあっという間に縮められ、彼女に抱き締められていた。

いつもなら何をしていても自分の身の回りの気配を察知することが出来たのに、いつの間にかこの少女にはそれをさせないほどに信頼を置いていた、ということになる。

背丈は自分より小さくて、とても弱そうなのに。

今までの感じたことがない安心感が私の心の刺を絡め取る。


「そんなに怖がらないで。何があっても私が守るから」


何物よりも心強いその言葉を聞いた途端、体の力が一気に抜ける。


「大丈夫、大丈夫」


彼女の言葉の音一つ一つが脳内に木霊し、意識が遠ざかっていく。


「おやすみ、エレス」


その言葉を最後に私の意識は途切れた。

次回からお笑いだったり、魔法だったりを突っ込んでいきたいですね。(やるとは言ってない)

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