六話
現在、朝日のクラスでは、世界が変わったという自覚のないことよりも、朝日と奈々の話題で持ちきりだった。
それもそのはず、どんなに美女だろうか、どんなイケメンだろうが皆平等に恋は一度しかできないものだ。
確定した恋愛関係は二度と取り消すことはできない。
そういった事情もあり朝日や奈々のファン達が嘆くのも無理はなかった。
奈々が朝日にウィンクをした日、放課後にクラスメイト達に群がられて質問ぜめにあった奈々はあっさりと朝日と付き合うことになったことを自白した。
朝日からするとあまり、嬉しい状況ではないが、今までいろんな女性から色目を使われたり、まるで記念受験のように告白してくる女生徒が居なくなったことを考えると、あまり悪くないのではないかと考え始めて居た。
しばらくして、朝日と奈々が付き合ったことによるゴシップも下火となり、クラス公認といったらおかしいが、朝日と奈々が教室で会話するにあたって邪魔をするものも居なくなった。
そういったこともあり、徐々に朝日と奈々の関係も打ち解けていった。
...
「なぁ朝日ー!お前らどこまでいったんだよ?Aか?Bか?それとまさか…裏切り者ぉ!!」
昼休み、教室で昼食を取りながら、木崎が朝日に対して羨ましそうな声をあげる。
「いや、それどころか、デートすらしたことないって。てか、お前…ABCっていつの時代だよ。」
と朝日が突っ込むが。本当に朝日と奈々は一度もデートしたことなかった。
付き合った当初に比べれば、学校で話す数は増えたが、あれきり一緒に登校どころか、学校の外で会った事がない。
そろそろ何かあってもいいのではないかと朝日自身も思うのだが。朝日が奥手なこともあり、2人の仲は進展して居なかった。
一瞬芽生えかけた恋の火もいまではそれが本当にあるのかどうかすら怪しい。
「おいおい…それって照れ隠しじゃなくてマジなのかよ」
真剣そうに考え始めた朝日の顔を見て、木崎が言う。
「うん…」
「うん。て、お前。あれだけ女子と付き合ってたじゃないか。なんでそのお前がデート1つまともに誘えてないんだよ」
「だって俺、自分から誘ったことないし、好きかどうかも分からないんだ…」
「ばっお前!なんで付き合えてるんだ?好きでもないのに付き合うなんて…できるのか?前の世界では…出来たのか。お前、そういえばかのじょたくさんいたもんな…」
木崎が混乱し始める。世界が唐突に変わった影響で、現在前の恋愛について考えるととてつもない矛盾が起こるのだ。
「分からない…」
黙り込む2人。考えても答えが出ない疑問である。とにかく、朝日はこの関係の曖昧さには何度も頭を悩まされた。
いっそのこと、本当に好きになって奈々と恋人同士になれたら1番なのだが、なぜか距離が埋まらない。
自分と奈々だけが世界に取り残されてしまったようだ。
「まあ、その話は俺たちだけの秘密にしておこう。そんなことがしれたら、お前らまた逆戻りだし、もし分からられでもしたら次に告白されたらお前は本当にアウトだ。」
真剣な顔で木崎が言う。どうやら本当に朝日のことを考えているらしい。
「ありがとう」
話がひと段落するとちょうど授業の予鈴がなり、2人は次の授業の準備をするのだった。