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誘われしダンジョンマスター設定資料  作者: 北のシロクマ
アレクシス王国の暗部 if
82/84

VS満持紀子

注)今回の話にギャグ要素は含まれておりません。

シリアス回なのでご了承下さい。


「紀子‥‥」


 2人の予想通り、満持紀子(みつもちのりこ)は3階の一番奥の部屋に居た。

満持を挟んだ両サイドには全身鎧を身に付けた護衛2人が、カズヨとボルチェを警戒している。


「あら? 誰かと思えば和代じゃないの。フフ、まだ見苦しく生きてたのねぇ」


 満持はソファーに腰を下ろすと、カズヨを小馬鹿にして笑いだした。

だがボルチェ達はその間も油断なく構える。


「紀子! 私は貴女を許さない。絶対に‥‥許さない!」


 漸く辿り着いた復讐相手を前にしてカズヨが叫ぶ。

カズヨにとっては、同じクラスメイト2人の仇が目の前に居るのだ。


「ふーーん? それで? たった2人だけで私を殺すつもり?」


 本来ならば追い込まれてる筈の満持が余裕の表情を見せる事に、2人は違和感を覚えた。

そこでさりげなくその理由を聞き出そうと、ボルチェが会話に交ざっていく。


「随分と余裕を見せるんだな。そっちこそ、たった2人だけの護衛で守りきれるとでも思ってるのか?」


「あら、心配してくれるの? でも生憎と私にはもっと頼りになる護衛がいるのよねぇ」


 そう言ってソファーから立ち上がると、腕に嵌めてた腕輪を撫で始める。

すると腕輪から光が漏れだし辺りを全体を包み込む。


 その光はほんの数秒で収まったが、代わりに2人の前には、光沢を放つ大剣を備えた銅像のような騎士が現れた。


「気を付けた方がいいわよ? その子とっても強いから。魔物で言えばCランク相当はあるんじゃないかしら。ついでに紹介するけど、名前はグロースガーディアンって言う守護者なんですって。折角来て下さったんだもの、少々お相手して下さいな、フフフ♪」


 満持の余裕の表れが明らかになる。

もし本当にCランク相当なら、2人だけだと苦しい闘いになる。

だがこの場で満持が嘘をつく理由がないため、言ってる事は本当なのだろう。


「カズヨ、俺があの銅像を引き受ける。お前はあっちを()れ」


「了解!」


 満持の傍らに居る護衛達の実力は不明だが、少なくともグロースガーディアンよりは下だとボルチェは結論付けた。

それは満持のグロースガーディアンに向ける視線で感じとったものだ。


「さぁ私のナイト達、私を守る為にその力を存分に発揮なさい!」


 満持の命令で動き出すグロースガーディアンと護衛の兵士2人。


 その内グロースガーディアンを相手にするのはボルチェだが、さすがに相手はCランク相当とあって動きがいい。


 ブォン!


「っと、危ねぇ。デカイ割には良い動きじゃないか。こいつぁ厳しい‥‥なっと!」


 キィィィン!


「チッ! 頑固オヤジが‥‥」


 無言で大剣を振り回すグロースガーディアンを翻弄しつつ胴体を切りつけるが、ダメージが通ってる感じはしない。

動きだけじゃなく、胴体も硬いようだ。

 因みにボルチェが口走った【頑固オヤジ】とは、物理防御が高く自分の持ってる武器では通用しない硬さの相手に対する嫌味である。


「容易くはないか‥‥なら仕方ない」


 戦況を改善させる為、ボルチェはインカムをONにする。


『ノアーミー、ヤミー、どちらでもいい、増援に来れるか?』


『ごめんねぇ、ちょーーっとばかしモテ期が来たみたいで、手が離せないのよ』


『同じく。暫く待っててほしい』


『了解』


 この分だと増援は暫く見込めない。

出来れば魔法が得意なノアーミーかヤミーに頼りたかったが仕方ない。

ならば今出来る事をするのみ。


「時間を稼ぐか‥‥」


 そう呟くと、短剣を構え直した。




 ボルチェがブロンズガーディアンを相手に向かったのを見て、カズヨも護衛2人の方に向き直る。

そしてこの護衛達も無言でカズヨに斬りかかって来た。


「くっ‥‥てゃ!」


 ガキン!


「くぅぅ‥‥」


 余裕を持って斬撃を避けるが、中々攻撃が通らない。

さすがに2対1だと厳しいのか、中々隙を突けないでいた。

カズヨの方は防戦一方に成りつつあった。


「ほらほらどうしたの~? 私を殺すんじゃなかったの~?」


 一瞬だけ満持を睨み付けてすぐに護衛達に視線を戻す。

そして再び斬りかかってくる護衛達は、言葉は交わさないのに息が合ってるように見える。


「どう? 強いでしょう? 私とアンタは守られるだけだったけど、2人はいつも前に出て戦ってくれたっけねぇ」


「え?」


 突然何を言い出すのか‥‥そんな思考がカズヨの頭の中に生まれる。


「気付かない? 彼等の動き。アンタも散々見てきたでしょう?」


 満持に言われて思い返す。


 ‥‥そうだ、以前にも‥‥いや、もっと前から見てきた動きだ。

その彼等の動きを、いつも後ろで‥‥。


「っ! ま、まさか‥‥」


 そしてカズヨは思い出す。

プラーガ帝国からアレクシス王国に来るまでの道中で、散々見た光景を。


「フフ、2人共、顔を見せてあげなさい」


 満持の命令で兜を外す護衛達。

その兜の中から現れたのは、カズヨのよく知っている‥‥。




「佐藤君! 中井君!」


 かつてのクラスメイトで、満持やカズヨと共にプラーガ帝国に召喚された男子2人だった。


「どう? 久しぶりの対面は。懐かしい顔ぶれでしょう?」


「ふざけないで! 何でここにいるの? それに、2人に何をしたの!?」


 男子生徒2人は目の焦点が合ってなく無表情の為、とても不気味に見える。

そして無表情のまま剣を振るってくる動きは、不気味さを更に加速させる。


「何って、死体を操ってるだけよ? この2人は身体能力が高いからねぇ、そのまま死なせるのは勿体無いじゃない?」


「そんな‥‥」


 どのような仕掛けか不明だが、死んだ筈の2人が操られてるのは本当のようだ。


「ねぇ、さっきよりも動きが鈍くなったようだけど、最初の勢いはどうしたの?」


「くぅ‥‥」


 今カズヨが闘ってるのは、かつてのクラスメイトであり、かつての仲間である。

その2人と剣を交えてると思えば、動きが鈍るのは当たり前だ。


「なーんか白けたわね、もう少し頑張ってくれると思ったのに。グズでノロマなのは昔から変わらないのねぇアンタ。じゃあ飽きたからそろそろ終わりにしましょう」


 そう満持が言うと、男2人はカズヨに一直線に向かってくる。

縦に並んだ状態の2人の戦法は、1人が打ち合ってる間にもう1人が上から串刺しにするというものだ。

この動きは1人だと手に負えない相手に対して、生前の彼等がよく好んで使ってた手段だ。


 そんな彼等の動きを見て、距離をとろうとしたその時!








 ズドォォォン!


「な、何!? 何事!?」


 遠くで何かが爆発するような音が響いた。

その音に驚いた満持は、視線をカズヨから外した。

 すると、何故か2人の動きが止まり、隙だらけになった。


「今なら!」


 チャンスは今しかない。

彼等の敵討ちのために彼等を傷付けるのは抵抗があったが、この機を逃せば勝機はない。

そう自分に言い聞かせ、一気に2人に詰め寄ると、手にしたダガーで手首から先を切り飛ばした。

 これで2人の護衛達はまともに闘えない。

ここへ来て形勢が変わろうとしていた。


「な!? ちょ、ちょっとアンタ達、何やってんのよ! グロースガーディアン!」


 たまらず満持はグロースガーディアンを呼び寄せようとするが‥‥。


「仕事柄、足止めが得意なんでな。邪魔をさせてもらおう」


 ボルチェの巧みな動きに翻弄(ほんろう)されたグロースガーディアンは、ボルチェを避けて満持のところまでたどり着けないでいた。


「く‥‥どいつもこいつも使えない!」


 そう吐き捨てた満持は、窓から外へと身を投げる。


「紀子!?」


 一瞬理解が追い付かず、反応が遅れたカズヨはハッっとなり、すぐに後を追った。


 窓の外はバルコニーになっており、ここから下に飛び降りるのは一般人には無理そうだ。

 ならば‥‥。


「上ね!」


 すぐ側に備え付けられてたハシゴを登り切るが、そこには満持の姿は見えない。


「いったいどこに‥‥」


 注意深く辺りを見渡すが暗くてよく見えない。

だが、前方からギギギという感じの何かが軋むような音が微かに聴こえてきた。


 そこでカズヨは、足音をたてずにゆっくりと軋み音がする方へ近付く。


(確かこの辺りの筈‥‥)


 そう思い立ち止まるカズヨに光が差し込んでくる。

嫌な予感を感じとったカズヨはすぐに飛び退くと、先程立っていた場所は泥々に溶かされた跡が残っていた。


 何らかの魔法なのだと思ったが、それよりもその魔法を放ってきた方に注意を向けた方がよさそうだ。


「トーチ」


 辺りを明るく照らす魔法であるトーチで、魔法が放たれた方を照らす。

するとそこには‥‥。






「フン、中々いい勘してるじゃない」


 全長5メートル程の巨大なメカのようなものが映し出された。

そのメカから満持紀子の声が聴こえる。


「紀子? ‥‥何なのこれは!?」


「ああコレ? 裏オークションで購入した古代兵器よ、凄いでしょう?」


 古代兵器。

かつてこの世界に侵略してきた異世界の者達が居り、彼等が残した遺物だと言われている。

 しかし、その殆どは壊れていたり、使用方法が分からなかったりで使い物になるのは極一部の兵器に限られた。


「魔導国家ガルドーラで発掘されてから流れてきたんですって。まぁそんな事は私らには関係ない事よね。特に‥‥」


 再び光が集まりだし、カズヨ目掛けて放たれる。


「これから死に行くアンタにはね!」


 先程よりも集まった光の量が多いと思ったカズヨは、思いっきり横へと飛んだ。

 すると予想通り、先程よりも広範囲で建物を溶かしていた。


「く、ちょこまかとウザったい! いい加減くたばりなさいよ!」


 古代兵器を攻略する糸口が掴めず、ただひたすら回避に専念するカズヨ。

するとそこへ‥‥。






 ズドォォォン!


「う‥‥くっ!」


 先程下で起こった爆音が鳴り響き、カズヨはバランスを崩してしまう。

しかし、満持の乗り込んだ古代兵器には大した影響はないらしく、すぐさまカズヨに攻撃を仕掛けてくる。


「くらいなさい!」


 建物を溶かす熱線を辛うじて避けるカズヨだったが、そこへ古代兵器が突っ込みカズヨを殴り飛ばした。


「ぐふぅっっっ!」


 巨大な古代兵器の攻撃をまともに受けたカズヨは、10メートル近くも飛ばされてしまう。

しかも殴られた際に左腕は折れ曲がり、左足も完全に骨折していた。

そのためまともに起き上がる事は出来ない。


「アッハハハハ! ざまぁないわね!」


 そんなカズヨの様子を見て勝利を確信した満持は、ゆっくりとカズヨに近付く。


「結局最後に勝つのは私。アンタは私の踏み台でしかないのよ!」


 もう後がない。

しかし、今の自分ではどうにも出来ないと悟り、カズヨはせめて満持の心情を知る為に疑問をぶつけた。


「1つだけ‥‥教えてほしい。なんで私達を裏切ったの?」


「は? 人生最後の質問がそれ? ま、知りたいなら教えてあげるわ。私はね、勝者に成りたいの」


「勝‥者?」


「そ、勝者。私が他人の上に立ち、私が国のトップになる。つまり、私の意思1つで国が動くのよ。そうしたらまずは軍備を整えて、私を無断で呼び出したプラーガ帝国を潰してやるのよ!」


「そんな‥事の‥為に‥‥」


「私にとっては重要な事なの。でもそのためにはアンタ達は邪魔だったからね。勝者は1人でいいの。そして勝者は私。分かった?」






「分かん‥ないわ‥‥」


 何とか右足だけで立ち上がったカズヨだが、そこから動くのは難しそうだ。


「そう‥‥ま、分かんなくてもいいわ、アンタが理解しようがしまいが今更どうでもいい事だし」


 そしてとうとうカズヨを見下ろせる位置までやって来た満持は、古代兵器の腕を振り上げた。


「精々あの2人とあの世で仲良くするといいわ、それじゃさよ「カズヨ! 伏せろ!」


 古代兵器が腕を振り下ろす直前、後ろから仲間の1人であるデールの声が聴こえてきた。

その声を信じ、前に倒れ込む形で伏せると、満持が乗った古代兵器に何かが直撃し、後方へ吹き飛ぶのと同時に炎上しだした。


「デール?」


 慌てて後ろを見ると、デールと他の構成員達も皆揃っていた。


「何とか間に合ったか‥‥」


 相変わらず渋い表情のボルチェだが、安堵してるのは伝わってきた。


「カズヨ、怪我してる、ちょっと待ってて」


 ヤミーがカズヨに駆け寄り、回復魔法ヒールで癒す。


「ありがとうヤミー」


「うん‥‥」


 全快はしないが普通に歩ける程度には落ち着いた。


「今回はマジでヤバかったね~。ボス(アイリ)から貰った新兵器が無かったと思うとゾッとするよ~」


 相変わらず台詞とは裏腹に緊張感の欠片も感じないデールだが、デールの使用したアイテムは、アイリが召喚したドイツ製のパンツァーファウスト(対戦車ロケット弾投射兵器)であった。

しかも普通のパンツァーファウストとは違い、使用者に負荷がかからずターゲットのみに影響を及ぼすようにエンチャントされた、アイリによる特別製だ。


「でもよぉ、ノアーミーの奴がモテ期が来たとかで喜んでなきゃよ、もっと早く来れたんだぜ?」


「うっさい!」


「イッッッテェ!」


 余計な事を口走ったガオランが、ノアーミーに脛を蹴られた。

そんな光景を見て少しだけ和むが、すぐに満持の事を思い出した。


「そうだ! 紀子は!?」


 すぐ近くには足だけが残された古代兵器が有るが、古代兵器の上半分が見当たらない。

よく見渡したところ、更に前方に上半分と、外に投げ出された満持紀子が横たわっていた。

 全身が血だらけだが、一応生きてはいるようだ。


「紀子‥‥」


「か、和代。お願い助けて、私、まだ死にたくない‥‥」


 この期に及んで白々しい醜態をさらす満持。

更には、散々カズヨを殺そうとした人間とは思えない弱々しさを見せていた。


「ねぇ、お願い。私のポケットに丸薬が入ってるの。それをとって‥‥」


 尚も悲願する満持に近付くと、そっと左手を満持に差し出すカズヨ。


「ありがとう、カズヨ‥‥」


 その差し出された手を見て、満持の口が微妙につり上がる。

満持は、せめてカズヨを道連れにしてやろうと思い、右手の後ろでナイフを隠しているのだ。


 しかし、それに気付かずに左手を近付けたカズヨは‥‥。








 グサッ!




 痛々しく胸元に突き刺さる刃物。




「ガハァ!」


 それを見て、漸く自分が刺されたのだと気付いた。


「なん‥‥で‥」


 遅れて痛みがやってくる。

そしてその痛みに耐えながら叫ぶ。


「なんでさ、和代! ‥‥ガフッ」


 更に血を吐き出す満持を見下ろしカズヨが言葉を発する。


「貴女は私が昔から変わらないと言った」


「それが‥‥なんなのよ‥‥」


「変わらないのは貴女も同じ。貴女は嘘をつく時、左頬に手を添える癖がある。だから丸薬の話は嘘だと分かった」


「そんな‥‥事で‥‥バレるなんて‥‥ね」


 悔しさに身を震わそうとするが、力が入らず動かす事は出来ない。


「もう話は終わり‥‥さよなら」


「フン‥‥好きに‥‥なさいな。でも‥‥覚えておく事ね‥‥」


「何を?」


「私が死ねば‥‥アンタは‥‥本当に‥‥」






 独りぼっちよ!


 満持紀子が死ぬ間際に残した、最後の言葉だった。


アイリ「クライマックスっぽい雰囲気なのに、主人公が居ないのは何故なの?」

作者「名前だけは出したゼヨ」

アイリ「ふざけんなアホ!」

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