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誘われしダンジョンマスター設定資料  作者: 北のシロクマ
アレクシス王国の暗部 if
66/84

急展開 if

 レミエマとの通信を終え、改めて情報を纏めてみた。

 まず、第三王子ヨゼモナールは次期国王の可能性が一番高かった。

 なのでヨゼモナールの派閥はクーデターを起こす必要はないため、クーデターを画策するとすればその他3つの内の何れかの派閥という事になる。


 次に一番候補である第三王子ヨゼモナールが暗殺された。

 でもクーデターを画策した派閥と、ヨゼモナールを暗殺した派閥は同一かどうかは不明のまま。

 だからもしもクーデター画策とヨゼモナール暗殺が同一勢力だとしたらの話だけど、少なくとも、ロッツローニの派閥はクーデターを画策した可能性は低くなる。

 何故ならヨゼモナールを暗殺すれば、自然と次期国王の座が手に入るのだから。


 と、なれば、クーデターを画策してるのは、セーラさんの派閥かバーミレニラ王女の派閥のどちらかって事になる。


「のう(しゅ)よ。思ったのだが、セーラの派閥はセーラの安否が不明なのだから、動くに動けないのではないか?」


 あ、成る程! 仮にセーラさんが死んでた場合、クーデターや暗殺は全く意味を成さないもんね。

 って事は一番怪しいのは……


「バーミレニラ王女の派閥……ですねお姉様?」


「そうなるわね」


 一番候補のヨゼモナールが死んだ今、ロッツローニが一番候補という事になる。

 後はクーデターを起こして……う~ん。


「どうしたんですかお姉様?」


「どうにも何かが引っ掛かるのよねぇ。本当にバーミレニラ王女の派閥はクーデターを画策してると思う?」


「と言うと?」


 ヨゼモナールが死んでも派閥の貴族が居なくなる訳じゃないわ。

 それにセーラさんの派閥の貴族だって、動けないだけで居ない訳じゃないのよ。

 

「仮にバーミレニラ王女の派閥が反旗を翻したとして、ヨゼモナールとセーラさんの派閥はどちらに着くか分からない。いや、寧ろ敵対する可能性が高いと思うわ」


 プライドの高そうな貴族連中が、自分より下の候補の派閥につくなんて考えられないのよ。


「その場合、バーミレニラ王女の派閥は確実に敗北するわ」


「確かにそうですね。――あ、お姉様、レミエマ様からの伝言です」


「伝言?」


「はい、何度も通信を繋ぐのは申し訳ないのでと仰ってます」


 別に気にしなくてもいいのにね。


「内容は、ヨゼモナールが暗殺された事を拘束中のダルタネーロに話したら、大層取り乱しまして、我々の存在意義が無くなったと言って頭を抱えてるそうです」


 まぁそうよね。

 ダルタネーロはヨゼモナールの派閥だったからガックリ来てるんじゃないかしらね。


「それで気になる事を言ってるそうです」


 気になる事? いったいどんな事なんだろ?


「それもこれも()()()が悪い! ()()()のせいで私もヒルグリムド侯爵もおかしくなってしまった。()()()()の話を聞くんじゃなかった! と叫んでるそうです」


 あいつ? つまり、誰かに唆されてセーラさんを亡き者にしようとしたって事? でも結局のところ、野心が有ったから利用された訳だし

あんまり同情は出来ないわね。


「それで、()()()って誰の事なの?」


「はい、今もなお喚いてるそうなんですが、大変興味深い名前が出てきまして」


 今も喚いてるって、面倒臭い奴ね……。

 後先考えずに先走って後悔する典型よね。


「私のせいじゃない! 全部()()()()()()()とかいう女のせいだ! と」


 おおっと、またとんでもない名前が飛び出してきたわね。

 でもとても有力な情報だわ!


「アイカ、レミエマにお礼を言っといて。とても助かったってね」


「了解しました」


 さて、どうやら黒幕には満持紀子(みつもちのりこ)が含まれるみたいね。

 さっさと取っ捕まえてカズヨの前に転がしてやろう。

 でも居場所が分かんないのよねぇ……。


(しゅ)よ、少々急いだ方がよいのではないか?」


 いや急ぐのは分かってるんだけど、どうしたらいいかが分かんなくてね?


「だからちょっと作戦を練らないと……」


「そういう意味ではない。恐らくだが、ミツモチノリコは王族を皆殺しにする気ではないか?」


 え? 何でいきなり皆殺しなの!?


「妾の予想なのだが、動員した兵はクーデターのためだけではなく、王都を封鎖して王族が逃げられないようにするためでも有るのではないか?」


 そうか、確かに王都に王族を閉じ込めて、次々に始末していくのは効率がいいわ。


「恐らくミツモチノリコは、ロッツローニかバーミレニラのどちからの派閥にいるのだろう。国王を含む他の派閥の王族を皆殺しにし、最後にミツモチの派閥の王族を殺せば、乗っ取りが完了するってところではないかの?」


 そういう事ね。

 でもそれだと満持紀子はただの王族殺しの犯罪者でしかない。だから王族を殺しても、それが問題にならないように工作する必要がある。もしくは王族を殺す大義名分があるのか。


 それに満持紀子がどんな身分なのか知らないけど、少なくとも侯爵と面談出来る程度の身分、もしくはコネが有るって事よ。


「でもまずは王都に向かう必要があるわね。もうすぐ夜だけど、ヨム族の町から王都をめざしましょ」






 ヨム族の町に舞い戻った私達は、直ぐに王都のある方角――南のユーディクスの街を目指した――というか目指そうとしたんだけど、歩いて3日かかるのらしいので、時間の無い私は強行策に出る。

 アンジェラに人化を解いてもらい、人目に触れない上空まで上がってから王都を目指す事にしたのよ。時間が有れば、こんな手は使わなかったんだけどね。私としても、道中を楽しみたかったし。


「やっぱりアンジェラは速いわ。最初からこうしてれば後手後手にならずにすんだかもね」


 今更の話だけどね。


「でもお姉様、早く王都に着いてしまってたら、セーラさんが暗殺されてたかも知れませんよ?」


 確かに、その可能性も否定出来ないわ。そう考えたら少し救われるわね。


「夜も~、更けて~、きましたね~。子守唄の~、時間でしょうか~♪」


 ちょ、ちょっと! こんな上空で子守唄とか止めてよ!? 落っこちたら確実に死ぬわよ!?


「冗談ですよ~♪」


「心臓に悪いから、そういう冗談は止めて」


「はい~♪」


 あんまり分かってなさそうだけど大丈夫かしら……。


(しゅ)よ、もうすぐ王都に着くぞ」


 え? もう? これなら今度からの移動手段は全部アンジェラにしようかな。


「ズルいですよお姉様。いくら自転車に乗れないからって……」


 まーーた自転車の話を持ち出して! 私だって好きで乗れない訳じゃないのに!

 でも私もアイカの弱点を知ってるのよ。


「アイカ、留守中のミリー達にはお菓子を出し渋ってるのよね?」


 主にミリーに対してなんだけども。日頃からお菓子を横取りされてたから、その仕返ししてるみたい。


「……それが何か?」


「ミリーにはダンジョン外ではスイーツが食べれないと話しておきながら、移動中にバクバク食べてるじゃない? 帰ったらその事をミリーに――「お姉様の意見、大変素晴らしいと思います! まさに目からウツボです!」


 本っ当~に変わり身が早いわ!

 それから目からウツボじゃなくて、目からウロコよ。痛そうだから止めてちょうだい。


「む? (しゅ)よ、王都から少し離れた所で、馬車が騎士のような連中に追われておるぞ?」


 騎士団? まさか盗賊って事はないだろうから、どこかの派閥と派閥が闘ってるのかもしれないわね。


「馬車は王都から離れていってるようだのぅ」


 ん? 王都から離れていってるって事は、王都から逃げて来たって事じゃない?

 よし、情報収集のため馬車を救出しよう。


「アンジェラ、追っ手を蹴散らして!」


「無茶を言うでない。そんな事をすれば、逃げてる馬車まで巻き込んでしまうぞぃ」


 むぅ……人化してないアンジェラだと、火力がデカ過ぎるから無理か……。


「お姉様、ここはわたくしにお任せ下さい。ちょっと試したい事もありますので」


 そう言ってアイカが取り出したのは、毎度お馴染みの超高性能ドローンだった。

 でもこのドローンなら正確に敵を狙撃出来そうね。






 アイカが操作するドローンが向かった先では、30人近くの騎士隊に追いかけられている馬車が暗闇の中をひた走る。

 そして馬車の中では2人の女性が寄り添っていた。


「トリー……」


「大丈夫です姫様。私が側に居ます。だから安心して下さい」


 その内の1人はアレクシス王国の第三王女バーミレニラである。

 バーミレニラは、第三王子のヨゼモナールが暗殺される直前に命の危機を感じ、従者と供に城を脱け出した。

 上手く王都から離れる事が出来れば、何処かに潜伏する事も可能だったのだが、王都から出た直後に敵対派閥にバレてしまい、夜間の逃走を余儀無くされたのだ。そしてその逃走劇も終演を迎えようとしていた。

 騎士隊の放った火矢が馬のすぐ側に突き刺さった結果、馬は驚いてしまい御者の男は馬から投げ出されてしまう。


「ひ、姫様、私に構わずお逃げ下さい!」 


 御者の男は必死に叫ぶが、急停止した馬車の中ではバーミレニラはすっかり腰を抜かしてしまっており、メイドのトリーに手を引かれて何とか立ち上がったところだった。


「さあ姫様、急ぎましょう!」


「す、すみません!」


 だが、起き上がって馬車を出たところで、絶望を目にする事となった。周囲は既に騎士隊によって囲まれていたのだ。


「くっ、これまでですか……」


 もう助からないと悟ったトリーは、最後の抵抗とばかりにバーミレニラを馬車に押し戻した。


「ふん、鬼ごっこは終わりだ。最後に別れの挨拶をするくらいなら待ってもいいぞ?」


 騎士の1人が余裕の笑みを浮かべつつ告げた。


「あなた達、いったい誰がこんな命令を下したっていうの!?」


「貴様が知る必要はない。……だが、冥土の土産くらいならくれてやる。ボーアロッカ公爵様だよ。現王族を排除し、新しい王国の歴史が始まるのさ!」


 先程余裕を見せた騎士が嬉しそうに語る。


「ボーアロッカめ……」


 悔しそうに地面を叩きつけるトリー。そして力なくその場にへたりこんでしまった。


「ト、トリー……」


 その様子を馬車から見てたバーミレニラは、中から出てきて再びトリーに寄り添った。


「申し訳ありません、姫様……」


 そしてトリーは涙を流しながら守りきれなかった事を詫びた。


「さてそろそろ別れの時間だ。せめて2人一緒――なんだ?」


 せめて2人一緒に……と言おうとしたであろう騎士は、周りの様子がおかしい事に気付いた。

 そこへさらに別の騎士が叫ぶ。


「ま、魔物だ! 魔物の群に囲まれてるぞ!」


 騎士の1人が叫ぶと他の騎士達も気付き、魔物の方に向き直る。


「な、なんでこんなところにウルフの群がいやがる!?」


「少なくとも30匹はいるぞ!」


 数の多さに慌てて戦闘体制をとりはじめ、バーミレニラ達は完全に置いてきぼりにされた形になった。


「コイツらは後回しだ。先に魔物を片付けろ!」


 そんな騎士達に、何処からともなく声が聴こえてきた。


『アーアー、テステス……コホン。そこに居る皆さん、武器を捨ててその場に伏せなさい。さもなくばウルフ達の餌になります!』


 ドローンを通してアイカの声が夜空に響き渡った。


「な、何だこの声は? いったいどこから喋ってるんだ!?」

「ど、どこにも見えないぞ!?」


 あちこちに松明を向けるが、声の主(アイカ)は見つからない。

 それもそのはず、アイカは遥か上空でアンジェラの背中に乗っているので、例え昼間でも見つからないだろう。


『繰り返します。武器を捨ててその場に伏せなさい。さもなくばウルフ達の餌になります!』


「くそ! 暗くてよく見えん!」

「どこに居る! 姿を現せ!」


 だが騎士達は臆する事がなかったので、アイカはウルフ達に命令した。


『投降の意志はないとみなします――やりなさい!』


 アイカの命令と同時にウルフ達が一斉に襲いかかった。


「ちぃ、てぇあ!」


 何とか馬上で裁いてた1人が1匹のグレーウルフを切り殺したが、その隙に別のグレーウルフに腕を噛みつかれた。


「ぐあっ! ちきしょう、腕がぁ!」


「ち、このやろう!」


 それを見て別の騎士が駆け寄り斬りかかろうとするが、グレーウルフは咄嗟に腕を放して回避した。


「くそ、外したか――ぎゃあ!」


「ぐあぁ! ぐ、ぐぞがぁ!」


 グレーウルフが回避したところにファイヤーボールが撃ち込まれ、たちまち2人は火だるまとなった。

 そのファイヤーボールを撃ち込んだのはレッドウルフ。騎士達を取り囲んでたのはグレーウルフだけではなかったのだ。


 そんな騎士達とウルフ達の戦闘を、王女達は怯えながら見ていた。


「い、いったい何が……」


「……分かりません。魔物達が嗅ぎ付けたようですが。しかし数が多いので逃げ出す事はとても……」


 ウルフ達は馬車に乗っていた王女達2人を救出するためにアイカが召喚したのだが、そんな事情など知る由もないため、2人はその場に留まっていた。


 この2人を他所に別ところでも最初は優位に立って闘っていた騎士達が、ホワイトウルフが現れてからは劣勢になり、1人、また1人と倒れていく。


「バ、バカな! 何故このようなところにDランクの魔物がいるのだ!?」

「それに1匹2匹じゃねぇ、10匹以上は居やがるぞ!」

「こ、こんな魔物が出るなんて聞いてないぞ! いったいどうな――ギャァァァァ!」

「おい!? くそ!」


 更にまた1人、ファイヤーボールが命中し、落馬して転げ回った。


 騎士達の数が半数以上が火だるまか氷像と成り果てた時、再びアイカの声が響いた。


『さて、もう一度聞きます。武器を捨ててその場に伏せなさい。さもなくば今度こそ命は無いと思いなさい!』


 既に何名かは命を落としてるので今度が無い者も居るが、少なくとも騎士達の戦意を喪失させるには充分のインパクトがあったため、残った騎士達は武器を手放しその場に伏せた。


 一連の流れを見てた王女達も訳が分からずな状態だったが、さすがに魔物に囲まれたこの状況で逃げ出す事も出来なかったので、騎士達と同じようにその場に伏せた。


 そんな彼等へ近付いてくる者がいた。

 まるで伏せてる者達を1人1人吟味してるかのように、ザクッ、ザクッ、という重い足音が暗闇に響く。

 やがて足音が止まった事に彼等は気付き、恐る恐る顔を上げた。

 するとそこには……


「さて、知ってる事を全て話してもらうわよ。断ったらどうなるか……分かるわね?」


 月明かりに照された1人の少女が見下ろしていた。

 そして周囲のウルフ達が、少女を守るようにずらりと整列する。

 その少女こそダンジョンマスター、アイリであった。




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