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誘われしダンジョンマスター設定資料  作者: 北のシロクマ
アレクシス王国の暗部 if
65/84

部族長 if

 孫がもうすぐ帰ってくるとオビルさんが言うのでそのまま雑談してると、外から【ズズッズズッ】という何かを引きずる音が聴こえて来た。

 

「孫のエマルガが帰って来たようです。多分、鹿か猪を狩ってきたのでしょうな」


 どうやら引きずってるのは獲物のようだ。

 その獲物を見たのか、ラナちゃんのはしゃぐ声も聴こえる。

 引きずる音は、ここオビルさんの家の前で止まり、扉が勢いよく開いた。


「ただいま爺ちゃん!」


名前:エマルガ 性別:男 

種族:人間   職種:狩人

年齢:15歳       


 瞬時に鑑定した結果、私より二つ歳上という事が判明。

そして職種が狩人って事は、かなり前から狩をこなしてるって事みたいよ。


「帰って来たか。して獲物は――鹿だな」


「おう、楽勝だったぜ! それで、この人達は?」


 やや好奇心の有りそうな視線を向けてきたので、面と向かって自己紹介をした。


「私は冒険者のアイリよ」

「パーティメンバーのアンジェラじゃ」

「同じくパーティメンバーのセレンです」

「もう会ったと思うけど、外に居るのがパーティメンバーのアイカね」


「おう冒険者か来るとか珍しいな!俺はエマルガって言うんだ、宜しくな!」


 活発そうな少年という印象を受けるわね。

地球だとスポーツの得意そうな――そう、サッカーとか似合いそうな感じよ。


「エマルガよ、すまんが一休みしたら部族長が居る町にアイリさん達を案内しておくれ」


「おお、分かったぜ! それより爺ちゃん、はやく昼飯にしようぜ」


 エマルガがオビルさんに、獲物の鹿を差し出した。

 もしかして、取れたての奴を調理しちゃおうって事なんだろうか?


「なぁ、アイリ達も食うだろ?爺ちゃんアイリ達の分も頼むな!」


「分かっておるよ、少しまっておれ」


 流れで一緒に食べる事になっちゃったわ。

 このエマルガって少年は結構押しが強いというかそんな感じよ。






「どうだ? 美味(うま)かっただろ?肉はやっぱ新鮮なうちに食うのがいいんだよな」


美味(おい)しかったね、お姉ちゃん!」


「そうですね、あのヘルシーな感じは中々味わえないかもしれません」


 一緒に遊んでたせいか、ラナちゃんはすっかりアイカになついてしまったようだ。

 そんなラナちゃんは、今はアイカの自転車の後ろに乗っている……と。


「凄く速いねお姉ちゃん! お兄ちゃんのサラマンダより速い!」


 サラマンダというのは、エマルガが乗ってる愛馬の事だ。何気に妹から言われた言葉にエマルガはムッとして……なかったわ。

 普通こういう時って、ムキになって対抗意識を燃やしたりするもんだと思ったんだけども、寧ろ微笑ましい顔でアイカとラナちゃんを見てた。


「落ちると危ないですからね、しっかりと掴まってて下さい」


「うん!」


 ではでは、何故にラナちゃんまで一緒に付いてきたのかという事を説明しましょうかね。

 説明と言っても理由は簡単、ついうっかり人前で自転車を召喚してしまったのよ、このおバカ(アイカ)は。

 最悪、人に自転車を見られるのはまだいい、ダンジョンで見つけたレアアイテムだと言えば何とでもなる。

 でも他人の前で召喚は不味いわ。とっさにアイテムボックスから出したと誤魔化したけどね。

 そんでもって、見たこと無い自転車というアーティファクトにラナちゃんの瞳がキラキラと……ね?

 そんな流れでラナちゃんまで一緒に来る事になってしまったのよ。


「なぁ、アイリは(けつ)が痛くなってないか?」


「大丈夫よ、このくらいなら平気」


 ちなみに私はエマルガと一緒にサラマンダに乗ってる。

 更にアンジェラはセレンをおぶって後ろから走って来てるんだけど、余程自転車が珍しいのか、エマルガはアイカ達の方をチラチラと気にしてる様子で、後ろのアンジェラ達は見向きもしない。

 ぶっちゃけ、アンジェラのスピードの方が余程珍しい光景だと思うんだけど……。


 1時間くらい走り続けて4つ目の集落を通り過ぎ、いよいよ視界にヨム族の部族長が居る町が見えてきた時、エマルガから衝撃の告白をされてしまった。


「アイリ、俺は将来アイカを嫁さんにしたいと考えてる。アイカに婚約者はいるか?」


 ええっ!? これは……どうしよう……。

 いきなり無理ですじゃ納得しないかも知れないし、ダンジョンコアをカミングアウトする事も出来ない。

 うーーーん、困った……。

 時折アイカ達をみてるエマルガの横顔は真剣そのものだし、茶化してる感じではないわね。肝心のアイカはエマルガの心情なんか知らずにラナちゃんと楽しそうに話してるわ。


「婚約者がいるかは分かんないわね。でもどちらにしろ、了承するかどうかはアイカ次第よ?」


 一応無難な返答をしてみた。


「ああ、分かってる」


 よし、アイカの事はアイカに任せよう。

言い換えれば丸投げとも言うけども。

 でも一応アイカには念話で伝えておこう。

町に着いたら婚約を申し込むつもりかもしれないし。


 そして私達は無事ヨム族の町についた。

 ちなみにだけど、町の名前は無いらしいのでヨム族の町と内外から呼ばれているらしい。


「よし、着いたぞ。ヨム族の町にようこそ! ってな!」


 エマルガは愛馬を近くの繋ぎ場に止めて、町に入っていく。

 私もアイカの自転車をアイテムボックスに収納してエマルガに続いた。


 中に入ると、確かに町と言われるだけはあり大勢の人達がそこらじゅうで露店を展開していた。

 客として訪れるのは、同じヨム族以外にもアレクシス王国からの商人も居るそうだ。そしてこれを見て言えるのは、ヨム族の侵略の話は全くのデマであるって事。

 何故ならさっきから適当に鑑定してるけど、ボチボチとアレクシス王国の商人を見かけるのよ。情勢に敏感な商人が、討伐軍が進軍して来るであろう場所に来たりはしない筈だから。

 そんな商人とヨム族の売買を眺めながら歩いてると、どうやら部族長の家に着いたらしい。


「失礼します、オビルの孫のエマルガです!」


「ふむ? オビルのとこの孫か。して何用じゃ?」


「冒険者の方々が話をしたいとの事で、こちらに案内しました!」


「ほう、儂と話たいとな? そんな事のために態々来るとは少々変わっとるのう」


 どうやら部族長と話したがる人は極少数らしいわね。


「まぁよい、ここへ通しなさい」


「はい!」


 中に通された私達は軽く自己紹介し、コルノ村やロコ村で聞いた噂をエドンノ部族長に話した。


「何と! そのような噂が……」


「はい、どうやら一部の貴族がそういった理由で食糧をかき集めてるようです」


 私の話を聞いたエドンノさんは、暫し考えた後に話し出した。


「実はな、最近アレクシス王国の王都周辺では物価が高騰しとるらしくてな、商人が多く訪れるようになったのだよ」


 という事は、今外にいる商人達は普段ならここには来ないって事なんだろうか?

 いや、それよりも物価の高騰って事は……


「何となく察したようだの。間違いなく戦の前触れという事だな」


 という事は、アレクシス王国が一方的にヨム族の領地に侵攻しようとしてる!? でもそれだと商人達は危険をおかして仕入れに来てるって事に。

 うーーーん、分かんないなぁ、頭がパンクしそう……。


「何やら思い詰めてるようだが、アレクシス王国はこちらに侵攻して来ないと思うぞ?」


「え? 何で分かるんです?」


「今アレクシス王国は後継者を誰にするかで揉めておるそうだ。国王は健在だが高齢だからな、今のうちにという事らしいが、そんな時に外部と争いを起こすのは愚かであろう?」


 ……言われてみればそうかも。


「それにアレクシス王国にとってこの地は不要とも言えるからの。自分達で統治するより、儂等に任せた方が良いと考えたから和解出来たのだと思うぞ」


 成る程ね。

 でもそうなると、いったいアレクシス王国はどこと――あ!


「どうやら気付いたようだの」


 後継者争い、王都周辺の物価高騰、食糧の徴収、つまりこれって……。


「クーデター……」


「……恐らくは……な。ここに来てる商人もキナ臭さを感じて逃げて来た者も()るのではないかの」


 だとしたらいったいどの派閥が動いてるのか確認しないといけないわね。

 場合によってはセーラさん達を帰すのが遅れるかもしれない。


「エドンノさん、今一番後継者に近い派閥はどこだと思います?」


「うーーむ、なんとも言えんが、第三王子のヨゼモナール王子ではないかの」


 ヨゼモナール王子が第一候補か。

 という事は、ヨゼモナール王子の派閥以外のどこかがクーデターを企んでるって事?


 マズイわね、もしクーデターにセーラさんの派閥が絡んでるもしたら、最終的にレミエマや私に飛び火しかねないわ。

 でもまずは、どの派閥が画策してるかを正確に見抜く必要がある。

 それに、出来れば王都の情報が欲しいわ。


「アイカ、アンジェラとセレンを連れて、商人達から情報収集しといて」


「畏まりました」


 商人からの情報収集はアイカ達に任せて、私は派閥の情報を集めないと。


「エドンノさん、あの国の派閥ってどのくらい有るか知ってますか?」


「うむ、儂の知る限りだと全部で4つだが、絶対とも言えんぞ?」


 そうよね、ヨム族にとっては関係ない事だもんね。

 それにヨム族を捲き込むのも避けないとね。


「有難うエドンノさん! 後、関係ないのに色々聞いてしまってごめんなさい」


「なーに、気にせんでいいぞ。私も久々に若い冒険者達と話せて満足してるからの」


 親切な部族長で助かったわ。

 しっかり者で頼れる祖父って感じね。


「今度来た時は、あのアンジェラという娘ともっと話したいのう!」


 ……訂正、ただのエロ(じじい)だった。






 それからアイカ達と情報収集をした結果、分かった事は以下の通りよ。


①派閥は4つに割れており、一番優位に立ってるのが、ヨゼモナール第三王子。

次に、ロッツローニ第一王子。

そして、セレスティーラ第二王女。

最後に、バーミレニラ第三王女。


②第一王子のロッツローニは、体が弱く自力で歩くのも困難なため、トップに君臨するには不向きと思われている。


③第一王女のネイルネフィーは、既に嫁いでるため、候補から除外されている。


④第二王子のカルドードスは、何年も前に事故で他界してるため候補にはいない。


⑤ラムシートのラドリゲス男爵は、セーラさんの派閥らしい。


⑥王都周辺は既に封鎖されつつあり、出入りが制限されていて、いつクーデターが起こってもおかしくない。


 ⑤に関してはセーラさんから直接聞いた情報だから、多分大丈夫だと思う。

 ラドリゲス男爵がもっと上位の貴族だったらセーラさん達を預けてもよかったんだけどね。

 下級貴族だと上位貴族が相手の場合、逆らえないケースが多いからね。


「それにしても、良く短時間で情報を集められたわね」


 時間にして1時間くらいよ。


「はい、何故かエマルガが積極的に協力してくれましたので、だいぶ捗りましたよ」


 なんかエマルガを利用してしまったみたいで申し訳ないけどもね。

 ちなみにエマルガとラナちゃんは集落に帰って行った。でもアイカは、エマルガから何も言われなかったんだろうか?


「エマルガからは何も言われてませんよ?ただ、エマルガが成人を迎える前に、また来てほしいと言われましたが」


 ふーん、あんまりガツガツしない正確なのかもね。所謂(いわゆる)草食系ってやつ? いや、それなりにアプローチをしてるから草食系とは違うのかも知れない。


 兎に角、アイカとエマルガがまた会えるかどうかは私にも分からないわね。

 そりゃ来ようと思えば来れるけど、でもアイカの秘密をカミングアウトするつもりはないし、やっぱり会わせない方向で考えた方が良いかもね。


「あ、お姉様、レミエマ様から通信が来てますよ。何でも緊急だそうです」


 緊急? まさかもうクーデターが発生したっていうの!? って、落ち着け私! まだ決まった訳じゃないんだから、冷静に冷静に。


「分かったわ。人気(ひとけ)の無いところに移動して1度ダンジョンに戻りましょう」






 急いでダンジョンに戻って来たけど、やっぱりここが落ち着くわね。


「お姉様、寛いでる場合じゃありませんよ。レミエマ様からの通信です」


 おっと忘れてた。

 さっきは慌ててたけど、逆に落ち着き過ぎても緊張感が無くてダメね。


アレクシス王国:天前愛漓(あまさきあいり)

『お待たせレミエマ。遅くなってごめんね?』


アレクシス王国:レミエマ

『いえ大丈夫です。あ、いや、あまり大丈夫じゃないかも知れません!』


 ヤゴレーに襲われた後でも落ち着いてたレミエマが慌ててるなんて、余程の事ね。


アレクシス王国:レミエマ

『実はつい先程、あそこで……えーと、アレクシス王国の集いで聞いた話なんです!』


アレクシス王国:天前愛漓

『落ち着いてレミエマ。いったい何があったの?』


アレクシス王国:レミエマ

『はい、ではアイリさん、落ち着いて聞いて下さい。本日未明、ヨゼモナール第三王子が、何者かに暗殺されました』


 どうやら想像以上に最悪の事態になってしまったみたいだわ……。


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