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誘われしダンジョンマスター設定資料  作者: 北のシロクマ
アレクシス王国の暗部 if
52/84

逃走中 if

ブクマと評価ありがとう御座います。

これからも宜しくお願いしますm(_"_)m


 アレクシス王国国内リムシールの街


「よし、次!」


 早く……。


「うむ、後ろの積み荷も見せてもらうぞ」


 早く……。


「積み荷も問題なしだな。これからラムシートの街か?」

「ええ。最近需要が増えたみたいでして」


 早く早く……。


「そういや本来の冒険者ギルドが戻って来たって言ってたな」

「はい。その影響もあるみたいですよ」


 お願いだ、早く……。


「そうか、まぁ頑張んな。次!」


 よし、後少し……。


「……身分証は問題ないな、手荷物は……」


 頼む、早く終わってくれ!


「……よし、問題ないな。しかし女2人だけで不用心ではないか?」


 この急いでる時に……。


「いや、心配は無用だ。腕には自信がある。それより先を急いでるんだが……」


「おお、すまんすまん、通っていいぞ、次!」


 よし、終わった!

後はラムシートの街に向かいながらだな……。


「急ぎましょう、セー「いたぞ! あそこだっ!」


 くそっ、追い付かれたか!


「走りますよ、セーラ様!」


「は、はい!」


「門番! その2人を捕らえろ!」


 だが2人の女達は既に門から走り出しており、門番ではどうしようもなかった。


「ええい、くそ! お前達、早く追うのだ!」


 隊長らしき男は部下を怒鳴り散らした。

そして髪をかき上げながら呟く。


「このまま逃がす訳にはいかん。ヨゼモナール様の座を安泰にするには……」


 そしてこの男も部下達を追って走り出した。






 追っ手から逃れた2人は街道から外れた森の中にいた。

 今はまだ日は高く、天気も良く周りが良く見えるので、魔物の脅威は少ない。

それに加え、この辺りは少し前までダンジョンが存在した場所であり、冒険者がレアアイテム狙いでよく出入りしてたため、元々少なかった付近の魔物は狩りつくされ激減していた。

 この事実は今の2人にとっては不幸中の幸いだろう。


「大丈夫ですかセーラ様?」


「はい、大丈夫です。有難うケティ」


 この2人は姫と従者という関係で、訳あって追われる身となってしまった。

 その訳とは、セーラ――正式にはセレスティーラ王女は王族であり王位継承権を持っているためで、次期国王の座を巡り派閥の対立が激化しているためである。

 つまり、セーラの存在が目障りな者達から狙われている真っ最中なのだ。


「申し訳ありませんセーラ様。このまま街道に出るのは危険なため、今すぐラムシートに向かう事は出来ません。暫しここらで潜伏しましょう」


「分かりました。――ですがこんな森の中で大丈夫でしょうか……」


 セーラの不安は最もだった。

普段城内で暮らしていたセーラにとっては城の外は未知の領域で、さらに街の外ともなれば不安にならない方がおかしいというものだ。

 そんな不安を抱くセーラの手を握り、不安を取り除こうとする従者のケティ。


「大丈夫です。この辺りの魔物は殆ど討伐されています。それに私はセーラ様の側を片時も離れませんのでご安心下さい」


「はい。宜しくお願いします!」


 セーラは礼を言うと、ケティの手を強く握り返した。

 ひとまずセーラの不安は収まったようだ。


「この辺りには、以前ダンジョンがあったのですが、何者かが攻略してしまい、今は廃墟のようになってるらしいのです。ひとまずそこに隠れて、やり過ごそうと思います」


「廃墟……ですか?」


「はい。1週間程前にダンジョンが攻略されてる事が発覚し、それより1週間から20日以上前に攻略されたのではと推測されました」


「でもアレは廃墟には見えませんよ?」


「……え?」


 セーラの指す方向を見ると、存在しないはずのダンジョンが出来上がっていたのである。


「そ、そんなはずは……。だが確かにいつの間にか攻略されたという報告が……」


 ある日いつものようにダンジョンを訪れた冒険者パーティからの報告によると、入口が崩壊しており、中には魔物も宝箱もなく、終いには罠すらない状態だったというのだ。

 そして案の定ダンジョンコアは見つからず、このダンジョンは攻略されたとみなされた。


 その後も冒険者パーティが虚像の報告をしてないか特殊スキルで調べたが嘘はついておらず、ダンジョンはどこかの冒険者か闇ギルドが攻略したという結論にいたった。

 

「だとすると、また新しく誕生したダンジョンという事に。しかしそのような偶然があるのだろ――危ない!」


 ドスッ!


 遠くからセーラ目掛けて矢が飛んできたが、当たったのは近くの木だったため、事なきを得た。


「おーい、こっちに居たぞ!」


 もう見つかったか! ならば迷ってる隙はない!


「セーラ様、ダンジョンに入りましょう!」


「わ、分かりました!」


 飛んできた矢に驚いてへたり込んでいたセーラを助け起こし、そのままダンジョンへと駆け込んだ。


「くそ、逃げられたか……」


 弓を手にした兵士が地団駄を踏む。

ここで仕留めれば価千金の大手柄だったのだが、手柄を焦るあまり狙いが甘くなったようだ。


「お前が早まるからだろ。もう少し近付いてからでもよかったろうに」


「まぁ落ち着け。女2人で遠くには逃げられねぇよ、きっと近くに――ん? あれは……」


「おい、どうした――ってダンジョンかよ。ここに逃げ込んだ可能性が高いな」


 2人を追って来た兵士達もダンジョンを発見し、注意深く入口まで接近する。


「でもおかしいぞ。確かここにあったダンジョンは、誰かが攻略したって報告が上がってたはずだ」


 兵士の1人がダンジョンの入口をペタペタと触りながら疑問を口にする。

 中の様子もサラッと(うかが)うが、やはりダンジョンで間違いない。


「じゃあ新しく出来たって事か?」


「かもしれんな。何れにせよ一度隊長に報告しようぜ」


「ああ、そうだな」


 2人は一度ダンジョンに振り返ると、周囲の背景を頭に焼き付けつつ目印を付けながら帰還するのであった。






「結局同じ場所に作ったのね」


 今、アイリは新しく作り直されたレミエマのダンジョンに来ていた。

 以前ヤゴレーに襲われダンジョンを放棄したレミエマは、同じ場所で再びダンジョンマスターをやる事にしたのだ。


「はい。やはり馴染んだ場所の方が運営しやすいかと思って」


 それは分かる気がするわね。

全く知らない場所で始めるよりも、以前から知ってる場合で始めた方がやり易いに決まってるだろうし。


「レミエマ様、そろそろお昼時ですし、こちらをどうぞ。引っ越し蕎麦になります」


「引っ越し蕎麦? それは食べた事がありませんね」


 実はこのイグリーシアにも蕎麦は存在する。

しかし一般的な食べ物として広まってはいないため、マイナーな食べ物である。

 どうやらレミエマも知らないらしい。


「とても食べやすくて美味しいですよ。ギブソンもどうぞ」


「有り難く頂戴する」


 これから少しの間、4人の蕎麦を(すす)る音が会話しながら聴こえてくるのだが、耳障りなのでカットさせていただく。

 

「うん、美味しい! 今時季は冷たい蕎麦に限るわね。あ、ところで、以前はアレクシス王国との関係はどうだったの?」


「以前は中立でしたね。コアルームを目指して来た冒険者以外は、不干渉で自由にさせてました。アレクシス王国とは直接交渉する事はなかったですね」


 ふーん、そういうやり方もあるのね。

王国の方も一々ダンジョンに構ってられないって理由もあるのかも。


「なら以前みたいにまた冒険者が来るかもね」


「そうですね。基本的に侵入者が出たり入ったりを繰り返すだけでDPが稼げるので、適度に来ていただくのが理想です」


 今レミエマが言ったように、ダンジョンに入った者がダンジョンから出ていくと、撃退したとみなされてDPが入ってくるのよ。

 つまり、ダンジョンを適度に探索させてご帰宅いただければ互いにメリットがあるって訳。

  

「ですが大丈夫でしょうか。まだ2階層しか出来てないようですし」


 2階層だけだと、私達の感覚からするとかなり際どく感じられるけど……。


「大丈夫ですよ。いざとなればギブソンが居ますし」


「うむ。俺が居る限りレミエマには指一本触れさせん」


 そういえばギブソンが居たわね。

全然喋んないからすっかり忘れてたけど、ギブソンはCランクのウェアウルフだもんね。


「さてと、それじゃあ蕎麦も食べ終わった事だし、私達は帰るわね」


「「え、もう帰っちゃうんですか?」」


 そりゃ様子を見に来ただけだし、いつまでも居る訳にはいかないわよ。

 ていうかレミエマは兎も角、何でアイカまでハモってるのよ……。


「折角色々とボードゲームを持って来たのですが……」


「アンタは何しに来たのよ……」


 それじゃまるで友達の家に遊びに来たみたいじゃないの。


 …………。


 あれ? レミエマは友達だと言えるから間違ってないわね?

 ……ま、いいか。


「兎に角帰るわよアイカ」


「……残念ですが仕方ありません」


 どうせいつでも来れるんだから、露骨にガッカリするんじゃありません。


「そうですか。ではまた来て――「ビー!ビー!ビー!ビー!」


 っ! このアラームは?


「どうやら侵入者のようだ」


 ギブソンに言われて見てみると、そこには2人の女性がダンジョンに駆け込んで来たところが映されていた。


「冒険者には見えないわね」


「しかも1人は走り方がぎこちない感じがします。手を引かれてる様子から察するに、普段から走る事が少ないのではないでしょうか」


「しかも頻りに背後を気にしてるな。何者かに追われてるのだろうが……」


 さて、レミエマはどうするのかな?

私ならここぞとばかりに関与しに行くけど、ここはレミエマのダンジョンだから勝手な事は出来ないしね。


「暫く様子を見ましょう。少なくとも、このダンジョン内で好き勝手な真似はさせません」


 とりあえず様子見って事ね。

何だか気になってきたから、もう少しここに居ようかな。


「私も気になるから、もう少し居てもいい?」


「勿論です。どうせなら泊まっていってもいいんですよ?」


 ……さすがにそれは遠慮するわ。


「なら折角ですので()()で遊びましょう」


 ()()?よく分からないけど、アイカは何かを使って遊ぶらしい。

 って、結局遊びに来てるんじゃないの……。





「ケティ……少し休みませんか?」


「セーラ様、暫しご辛抱下さい。あまり入口に近いと、すぐに発見されてしまいます」


 アイリ達ダンジョンマスターに見られてるとは知らず、セーラとケティは奥へ奥へと進んでいた。


「ダンジョンには次の階層の手前にボス部屋があります。そしてボス部屋の前には、セーフティエリアと呼ばれる魔物が襲って来ない場所が存在するのです」


 ケティの目的は、ボス部屋の手前にあるセーフティエリアだった。

冒険者がボス戦の前に休憩するのに使用する場所である。

 もっとも、それは魔物から身を守れるのであって、他の冒険者や盗賊などが相手では意味を成さないが。


「む? あれはもしや……」


 そして走り続けて来た2人の前方に、大きな部屋が見えてきた。

 それは1階層のボス部屋であった。


「セーラ様、前方に有るのがボス部屋であるならば、手前の左側にある場所がセーフティエリアのはずです」


「よ、ようやく休めるんですね……」


 普段走る事が少ないセーラは、セーフティエリアに着くとその場に大の字になった。


「お疲れ様です、セーラ様。暫くは大丈夫だと思いますが、連中が簡単に諦めるとは思えません。何れここにも来るでしょう」


 ケティとセーラは知らない事だが、ここまで来る時にモンスターや罠が存在しなかったのは、ダンジョンマスターであるレミエマが2人の進行上にある防衛機能を一時的にOFFにしたからである。

 なので2人を追って来た兵士達は、しっかりとモンスターに遭遇し罠にも掛かっている真最中だ。


 何故レミエマが2人に加担するような真似をするかというと、2人が追手に捕まってしまえば間違いなく殺されるという会話を拾ったからである。

 つまり最悪な展開だと、セーラとケティを殺したのはここのダンジョンマスターであるレミエマという事にされかねないのだ。

 そういった訳で、陰ながら追手の妨害を行ってきたのだが、時間が経てば兵士達も奥に進んでしまうので、結局2人は見つかってしまうのであった。


「あ、ここに居やがったか! おーい、こっちだこっち!」


「く、やはり来たか! セーラ様、ボス部屋に突入します。絶対に私から離れないで下さい!」


「は、はい、分かりました!」


 セーラとケティはボス部屋へと入り込み、追って来た兵士達は、閉じられたボス部屋の扉の前に集まった。


「どうする? 出てくるのを待つか?」


「バカ言え、殺したら殺したで死体を持って来いって言われてるだろ」


「ならもう一度隊長に報告しに行くか?」


「それこそ無しだろ。そんな暇があるならさっさと捕まえて来いって怒鳴り散らされるぞ」


「そうだぜ。それにもし魔物に骨まで食われちまったら証拠を持って帰れねぇよ」


「じゃあ入るしかないな。中にはボスが居る可能性があるから慎重に開けるぞ?」


「分かった」


 一度は引き返そうかという意見も出たのだが、最終的には後を追う事に決まり、前に居た兵士が扉に手を掛けながら最終確認を行う。


「よし、俺らで開けるから、後ろから弓で構えといてくれ。ボスが見えたら即攻撃な」


「「「「了解!」」」」


 そしてボス部屋の扉がまさに運命の扉の如く、開かれようとしていた。


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