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新たな欠点

 アイリの召喚したレッドウルフとホワイトウルフは、群となって相手のダンジョン内を駆け回った。

内部には罠も有ったが、徒党を組んで強引に突破させ、物影から奇襲を受けても数と素早さで凌いだ。

 結果先頭を走ってたレッドウルフ2匹が犠牲になったが、すぐに1階層のボス部屋を発見する事に成功する。

だが今は、レッドウルフとホワイトウルフをすぐにボス部屋へ突入させる事はなく、そのまま待機させている状態だった。


「ちょっと強引過ぎたかもね」


 今回は強気にって感じで突入させたけど、戦略としてはダメね。

時間に制限が有った場合なら有効かも知れないけど、今は時間に余裕がある状態。

なら最初にランクの低いモンスターで偵察させて、罠の解除やルートの確保等をさせるべきだったわね。

 ランクの低い相手なら力押しでどうにかなるでしょうけど、高ランクのダンマスが相手だった場合は通用しない可能性が高い。


「お姉様、ウルフ達を待機させて何かなさるつもりですか?」


「ちょっと考え事をね。それよりギンを向かわせてちょうだい。シルバーウルフの実力を見たいから」


「了解です」


 ミリーは‥‥見なくても予想出来るわね。


 今も横で水羊羹を貪ってるミリーを、一瞬横目で見てから再び映像に視線を戻した。




『ロック様、現在敵ウルフ達に動きはありません。ボス部屋の前で待機中です』


 レッドウルフとホワイトウルフの群はボス部屋には入ろうとしない。

 ‥‥何かを待ってるのか?

 正直これ以上の何かが出てくるとは考えたくないのだが。

 だが恐らく居るのだろう。

このウルフ達Dランク以上のモンスターが。


「2階層に配置してる防衛モンスターを、ボス部屋まで待避させてくれ。それから魔物肉を1つ召喚し、()()()の真下に設置するんだ」


『了解です。魔物肉を召喚します』

-10DP→残DP3490


 魔物肉とは、肉食のモンスターが好む餌の事で、主にモンスターを誘い込むのに使用される事が多い。

鼻の良いモンスターならすぐに嗅ぎ付ける事だろう。


『ナレクアム、戦闘準備をしとけよ。敵がそこに着くまで、そう時間はかからないだろうからな』


『お、とうとうあたしの出番?まーかせて!ちゃちゃっと片付けちゃうからさ!』


 いつも思うが本当に緊張感を感じさせないな、ナレクアムは。

 だが、その方が逆に有り難い。

ぶっつけ本番に実力を発揮できる秘訣なのだろう。


『ロック様、ダンジョン入口から新たな侵入者が現れました』


 コアに言われて入口の映像を見る。

新たな狼型モンスターのようだ。

 すでにレッドウルフとホワイトウルフが送られて来てる中で、新たな狼種となると‥‥


「あれは‥‥シルバーウルフ!本命の登場‥‥という訳か」


 アイリとしては、別に本命を差し向けたつもりはなく、ただシルバーウルフの実力を測るつもりで送り込んだのだが、状況から相手のロックにはそう判断されてしまった。


『敵シルバーウルフ、真っ直ぐにボス部屋へ向かっています』


「‥‥‥‥‥」


 敵戦力はレッドウルフ8匹、ホワイトウルフ10匹、シルバーウルフ1匹。

 対するこちらはゴブリンが100近くとグリーンウルフ10匹、エアーバット10匹、グレーウルフ5匹、そしてシルバーウルフ1匹だ。

 数だけはこちらが多いが、ランクの差が大きく影響するため、群で一斉にかかってきたら一溜まりもない。

 こうなるともはや勝ちは絶望的。

ならせめて、Eランクの意地をみせてやるさ。




「じゃあ頼んだわよ、ギン」


「お任せください。無事任務を遂行致しますわ」


 時間は少し遡り、アイリがシルバーウルフのギンを送り出すところだ。

 既に先行したウルフ達によって、1階層のボス部屋の場所は判明してるので、最短距離で向かうだけである。

 そしてたった今、アイリの命令で相手側のダンジョンへ向かっていった。


「‥‥どう思うアイカ?」


「そうですね‥‥理性的であると思いまよ。ただ、割と気位が高く、クロは見下されてるのだとか」


「そうね、少~しだけど、高飛車な雰囲気が有ったわ」


 シルバーウルフのギンが眷族(けんぞく)として加わると、さっそくクロはギンにアピールを開始するもまったく相手にされず、今はふて寝をしてるらしい。

 ちなみにギンは、アイリ達の前では淑女っぽい雌のシルバーウルフという雰囲気である。


「それにし「ちょいお嬢ちゃん!頼むから返してーな!」‥な、何事!?」


 突然後ろで声がしたと思ったら、ボロ雑巾だったホークが復活したみたい。


「なぁなぁ頼むでぇ!その指輪はなぁ、命とお笑いの次に大事なモンなんや!」


 ホークにとっては人化の指輪よりお笑いの方が大事らしい。

そこまでのめり込む程のものを、お笑いから感じ取ったって一体‥‥。


「なぁお嬢ちゃん!聞いてぇな!」


「うるさい。いま大事なおやつタイム。邪魔をするのは万死に値する」


 ミリーはミリーでお菓子にはまってしまったようね。

今も美味しそう‥‥いや、眠そうな顔して、みたらし団子を頬張っている。

 食いしん坊なアイカみたいだから、アイカ2号って渾名にしよう。


「酷いで!めっちゃ酷いで!」


 ホークは諦めずに抗議してるけど、ミリーはまったく相手にしてないわね。

翼をバッサバッサやってるけど、動く度にお菓子の屑がこっちに飛んでくるから、止めていただきたい。


 そういえば思い出した。

確か私は人化の指輪はホークに返しなさいって言ったはずなんだけど、今だに実行せず‥‥というか返す気ないわね、あの様子だと。

 仕方ない、私からもう一度言おう。


「ねぇミリー。私はホークに返してあげなさいって言ったはずよ?」


「ですがマスター、この指輪は譲り受けた物ですので、今更返すのは常識はずれかと思われます」


「譲っとらんで!譲っとらんどすえ!」


 最初に常識はずれな事して奪った本人がそれを言うんかい!

大体やむを得ず預かったって言ってたでしょうに。

 それとホーク、前から思ってたけど、時々関西弁と関東弁が混ざってるわよ。


「ホークが譲ったなら兎も角、譲ってないなら返してあげないとダメよ」


「むぅ‥‥つまり、正式に譲って貰ったなら良いと言う事で宜しいでしょうか?」


 そりゃ正式に譲って貰ったならそうだけど、正式に譲って貰えなかったから奪ったんじゃないの‥‥。


「ねぇ、ミリーはこの人化の指輪を譲ってほしいの‥‥お願い、お兄ちゃん♪」


「「「‥‥‥‥‥」」」


 皆様、お聞きになられたでしょうか、今の年上の男心をくすぐる、あざと~~~い台詞を。


 今ホークに向かって放たれた台詞に、私もアイカもホークも皆固まってしまった。

この子(ミリー)は一体どこでこのような話術を身に付けたのだろう。

 念のため言っとくけど、私はこんな話術は教えてないからね?絶対だからね!?


「う‥‥うぅん、まぁ、せやなぁ。兄としちゃ妹の頼みは聞かなあかんかもなぁ‥うん」


 そしてあろうことか、ホークが愚かな兄に成りつつあるようで。


「ねぇ、いいでしょぉ?お兄ちゃ~ん?」


 無表情のままですっごい猫なで声で話してるんだけど、こんな機能がミスリルゴーレムには無いだろうし、一体どこでこの技術を学んだんだか。

 その技術を使ってミリーはここで一気に勝負を決めるつもりね。

 対するホークは?


 ‥。


 ‥‥。


 ‥‥‥。


 ‥‥‥‥。


 ‥‥‥‥‥。


「よし分かった!ワイも男や、ここは1つ妹の頼みを聞いて譲ったるわい!」


「わーい、有難うお兄ちゃん(棒)」


「ええでええで!ええんやでぇ!」


 勝負はミリーの勝ちで決まったようね。

これで人化の指輪はミリーの手に移る事になるんだけど、ホークは後悔しないのかしら?

 大体にして、ホークはミリーに半殺しにされた事を忘れてるっぽいけど、もしかして鳥頭なんだろうか?

 それからミリー、せめて感情込めて言ってあげなさい。

あまりにもホークが哀れだから。


「まぁ何にせよ良かったわね、ミリー」


「イェス、マスター。それじゃお兄ちゃん、邪魔だからどっか行って」


「お、おう‥‥」


 何とも哀れな敗者ねぇ‥‥。

そんな哀れな敗者(ホーク)は力なく飛び去って行った。


「あの‥‥お姉様?‥‥一応今はダンジョンバトルの最中なのですが」


 そうだった!

私とした事がすっかり忘れてたわ。


「状況はどう?」


「もうとっくに1階層のボス部屋を突破しましたよ。今は2階層のボス部屋を捜索中です」


 こっちでゴタゴタをやってる内に、そんなところまで行ってたんだ。

 ここからはちゃんと見てないとね。

 そう思い、映像に目を移した丁度その時、ウルフ達が我先にとどこかに向かって走り出した。


「ね、ねえアイカ、何だかウルフ達の様子がおかしくない?」


「はいお姉様、わたくしもそう思います」


 何だかどのウルフも目が血走ってるように見える。

中には涎まで垂らしてるのもいるし。


 ちなみに何故表情が分かるのかというと、自分のダンジョン内や自軍のモンスターは、いつでも確認する事が出来るからだ。

 確認する場合、ダンジョンコアから映写機のように映し出されるのである。

 そしてダンジョン通信やダンジョンバトルも同じように映し出される訳だ。


「見て下さい、お姉様。あの辺りにウルフ達が殺到してます」


 アイカの指した場所には殆どのウルフ達が集中し、何かを奪い合ってるように見える。


『ギン、ウルフ達がおかしいけど、何があったの?』


『アイリ様、どうやら肉の匂いに吊られてしまったようですわ。こちらの命令よりも本能が(まさ)った状態のようです』


 そういう事か。

でも何故そんなとこに肉なんか置いてあったのか気になるわね。


『ア、アイリ様大変です!ウルフ達の頭上から大量の砂のような物が!』


「え‥砂!?」


 見ると、ギンの言うように、砂みたいなのが降ってきた後のようだ。


『この砂は変な臭いがします!』


 変な臭い?

という事は普通の砂じゃ‥‥あ!


『ギン!その場からすぐに離れなさい!!』


 私がそう叫んだのと同時に、死角から弓を持ったゴブリンと杖を持ったゴブリンが10匹程現れた。

 弓には火矢が、杖の先にはファイヤーボールが見え、それが大量の砂のような物を被ったウルフ達に投げ込まれた。

 そして投げ込まれた直後、大爆発が発生し、これによりホワイトウルフは5匹が消滅し、レッドウルフも2匹が消滅するという事態となった。

他のウルフ達もダメージを負っている。

 これは間違いなく火薬によるものよ。


「‥‥やられたわね」


 やっぱり力押しは危険ね。

それにまだまだ自分の戦力を使いこなせてないのもあるわ。

これは今後の課題ね。


「ですがお姉様、ギンは元々離れてたのもあり無事ですよ」


 無事なのは良かったけど、まんまと罠に嵌まってしまったのは事実だから、素直には喜べないわ。

 それにこれを好機と見なしたのか、奥からゴブリンやウルフ達が迫って来たみたい。

 でもこれ以上の失態はしないわよ!

 っと、熱くなったらダメね、こういう時こそ冷静に冷静に。


『ギン、殺到してくるゴブリン達を蹴散らして!貴女の実力を見せつけてあげなさい!』


『畏まりました。存分に披露致しますわ!』


 さすがにギンが無双しちゃえば、数の利は無意味になるはず。

そして私の想った通り、ギンの相手になる者は()らず、まさにギンのオンステージで殺到した敵モンスターは殲滅した。


「何とか凌ぎましたね」


 だけど犠牲は大きいわよ。

過ぎた事だから仕方ないけども。


『後はボス部屋を見つけてボスを撃破するまでよ。ギンお願いね!』


『承知しましたわ』


 さて、相手側のボスはどんなモンスターなのか知らないけど絶対勝ってやるわ!


「今度はこちらの番よ!」


「その意気です、お姉様!」


「フレー、フレー、マ・ス・ター」


 って、アンタ達、真面目にやってる私の側で、クレープのいい匂いを漂わせるんじゃなーーーい!!


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