御招待
2018/3/1
ドローンの製作コストを変更してます。
ストーリーに変更はありません。
「この前は助かったよ、有難う!」
「もうお礼は聞いたんだから気にしなくてもいいのよ?」
「いや、そうはいかない。我々悪魔族は礼を持って礼を返す一族なのだ」
レンを捕らえてから数日後、悪魔族のディスパイルがアイリの元を訪れていた。
訪れた理由は、レンを捕らえるのに協力してくれたので、そのお礼を言いに‥‥というのが建前。
本当の理由は‥‥
「堕ちてますね完璧に」
「うむ。また主は男を堕としてしまったようだの」
ディスパイルは17歳の少年でアイリとは年齢が近い。
そのディスパイルがアイリに対して恋心を抱いたのは自然とも言える。
そう、レン捕縛の礼を建前にアイリに会いに来たというのが本当のところだ。
勿論、本心から礼を言いに来たというのも間違いではないが、心の比重で言うと、レン捕縛が3割でアイリに会いたかったが7割という感じだろうか。
「この場合はどう表現すればいいのでしょう?天使の場合は堕天使、では悪魔の場合は‥‥堕悪魔?」
「寧ろあのディスパイルとやらの気持ちが舞い上がっておるから、昇悪や昇魔で良いのではないか?」
口々に勝手な事をぬかす2人だが、アイリ達には聞こえないように小声で話していた。
「あ、何か上手いこと言って握手してますよ」
「ほう、あの男、中々やるではないか。さて、どこまで攻めるのかのぅ?」
と、アンジェラはその後の展開に期待したが、あっさりと終わってしまった。
「あぁ、大人しく帰っていきますね‥‥」
「むぅ‥‥もっとこう【俺に付いて来い】くらいの勢いが出せんものかの‥‥」
「まだ2回しか会ってないのに、そんな事言われても付いてく訳ないでしょ?」
「いやいや、そんな事はありません。お姉様は積極性が皆無ですから、相手から‥あ‥‥」
「そうだの。逢い引きとは男がリードするものであろ‥う‥‥」
「‥‥で、2人はここで、何・を・してたのかしら?」
アイリとディスパイルの様子を見て‥‥もとい、デバガメしてた2人の正面には、いつの間にかアイリが腕組みをしていた。
「何をとは心外じゃ。主を護る事が眷族たる妾の務めであろう?」
「そうですよお姉様。あの男がお姉様に手を出さないように、見張っていたのです」
「そう。なら仕方ないわ。そのままお昼御飯無しで見張っててちょうだい、もう帰っちゃったけど。」
「「すみませんでした!」」
アイリに胃袋をガッチリと掴まれてる2人は、華麗なる土下座をきめたのであった。
それから次の日、また次の日と通い続けるディスパイル。
そろそろ会いに来る理由が苦しくなってきたのではと、様子を見ていた眷族達は思っていた。
そんなある日‥‥。
「アイリを俺の国に招待しようと思ったんだ」
ディスパイルの口から発せられた事、それは泊まり掛けでディスパイルの国に遊びに来ないかというものだった。
「うーん、でもねぇ‥‥」
「いやいや、アイリはん、たまには羽を伸ばす事も必要でっせ?」
「そうッスよ。たまにはゆっくりしてほしいッス」
「ダンジョンの事なら心配いらぬぞ?妾達に任せておくがよい」
当然最初は難色を示すアイリだったが、ディスパイルと何故か協力的な眷族達の説得で、最終的には了承。
5日後、ディスパイルが迎えに来る事で話が纏まった。
「それじゃ行こうか」
「うん。エスコート宜しくね?」
「も、勿論だとも!」
やや緊張しながらアイリの手を握るディスパイル。
この後ディスパイルの国に転移するのだが、何故手を握るのかというと、同時に転移するには同伴者同士が体の一部を触れてなければならないためで、その一般的な措置として、手を握る事が殆んどなのである。
余談だが、レンを捕縛しに転移する際に、ディスパイルはちゃっかりアイリと手を握ってたりする。
アイリのダンジョンから2人が転移した後、ダンジョンでは直ぐにとある行動に出た。
それは‥‥
「よし転移先がわかったのじゃ!」
「ナイスです、アンジェラ!‥クロ!」
「ちゃんと隠してたんで、バレてないッスよ姐さん!」
ごそごそと物影から何かを持ってきたクロは、それをアイカが展開中の魔方陣の中に置いた。
「隠れて準備しといて良かったです」
「まったくじゃのう。お陰でちと睡眠不足での‥‥」
「でもよ、やっぱあんまり気が進まねぇぜ。これって盗撮ってやつだろ?姉御にバレたら怒られるぜ?」
「今更何を言ってるのですかモフモフ。お姉様が心配だからとこのドローンを召喚する事に、アナタも賛成したではないですか」
「そりゃそうですが‥‥」
今アイカが言った通り、こっそり用意してたのはドローン。
しかもただのドローンではない。
なんと、このドローンにはアンジェラやモフモフの固有スキルである、探知波動と特殊迷彩が搭載され、更に物理防御と魔方防御、その他諸々をエンチャントされてるのである。
今回はこの無駄に高性能なドローンを使用して、アイリとディスパイルの様子をこっそり覗いてみようと立案され、見事全会一致で可決されたのだった。
ちなみに今回の作戦においての活動経費は、総額約100万ポイントのDPを使用している。
その内の9割はドローンで消費した。
「そんな事よりアイカよ、早ぅ起動させて追いかけるのじゃ!」
「わかってますよ‥‥はい!起動成功。このまま転移させます!」
アイリ達を追って転移したドローンは、上空10㍍の位置からアイリ達を撮影していた。
そこは既にディスパイルの住んでる国、ヴェリアーレで、アイリ達の周囲にも人が歩いてるのが見える。
「アイカはん、ちと高過ぎでっせ。もっと高度を落とせんやろか?」
「任せて下さい。この日のために操縦するのをこっそりと練習してたのです」
アイカの無駄な努力の結晶により、高度を落とし3㍍程の高さを維持する事に成功する。
「お、ナイスやで、アイカはん!」
「うんうん、これならよく見えるのぅ」
「確かに~、よく見えますけど~、建物の中に入ったら~、見えませんよ~?ほら~」
セレンに言われて気付いたアイカ達だが、既にアイリ達は建物の中に入ってしまった後だった。
「くっ、わたくしとした事が、建物の中の事を失念してました‥‥」
「その辺の扉をぶち破るんじゃダメなんですかい?」
「いや、それはマズイで御座ろう」
「そうじゃの。幸い探知が出来るのじゃから、建物から移動するまで待機するしかなさそうだのぅ」
「むむむ‥‥仕方ありません。暫くは動かないでしょうし、その間に間食タイムにしましょう」
こうしてアイカ達の失念により、少しの間プライベートを守る事が出来たアイリ達だった。
「うーん、さっきから誰かに見られてるような気がするけど、気のせいかな?」
「そんな事はないぞ?アイリの見た目はかなり可愛い方だからな。後ろから見られてたに違いない」
「そ、そう‥‥かな?‥‥」
正面から可愛いと言われて照れるアイリ。
そもそもアイリは、家族以外から可愛いと言われた事がないため、他人に言われると汐らしくなってしまうのだ。
「アイリ、まずはそこの建物だ。ここでは演劇を楽しむ事が出来る」
「そうなの?私、家の外で演劇を見た事がないから楽しみ♪」
「っ‥‥うん。俺も楽しみだ」
アイリの無邪気な笑顔に、一瞬ドキッとしたが、すぐに冷静さを取り戻したディスパイル。
2人はそのまま劇場と思われる建物に入っていった。
「フッ、まさかこんな所に1人で付いてくるとはな‥‥」
「え?‥‥ま、まさかアナタ!」
「クックックッ、今頃気付いたのか。だがもう遅い!既に期は熟した!‥‥後はお前を生け贄に捧げ、妻を生き返らせるのみ!」
「わ、私を騙したのね!?」
「そうだ!‥だが騙される方が悪い‥‥そうだろう?」
「く、卑怯者!」
「フン、何とでも言うがいいさ!」
「‥‥‥‥‥」
「どうした、あまりににもショックで気が抜けてしまったか?」
「‥‥初めてですよ。私をここまでコケにしたおバカさんは‥‥」
「ん?」
「‥‥絶対に許さんぞ!虫けらぁ!ジワジワとなぶり殺しにしてくれる!」
「え?ちょっ!」
「アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ‥終わッタァ!」
「ヘグボッ!!」
「貴様には地獄すら生ぬるい‥‥」
ジャシャジャジャーーーーーーン♪
劇終
「うんうん、いつ見てもラストシーンに感動する作品だ!」
「‥‥うん。何と言うか‥‥今まで見たことがない作品だったわ‥‥」
「そうだろう、そうだろう。じゃあそろそろ次に行こうか」
「うん、そうね」
アイリ達が劇場から出てきたのを見て、アイカ達もそれを探知し空かさずアイリ達の尾行を開始した。
「結局あの建物は何だったのでしょう?」
「さっきチラッと壁の貼り紙が見えたんスけど、あの建物は劇場ッスよ」
「成る程。主達は芝居を見ていたので御座るな」
劇場を後にしたアイリとディスパイルだったが、そのまま暫く見ていても、特に何も買う訳でなく、建物にも入らず、ただブラブラと歩いてるだけであった。
そしてその間もしっかりと手を握っていた。
「さっきから何もせずブラブラと、何をしとるのじゃ?」
「これはアレッスよアレ!ウィンドウショッピングってやつッスよ!」
「なんでぇ、そのウィンド何とかってのは?」
「店の前に見本で並んでる服とか有るじゃないッスか、アレらを見て似合うかどうか話しつつ、楽しみながら歩くッスよ。姉貴の世界ではデートの定番の1つッス」
これはズバリとクロの言う事で正解で、アイリ達はウィンドウショッピングを楽しんでるのだった。
まさかアイリとしても、知り合って間もない相手に小物や服をねだるなど出来るはずもなく、ウィンドウショッピングという形で落ち着いたのだった。
「特に何か買う感じではなさそうだの」
「はい。ですが先程から手を握ってるのが自然に感じられますね。もう馴染んだのでしょうか?」
アイカの言う通り、最初はぎこちなかった手の握りかたが、すっかり自然に握ってるように感じられた。
「だいぶ距離が近付いたかの?」
「最初よりかは親しくなった感じがするッスよ」
「打ち解けてきたんやな‥‥お、今度はあの建物みたいやで」
ホークの言葉で皆の視線がドローンに映される映像に注目する。
「ここで昼食にしよう。俺のお薦めの店だ」
「それならついでに、お薦めのメニューを選んでくれない?なんだったら、ディスパイルが注文するのと同じのでもいいけど」
「お、俺がか?‥‥あ、いや、そう‥だな。じゃあ俺がいつも注文するセットメニューでいいか?」
「お任せするわ」
「よし、なら決まりだな‥‥そこの店員、このセットメニューを2つ頼む!」
「はーい、畏まりましたーー!」
この日の昼食は、ディスパイルにとってはいつもの。
アイリにとっては初めて堪能する料理だった。
だがディスパイルは、アイリの口に合うかどうかで気が気じゃなかったりした。




