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夜の訪問者

 初めてのダンジョンバトルはアイリの勝利で終わった。

その直後に再びバトルを決行するも、これもまたアイリが勝利した。

 2つのバトル終了後、審判のモルデナから勝者へのご褒美としてDP300がアイリへと贈られた。


アレクシス王国:天前愛漓(あまさきあいり)

「この【しょぼいご褒美】はGランクだからなのかしら‥‥」


審判:モルデナ

「す、すみません!私も邪神様の決定に従ってるだけで、詳細はわからないんで‥‥」


アレクシス王国:天前愛漓

「あ、ごめんごめん。別にモルデナさんに言ってる訳じゃないから。多分、ランクが低いからなんでしょ?」


審判:モルデナ

「はい。GランクからEランクまでは、ご褒美が決まってるんです」


 これは仕方ない。

邪神も一々低ランクのダンジョンバトルを見たりしないだろうし。

内訳は、初戦で100ポイントで2戦目で200ポイントだった。

次は300ポイントになるのね恐らくは。


チョワイツ王国:グーチェス

「君には助けられた。礼を言わせてくれ、ありがとう!」


アレクシス王国:天前愛漓

「べ、別にアナタのためにやった訳じゃないから‥‥」


 そこは「べ、別にアンタのためにやったんじゃないんだからね!」と言うべきです!とアイカが言ってるけど、余計な事は言わんで宜しい!


チョワイツ王国:グーチェス

「それでもだ、本当にありがとう!」


 何というか、このグーチェスって人は、一見冷静沈着に見えるけど、割と熱い感情を持ってるのね。

 バトルが終わって彼らが負けたと知った時、ポーカーフェイスが崩れて物凄く悔しそうにしてたもの。


アレクシス王国:天前愛漓

「もう大事な眷族(けんぞく)を賭けの対象にしたらダメよ?」


チョワイツ王国:グーチェス

「勿論だ。もうこんな事はしない」


 最後に、機会があればまた会おうと言ってグーチェスはダンジョン通信を切った。


「お姉様、早くご飯にしましょう!」


「アイカ、散々たこ焼き食べといて‥‥」


 本当にブレないわねアイカは。

でもお腹すいたのは事実だし、お昼ご飯にしよっと。


アレクシス王国:天前愛漓

「じゃあ私も切るわね。それじゃまたね、モルデナさん」


審判:モルデナ

「はい、お疲れ様d「ちょっと待てよ!」


 何々?早くお昼ご飯にしないとアイカがうるさいんだけど‥‥。


無所属:水虫

「何でだよ!何でGランクのお前が、Sランクのモンスターなんか持ってんだよ!」


 なんだ、そっちか。

てっきり何で水虫にしたんだとか言ってくると思ってたわ。

 理由ねぇ‥‥、理由なんてミルドの加護くらいしか思い浮かばないんだけど。

でも加護の話は他人にするつもりはない。


アレクシス王国:天前愛漓

「そんな事、水虫のあんたには関係ないじゃない」


無所属:水虫

「み!?」


 中々斬新な驚きかたしてるけど、可哀想などとは思わない。

コイツもグーチェスと一緒で自業自得よ。


アレクシス王国:天前愛漓

「見た目だけで判断した水虫の失態よ」


無所属:水虫

「俺は水虫だけど水虫じゃねぇーーっ!」


 どっちなのよ‥‥。


アレクシス王国:天前愛漓

「はいはい、わかったからもう帰んなさい」


無所属:水虫

「ちくしょーーーーーっ!!」


 悔しさの限り叫んだ水虫は、涙目になりながら通信を切った。


審判:モルデナ

「では私も失礼しますね」


 最後に残ってたモルデナさんも通信を切ったので、ようやく落ち着いた。

 さてさて、お昼ご飯は何にしようか‥‥。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ダンジョン通信。


それは、多数のダンジョンマスター達が集い、様々な情報をやり取りする事が出来る機能である。

情報交換以外にも、ダンジョンバトルの申請をしたり、邪神様との連絡もダンジョン通信を用いて行う。

 今日も思い思いの集いに参加するダンマス(ダンジョンマスター)達が集まっていた。


共存を望む者達:ロムネック

「おい、聞いたか?また成り立てのダンジョンマスターが殺られたって話」


共存を望む者達:バット

「聞いた聞いた。Gランクの奴だろ?」


共存を望む者達:ロムネック

「ああ。今月に入ってから3人目だ。しかも皆Gランクのダンジョンマスター達だったから、完全にルーキーキラーだな」


共存を望む者達:マリオン

「しかも、ダンジョンの場所は全然バラバラなのよね?それでルーキーキラーって事は、犯人はダンジョンマスターでほぼ決まりね」


共存を望む者達:ロムネック

「そうだ。排他主義の連中か、快楽者かわからんがな」


共存を望む者達:バット

「物騒だよなぁ‥‥」




 あのダンジョンバトルから5日後。

また外に行きたいなぁ等と思いながら過ごしてると、アイカが来客の存在を知らせてきた。

 聞けば私のダンジョンに入ってから、入口から死角になる場所で膝を抱えてじっとしてる少女がいるのだとか。


如何(いかが)致しましょうお姉様?」


「うーん、難しいわねぇ‥‥」


 ただ迷い込んだだけなら保護するなり、森の外へ送ってくなりするんだけど、どう考えてもこんな森の奥に1人でいる少女って普通じゃない。


「少し様子を視ましょう」


「わかりました」


 (しばら)く観察してたけど、その場から動こうとはせずにいた。

外は日が落ちてきたため薄暗い。

 このまま放置するのは危険と判断し、少女本人と接触する事にした。




「そこのアナタ」


 アイカが声をかけると、少女はビクッ!として、アイカを見上げる。

 その顔は明らかに怯えてる様に見えた。


「ここままここに居ては危険ですよ?お家へ帰らないのですか?」


 アイカは少女を警戒させないように、少し離れた場所にしゃがみこむ。


「‥‥帰れないんです」


 ()()()()のではなく、()()()()んですね。


『何やら訳ありのようです、お姉様』


『そのようね。そのまま話してみて、その人が了承したら5階層の街に連れてってあげて』


『わかりました。やってみます』


 このダンジョンの5階層は街エリアになっている。

街の中には宿屋や道具屋等が存在し、各店では自動人形(オートマタ)が対応する仕組みになっているのだ。


「行く所が無いのなら、私の街にいきますか?」


「街‥‥ですか?」


 少女は目を丸くして聞き返す。


「はい。このダンジョンの5階層は街になってますので。宜しければ案内しますよ?」


「‥‥‥‥‥」


 何やら考え込んでしまったが、間違いなくこの少女は街に行く事を選択するだろう。

 このままこの場に残るメリットなんて無いはずだ。


「‥‥そ、その、お願いします」


 予想通り頭を下げてきたので、そのまま5階層の街へ案内する。

まだ少し警戒されてる感じもするが、初対面なので仕方がない。

 そしてアイカは、歩きながら少女の事を色々と聞き出す事に成功した。


「‥‥成る程。つまり悪い奴にお家を壊された上に、アナタは追われてる‥‥と」


「‥‥はい」


 この少女の名前はレミエマ。

歳は16歳で人族との事。

元々レミエマは、両親と一緒にこのダンジョンがある魔の森の外で暮らしていたらしい。

 ところがある日、悪い男が表れて襲って来たらしい。

男の襲撃により両親は他界し、レミエマ1人だけ命辛々逃げて来たのだという。


「しかし何故魔の森の中へ逃げ込んだのですか?人族なら他の街へ逃げたほうが良かったのでは?」


「いえ、それだとすぐに追い付かれると思ったので‥‥」


「そうでしたか。‥‥っと、街が見えてきました。あの灯りが見えるでしょう?」


 アイカが5階層にある街を指す。


「‥‥本当に‥ダンジョンの中に街が‥‥」


「凄いでしょう?ダンジョンの中に街があるなんて、このダンジョンくらいではないでしょうか!」


 レミエマは驚きを隠さず、呆けて街をながめている。

 そんなレミエマに対し得意気に語るアイカは、そのまま街に入ると宿屋へと案内した。


「今日のところは、この宿に泊まると良いでしょう。料金はサービスという事にしときますので」


「あ、有難う‥‥」


 レミエマを無事保護したアイカは、宿に案内し終わるとアイリの居るコアルームへ戻って来た。


「大体は見ててわかったけど、一応アイカからも聞かせてちょうだい」


「はい。襲われて逃げてきたのは本当のようです。手に切り傷と、衣服の腕の部分が斬られたような痕跡がありました。ですが本人の言っていた人族だという事に関しては、嘘だと思われます」


 おや?アイカにしては、中々しっかり見てるのね。

私もレミエマは人族ではないと思うわ。


「‥‥何で嘘だと思う?」


「色々と理由は思いつきますが、種族が他者に知られるのは問題があるからだと思われます。差別の対象から逃れる‥というのが一般論でしょうが、レミエマの場合はそれには当てはまりません」


「その通りね」


 レミエマが普通の少女なら当てはまるんだけど、魔物が多い魔の森を1人で突破してくるなら()()()()()とは言い難い。


「ですので、種族または職種が判明すると都合が悪いのでは?‥と思われます」


「私も同じ意見よ。でも無理矢理聞き出すつもりはないから、とりあえず監視をつけておくだけにしましょう」


「はい、お姉様‥‥あ!」


 ん?どうしたんだろ?


「どうやらまた別のお客様のようです」


 今日は来客が多い日ねぇ。

そんな日も珠にはあっていいけど、冒険者が1人も来てないのに、来客だけが来るっておかしいんじゃないかしらね‥‥。


「今度は男性客です。同じ様に宿へ連れ込みますか?」


 その卑猥(ひわい)な言い方はやめなさい!

 ‥‥それは兎も角、この男もここに来たのは偶然‥って事はないわよね?


「この男は私が話してくるわ」


「大丈夫ですか?」


「勿論よ」


 このダンジョンのマスターな訳で、いざとなればすぐに転移して逃げる事が出来る。


 さっそく男がいるダンジョン入口にやって来た。

何やら男は入口付近を調べてた様だが、私の存在に気付くと話し掛けてきた。


「君はこのダンジョンを攻略中の冒険者か?」


 おっと、どうやら冒険者と間違われたようだ。

 でも私は()()()()やってるから冒険者を名乗っても嘘にはならない。


「まぁそんなとこよ。それよりアナタは?」


「俺はギブソン。冒険者‥みたいな者だ」


 30代くらいで獣の耳をした男はそう答えた。

よく見ると身形は普通だが、この男からは血の臭いがする。

 でも冒険者であるならば返り血を浴びたり、自分も怪我をするだろうから、別に不思議ではない。


「まさかとは思うけど、1人でダンジョンに来たの?」


「そうだ。少々()()()があってな」


 言葉少なげに話すところから、あまり深く話したくないって感じね。

なら遠くから観察させてもらいましょうか。

 でもその前にこのギブソンという男を鑑定してから‥‥‥え?


 驚いた‥‥あのレミエマと関係ありそうだとは思ってたけど、本当に関係あるとはね‥‥。


「じゃあ私は仲間の所へ戻るわ。アナタも気を付けてね」


「忠告、感謝する」


 ギブソンという男から離れて少し様子を伺うが、手際よくテント張って中に入った。

今日の所はこの1階層の洞窟で寝るようだ。

 私も晩御飯を用意しないといけないので、コアルームへ戻る事にした。


「ただいまー」


「お帰りなさいませ、ご主人様!」


 コアルームに入ると、何故かメイド服を着てお決まりの台詞を言うアイカが出迎えた。

中々似合ってて可愛‥‥ってそうじゃなくて、まーた勝手にDPの無駄遣いをして。

 というか何やってんのよアイカ‥‥。


「これをやると、ご主人様が喜ぶとテレビで言ってましたが‥‥」


 ‥‥もういい加減テレビの言う事を真に受けるなって言っとこう。

 まったく、余計な事ばっかり覚えるんだから、もう。


「ではご主人様、早く食事の用意をお願いします」


「そこは逆でしょ!?」


 本当にアイカはぶれないわね‥‥。


「それじゃ今日の晩御飯は「お姉様、またお客様のようです」‥‥本当に来客の多い日ね」


 今度は誰が来たのやら。


「あの顔はグーチェス様のようです」


 んんー?何でグーチェスが来る訳?

何も約束はしてないし、そこまで親しい訳でもないんだけど。

 とは言え挨拶も何もしない訳にはいかないので、5階層にある城の客室に案内しよう。


「後で紹介するのも面倒だし、アイカも一緒に来てちょうだい」


(かしこ)まりました、ご主人様」


 それはもう止めなさい!




「やぁ、久しぶりだね」


「久しぶりと言っても5日ぶりよね?」


「まぁそうなんだけどね。まぁ‥なんだ‥行きなり押し掛けてすまない。どうしても直接会って、礼を言おうと思ってね」


 うーん、何か前よりもフレンドリーになってる気がするんだけど、今はおいといて。


「立ち話も何だし居城に案内するわ。アイカ」


「はい、わたくし本日のお相手をさせていただくアイカと申し『ゴツン!!』‥痛いです!お姉様!」


 何の相手をするつもりよ!

しかもメイド服のまま来てるし!


「‥‥私が案内するわ。付いてきて」


「あ、あぁ‥‥」


 歩きながらアイカを紹介し終え、グーチェスを鑑定してみる事にした。

ダンジョン通信越しだと鑑定が出来なかったのよね。

 そしてグーチェスを鑑定すると、驚くべき事実が判明した。


「成る程成る程。そういう事か‥‥」


「ん?どうしたんだいアイリ?」


「いえ大丈夫。こっちの事だから」


 まさかコイツまでレミエマに関わってるとはね。

でもまぁ、今は()()()()あげましょうか。


 私は5階層にある城に向かいながら、今後の展開を予想し思考するのであった。


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