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バトルスタート!

ダンジョンバトルの始まりです。


チョワイツ王国:グーチェス

「もう間もなくだが、そちらは問題ないか?」


アレクシス王国:天前愛漓(あまさきあいり)

「問題ないわ」


 もうすぐだと思うと少しだけ緊張してきたわね。

 ダンジョン通信は相手の顔も映るけど、相手はポーカーフェイスな20代の青年に見える。

その青年の傍ら(かたわら)には、眷族(けんぞく)であろう10代の銀髪の少女と、斧を持ったミノタウロスが映っていた。


審判:モルデナ

「アーアー、テステス、そろそろ宜しいでしょうか?わたくし今回のバトルの審判を務めさせていただきます、悪魔族のモルデナと申します、宜しくお願いします」


チョワイツ王国:グーチェス

「宜しく頼む」


アレクシス王国:天前愛漓

「宜しくーっ!」


審判:モルデナ

「今回で3回目の審判という事で、至らぬ点もあると思いますが、何卒ご了承下さい。では今から5分後に互いのダンジョンを接続しますので、接続完了と同時にバトルスタートとなります」


 後5分‥‥これが妙に長く感じるのよねぇ。


審判:モルデナ

「使用するフロアは1階層のみで、ボス部屋に居るモンスターを倒した方の勝ちとなります。ボスは部屋から出てはいけません。部屋から出たら失格とみなします」


 モフモフがしびれを切らして部屋から出ないように、釘を指しといたほうがいいかも。


審判:モルデナ

「また、ダンジョンバトル中に死亡した眷族(けんぞく)は、バトル終了後に復活しますのでご安心下さい。ところで、お2人は緊張されてませんか?わたくしなんかは失敗が多いので、今でも失敗しないかビクビクしております。こういう時はリラックス出来るように、楽しい事を想像すると良いらしいんですよ。なのでわたくしの場合は、彼氏が出来た時を想像すると非常に効果があります。あ、一応現実でも彼氏募集中で「ちょっと!残り1分を切ったわよ!?」‥ああっ!ごめんなさいごめんなさい!それではカウントダウンに入ります」


10‥‥9‥‥8‥‥7‥‥6‥‥


(いよいよ初バトルね)


5‥‥


(後1勝、後1勝なんだ‥‥)


4‥‥


(お姉様、頑張って下さい!)


3‥‥


(グーチェス様に勝利を!)


2‥‥


(姉御のために、やってやるぜ!)


1‥‥


(負けられない。もう負けられないんだ!)


0!


審判:モルデナ

「バトルスタート!」


「さて、まずは相手のダンジョンの中を探るわ。ジャイアントラットを20体召喚して中で散開させて!」


「了解しました」

-20DP→残DP28940


 DP(ダンジョンポイント)には余裕があるから全然問題ない。

 侵入者を撃退してないのに、これだけDPが有るのは異常かもしれないけどね。

 言うまでもなくDPに関しては、眷族(けんぞく)達(主にアンジェラ)が頑張って魔力をDPに変換してくれたおかげだ。


「それから、向こうから侵入してきたモンスターは、妨害せずにモフモフの居る部屋へ案内してあげて」


「宜しいのですか?」


「そうしないと部屋から飛び出しそうだわ」


「確かにモフモフは闘いたがってましたからね」


 無いとは思うけど、もしモフモフが闘わずに終わったら暴れそうだもんね。

 まぁそれはいいとして‥‥


「まずは相手の出方を見ましょうか」




 アイリが偵察して様子を見ると決めた時、グーチェスもまた、アイリと同様に偵察を送り込もうとしていた。


「グーチェス様、まずはゴブリンパーティを先攻させるのが宜しいかと」


「だがベネリア、DPも無駄には出来ない。まずはグリーンウルフ10匹を偵察に向かわす。コア、頼む」


『グリーンウルフを10匹召喚します』

-50DP→残DP850


 赤く光るダンジョンコアが、グーチェスの指示でモンスターを召喚する。


「まずはボス部屋までのルートを確保する。敵に出合っても極力戦闘は避ける。罠が仕掛けられてる可能性もあるので、安全なルートを探すように」


『了解致しました』


 とりあえずはこれでいい、

後はボス部屋を早期発見出来るか‥‥だな。


「グーチェス様、敵のスライムを発見しましたが、こちらに戦闘を仕掛けてきません。いかが致しましょう?」


 ‥‥妙だな。足止めくらいしてきても良さそうなものだが?

だが、わざわざスライムに対してこちらから攻める必要はない。


「それならそれで都合がいい。‥が、まったく手を出してこないのは解せ(げせ)ない。一応1匹だけグリーンウルフをぶつけてみてくれ」


『了解致しました』


 さて、仕掛けてこないのは、何か狙いがあるのかどうか。

 だが、こちらにもジャイアントラットが偵察に出されたようだ。


「数は20匹か。よし、防衛中のゴブリンをボス部屋に続くルート上で固めて配置する。更にジャイアントラットを40匹召喚し2匹ペアで組ませ、敵ジャイアントラットを各個撃破させてくれ」


「ジャイアントラットを40匹召喚します」

-40DP→残DP810


 これで上手く偵察の妨害が出来てればいいが‥‥。


「見て下さいグーチェス様、敵のスライムがグリーンウルフから逃げて行きます」


 スライムは攻撃力は低いが、物理防御はかなり高い。

故に防衛には向いているが、敵を前にして逃げてはその意味が無くなる。

 これは罠か?

こちらを(あなど)らせて、誘い込む狙いか‥‥。


「どう思うベネリア?」


「相手はダンジョンバトルの初陣(ういじん)です。まだ戦いかたがわからないのでしょう」


 そうだとしたら楽なのだが、素直にそう考えるのは危険だろう。

 俺はこれまで色んな相手と闘ってきたが、その誰もが俺を上回る采配(さいはい)だった。

そのおかげで俺の対戦成績は奮わず、今のところ2勝10負だ。

 だが敗戦から学んだ事もある。


「グリーンウルフにはそのままスライムを追わせてくれ。さて、現在のグリーンウルフの数は‥‥」


「罠に掛かって4匹が落命してます。増援を送ってはどうですか?」


「ならば侵入してきたジャイアントラットを片付けたら、こちらの残ってるジャイアントラットを向かわせよう」




 グーチェスがボス部屋へのルートの守りを固め、更に倍の数のジャイアントラットをあてて来たため、アイリの放ったジャイアントラットが今まさに全滅しようとしていた。


「相手も中々やるわね」


「何言ってるんですかお姉様。どう見ても一方的にやられてるだけじゃないですか」


 見た目ではそう見えるかも知れないけど、実際に偵察の効果はあった。

1ヶ所だけ守りの固い場所があったのよ。

間違いなくその奥に、ボス部屋へ繋がるルートが有るはずだわ。


「あ‥‥偵察隊が全滅しました。更に敵のジャイアントラットが侵入して来ましたよ。どうしますお姉様?」


 ありゃりゃ、全滅かぁ。

さすがにこっちの倍の数はキツイもんね。


「グリーンウルフから逃げてるスライムの様子は?」


「モフモフの部屋に到達するには、まだまだかかりそうです。何せ1階層だけとは言え広いですからね、このダンジョン」


 うーん、まだかかるかぁ‥‥。

ある程度モフモフに戦闘させないと、フラストレーションが溜まりそうなのが心配なのよね。

 とはいえ、このまま何もしないんじゃ不自然だし、もう1度送り込もうかしら。


「アイカ、スピアバグを30匹とグリーンウルフを10匹召喚して、敵の守りを固めてる所に突撃させて」


「了解です、お姉様」

-80DP→残DP28860


 でもただ突撃させても効果は薄い。

効率的に打撃を与えるには‥‥


「突撃の際、スピアバグにゴブリン達が気をとられてる隙に、死角から急襲させて」


「中々エグい事を考えますねお姉様」


 いや、そんなにエグい?

普通に誰でも思い付くはずだけど。


「それより、侵入してきたグリーンウルフとジャイアントラットは?」


「半数以上罠に掛かって倒せてます。逃げてるスライムは丁度半分くらいを進んだ感じです」


 あれまぁ‥‥。

でも変ねぇ、そんなに多く罠を仕掛けた覚えはないんだけど‥‥。


「ねえアイカ、仕掛けた罠の数が多くなってる様な気がするのは気のせい?」


「気のせいではありませんよ?バトルが決まった昨日の内に、張り切って仕掛けさせていただきました!」


「‥‥‥‥‥」


 気のせいであってほしかった‥‥。

それじゃ益々相手がボス部屋に到達するのが遅れるじゃないの‥‥。


「はぁ‥‥しょうがない。もう少し様子を見ましょう」




 アイリが新手を差し向けようと動いた時、グーチェス達は困惑させられていた。

 それもそのはず、相変わらずスライムはグリーンウルフから逃げ続けてるし、他の偵察隊は半数近くが強力な罠に掛かっていたのだから。

 ここへきて、グーチェス達はどの様な戦略を展開しようか決めあぐねていた。


「半数以上が罠に掛かったか‥‥」


 単純で回避しやすい罠も有ったが、存在した罠の殆んどが、DPの消費が激しく強力なものばかりだ。


「グーチェス様、どうやら相手は罠にDPの大半を費やしたと見てよさそうですね」


「‥‥そうかもしれん」


 例えば、小部屋に入ったら部屋ごと焼きつくされる罠。

この罠だけでも1500DPだ。

しかも使いきりではなく、クールタイムを経て復活するので高額なのだ。

 だがなけなしのDPを、この様な罠だけに使うとは思えない。

相手は本当にGランクで初戦なのだろうか?


「あ、グーチェス様。スピアバグとグリーンウルフがゴブリン防衛隊に突撃してきます!」


「やはりこの先にボス部屋があるとバレたか‥‥」


 あれこれ考えるのは止そう。

今は目の前のバトルに集中しなくては。


「隊列を崩されないように注意だ。スピアバグの攻撃力は大した事はない。グリーンウルフに噛み付かれないように気をつけろ」


『了解致しました』


 スピアバグは弱いが、必要なDPも1DPと低コストだ。

物量でダメージを蓄積させて、その後に主力を送ってくる算段かもしれない。

偵察隊の数も減った事だし、新しく増援を送ろう。


「ジャイアントラットを100匹召喚し、ボス部屋を見つけるのに全力をあげてくれ!」


『承知しました。ジャイアントラットを100匹召喚します』

-100DP→残DP710


「後1勝で昇格出来るんだ。これ以上アイツに馬鹿にされてたまるか!」


 アイツは既に7勝2敗と好成績の上、後1勝でEランクになれるのだ。


「グーチェス様、あの男の言う事など気にしてはいけません!」


「ベネリア?」


「誰が何と言おうとグーチェス様はグーチェス様です」


 そう‥だな。

焦ってるせいで、前が見えなくなるところだった。


「グーチェス様!スライムを追っていたグリーンウルフがボス部屋を発見しました!」


 きたか!

 後はいよいよボスを倒すだけとなったな。


「良くやった!直ちにゴブリンパーティを向かわせてくれ!」


 この戦い、必ず勝つ!




 グーチェスと眷族(けんぞく)のベネリアは、ボス部屋の発見に喜んでいたが、そもそもそこは誘導されて発見させられたに過ぎない。

 そのボス部屋では、自分の出番を今か今かと待ち望んでいるのが‥‥


「あー暇だなぁ、ちくしょう‥‥」


 ボス部屋の中では、モフモフが退屈そうにしていた。

 元々脳筋のモフモフは、身体を動かす事が好きなため、1ヶ所でじっとしてるのは耐えられないのだ。


「もーまどろっこしい事は無しにして、とっとと相手側にカチコミかけるか?」


 ‥‥等と言ってるが、もしそんな事をすれば即失格であるため、そんな負けかたをすれば、アイリから雷が落ちるのは確定である。


「あーあ、こんなに退屈なら、いっそ遊撃隊として志願するんだったぜ」


 しかし、それをやってしまっては一瞬で終わってしまうと思われるため、アイリは許可しなかった可能性が高い。

 アイリとしても、ダンジョンバトルを楽しみたいのと、戦略的な経験を積みたいと思ってるのだ。

 だがそんな後悔を口にしてるモフモフへ、朗報が飛び込んだ。


『モフモフ、相手のグリーンウルフがボス部屋を発見したみたいだから、近い内に本命の敵戦力が来るわよ!』


「本当ですかい!?そいつは腕がなりますぜ!」


 いよいよモフモフの退屈な時間が終わろうとしていた。


次回予告!


モフモフ大暴れの巻

モフモフ「俺に任せろ!」


バトル、スタンバイ!


尚、話の進行上、変更される可能性もあります。


モフモフ「え?」

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