反撃開始
「やぁいらっしゃい!よく来てくださいました!」
私が宿に向かってる途中に、アンジェラからアルバムーン商会の場所を発見したという念話が届いた。
場所を聞いた後、そのまま商会に向かい、受付でドルトンさんを呼んでもらい、無事ドルトンさんと接触出来た訳だ。
「急な用向きですみません。すぐにでも見てもらいたい物があって」
満面の笑顔で迎えてくれたドルトンさんだが、気のせいか前よりゲッソリしてる様にみえた。
何かあったのかな?
いや、今はこちらが優先だ。
出来ればロドリゲスが気付く前にけりをつけたい。
「あぁ、いや、商売事で色々ありましてな‥‥。それより、急ぎの用件が有るのでしょう?」
商売事なら私でどうこう出来る事じゃないわね。
「実はコレを見てほしいんです」
1枚の契約書をドルトンさんの前に差し出す。
それを受け取り読み始めると、最初は笑顔だったドルトンさんの表情が徐々に変化してきた。
顔をしかめ、唇を噛み締め、最後には手が震え出した。
「‥‥アイリさん。この契約書を一体どこで?」
辛うじて怒りを抑えてる様に見えたのは間違いない。
恐らく不当に利益を貪ってる内容なのだろうなと思える。
「ロドリゲスの私室に隠してありました。ただ、入手方法はお教え出来ませんが」
さすがに勝手に拝借してきたとは言えない。
どうしても教えてと言われたら、ロドリゲスが落としたとか言うしかないけど。
「それて、一体何が書いてあったのです?」
「‥‥まずは多数の名目での臨時徴収ですが、この名目の表現を微妙に変化させ、過剰に徴収する事で何倍もの利益を不当に上げています。例えば、この魔物増加に伴う「ちょ、ちょっとごめんなさい。」‥なんでしょう?」
「‥すみません。もう少し簡単な感じでお願い出来ませんか?」
急かすようで悪いけど、あまり悠長にしてられないのよね。
「これは失礼しました。要するに詐欺ですな。しかも支払いが滞った場合、妻や娘等が借金のカタに連れて行かれるのです!」
つまり、地下牢に居た女性達の多くは、借金のカタに連れて来られたのね。
「‥‥‥‥この中には私の娘もいます」
え?どういう事!?
「商品を納める期日に間に合わなかったのです。先日アイリさんに助けられましたよね?あれは急な仕入れが必要になったため、急遽行ったのです」
そうだったのね。
経費削減で経験の浅い冒険者を護衛に選んだ訳じゃなかったのね‥‥って言ったらカインさん達に失礼よね。
カインさん、ガルベスさん、メージェさん、ごめんなさい。
「本来ならキチンと商隊を組んで行く必要がありましたが、それも叶わず‥‥といった感じです。ですが、それこそがロドリゲスの狙いだったようです!」
ロドリゲスのカス野郎にはキツーイOSHIOKIが必要ね。
元々報復する予定だったし、ドルトンさんを始めとする罠に掛かった人達の分も上乗せしてやましょう。
それじゃあ後は‥‥『主よ』‥っと、アンジェラから念話だ。
『どうしたの?』
『たった今、ロドリゲスが冒険者ギルドにやって来たぞ。どうやらギルマスと面会するつもりのようだが‥どうする?』
私が逃げたのがバレたのかな?
それとも、私を捕らえたとアイカ達に伝えるため?
何れにしても、これ以上余計な事をされたくないわね。
『アイカとセレンも一緒に連れて、ロドリゲスとギルマスの身柄を押さえてちょうだい!出来るだけ急いで行くから』
『承知したぞ主よ』
あっちはアンジェラが居れば大丈夫よね。
ギルマスがどれだけ強いか知らないけど、単独でSSSモンスターを相手に出来る奴なんて居るはずない。
「アイリさん、今から被害者を集めて商業ギルドに行きたいと思います。こちらの契約書はお預かりしても?」
「いいですよ。私が持ってても意味は無いので、ドルトンさんの方で役立てて下さい」
「有難う御座います!すぐに会長に知らせなくては!」
急に元気になったわね。
もしかして、ゲッソリしてたのは娘さんが関係してたのかも知れない。
さてさて、ロドリゲスとギルマスがボロ雑巾の様になる前に、冒険者ギルドへ急ぎますか。
アイリがドルトンとやり取りをしてる頃、冒険者ギルドでは、ロドリゲスとギルマスが面会を行っていた。
「‥‥それで、あの冒険者はいかがなされたので?」
「あのアイリとかいう小娘なら、捕らえて地下牢に入れてあるぞ。罪状は不敬罪でよかろう」
「左様で御座いますか」
貴族相手に無礼をはたらく平民は居るが、そんなにホイホイと不敬罪にされては、民衆が怯えてしまう。
ギルマスとしては苦言を呈したいところだが、口には出さずに話を続ける。
「それで、あの小娘の仲間達に伝えようと思ってな。どう責任を取るつもりか‥とな」
「それを伝えるためだけに、ロドリゲス様が直々に動かれたので?」
「その方が事の重大さが理解出来る。という物だろう?」
ロドリゲスとしては、目的のためなら手段を選ばないつもりだ。
そしてその目的とは、ズバリ言えばアンジェラである。
街中や冒険者ギルドで見かけた者は、思わず二度見してしまう美しさで、ここ2日間は評判になってるのだが、当の本人は全くの無関心である。
それと同じように、アイリやアイカ、セレンといった仲間達も噂の的なのだが、こちらもこちらで我関せずといった感じである。
「しかし本当にあの小娘は強いのか?正直な話、全く手強さを感じなかったのだが」
「私も直接見た訳ではないのですが、腕だけなら高ランク冒険者に匹敵すると思われます」
「‥そうか。頭の方も良ければ、専属護衛か私兵にしてもよかったのだがな」
本来なら私兵として召し抱えるなど高待遇なのだが、この男に関しては悪評が蔓延してるので、喜ぶ者は少ない。
まさに知らぬは本人ばかりなり、である。
「まぁいい。それより、今後の「‥っと待って‥‥さい」‥ん?」
「何か外が騒がしいようだが?」
「そのようですな。私が確認してきましょう。‥‥まったく、一体何が‥ぬぉ!?‥‥ブフォ!」
丁度バルクレオが扉を開けようとしたタイミングで、向こう側から扉を引かれたので、そのまま前に倒れ込んで床に顔面を直撃させた。
「ギルドマスターとロドリゲスは‥‥おや?‥ギルマスが居らぬではないか」
「アンジェラさん、足下に誰か居ます」
「あら~?このような所でお休みになられては~、風邪を引きますよ~?」
原因を作った本人達がまったく気付いてないのを見て、ロドリゲスと私兵達の中に笑いが込み上げてくるのを、何とか押し留めていた。
「‥‥ぬぐぐ、ええぃ!何なのだお前達は!」
痛みを堪えて立ち上がりつつギルマスが問いただす。
「誰でもよかろう?それよりも、お主とロドリゲスに大事な話がある」
「‥‥ん?私の事を知ってるようだが‥‥お前は誰なのだ?」
ロドリゲスにもギルマスと同じ質問をされたので、一応名乗っておこうかのぅ。
「アイリのパーティメンバーと言えばわかるかの?」
アイリの名が出た瞬間、ロドリゲスの視線が鋭くなったが、それは一瞬だった。
それよりも今はアンジェラをマジマジと見ている。
「ほう。お前がアンジェラという者だな?」
「よく知っておるのぅ。あのチンピラ共から聞いたのかや?」
恐らく間違いないだろうと思いつつも、ロドリゲスに聞き返す。
「‥‥あれでもDランクの冒険者達なのだがな。まさか小娘1人に伸されるとは思わなかった。だが必要なのは武力だけに有らず‥‥」
しかし、アンジェラの質問には答えず、そのまま過去を振り返るように語りだした。
元々ロドリゲスは他人より優れていると思い込んでおり、何故お前は俺よりも劣っているのかという事を言いたがる癖がある。
私兵達の顔も、「また始まったよ」と言いたげだ。
「ふぁぁぁ‥‥まだ終わらないのでしょうか?少々眠いです‥‥」
アイカもこれには耐えきれず、思わずアクビをしてしまう。
それを見てセレンが「子守唄をうたいましょうか~?」等と言い出す始末。
おまけにアンジェラまでも、時間を稼げるならこのままでもいいか‥という結論に達し、結局ロドリゲスが満足するまで話を聞き続けるハメになり、ギルマスのバルクレオは1人頭を抱えたのだった。
ちなみに、セレンの子守唄はアンジェラによって阻止された。
全員が眠ってしまう可能性があったので。
「‥‥という事だ。君達が大人しく言う事を聞けば、アイリの身の安全は保証しよう」
「‥‥えーと、もう喋ってもいいですか?アイリお姉様なら既にアタナのお屋敷から帰還してまよ?」
「‥‥ふざけた事を。どうやって牢から脱け出すと言うのだ?」
地下牢は特殊な結界を張っており、魔法は発動しないようになっている。
なのでロドリゲスの反応は決して間違いではないのだが、アイリの場合だとそれは当てはまらない。
今のアイリなら、魔法など使わなくとも牢を破壊する事も可能だ。
少々本気を出さなければならないが。
「どうやってかは、本人に聞かないとわかりませんが、少なくともアイリお姉様がここに向かってるので、抜け出したのは間違いないでしょう」
「さっきからいい加減な事ばかり抜かしよって!貴様も不敬罪にするぞ!?」
「それは出来ないわね」
ロドリゲスが声を張り上げた直後、扉が開き、外からアイリとその他大勢の商人達が中へ入って来た。
「お姉様!」
「お待たせみんな。上手く話がついたわ!」
ロドリゲスは入って来た先頭の人を見て驚いた。
まさか本当にアイリ本人が来るとは思ってなかったのだ。
「き、貴様!どうやって脱け出したのだ!?」
「そんた事はどうでもいいわ!これを見なさい。この紙が何か、アンタにはわかるわよね?」
「な!?何故お前が!」
そんな事はあり得ない‥‥と、ロドリゲスは思っただろうが、もう遅い。
不正を行ってた契約書はアイリを通し、ドルトンから商業ギルドのギルドマスターに渡っていたのだ。
そして契約書のサインを見て、サブギルドマスターのサインがしてあるのを確認、その場で問い詰められ不正を認めたのだった。
「よくも私の娘を罠に掛けてくれたな!?我々はラムシートのために尽くしているのに、お前と言う奴は!」
ドルトンの娘もロドリゲスの罠に掛かっていたため、ドルトンの怒りが再燃した。
ドルトンが声を上げたのを皮切りに、次々と他の商人達も叫び出す。
「僕の妻を返せ!」
「俺の娘もだ!」
「私の夫を返して!」
商人達に詰め寄られ、壁際まで追い詰められるロドリゲス。しかし、彼の私兵達は動かなかった。
「お、おおおお前達!何をしている!は、早く助けろ!」
「‥‥それは出来ません」
私兵の1人が拒否した。
いや、1人だけじゃない。
全員がただ成り行きを見守ってるだけだ。
「き、貴様らーっ!雇い主の私を裏切るのか!?」
「我々はラドリゲス様に忠誠を誓っていますが、アナタには誓ってません」
「お、おのれーーーっ!!」
「それからもう1枚有るんだけどね、契約書。何だと思う?バルクレオさん?」
突然呼ばれてビクッ!っとするギルマス。
ロドリゲスはもう開き直ったようで、だからどうしたとでも言いたげである。
「まっ、待ってくれ!私は強制されただけで、私の意思でやったのではない!」
あら?あっさり認めちゃった。
こういう時って、もっと‥こう‥悪あがきするもんじゃない?
まぁ手間が省けて助かるけども。
「き、貴様までも裏切るのかーーっ!?」
「う、うるさい!私だってやりたくなかったのだ!」
ガチャッ!
っと、そこへ扉が開き、新たに冒険者達が入って来た。
「おい、俺のミリィが罠に掛かって借金を抱えたってのは本当か!?」
「私達のベッキーも騙されたって聞いたわ!」
「ぼ、僕の天使ちゃんが捕らわれたと聞いたんだな!」
あぁ、なんかロドリゲスとギルマスで言い合い始めたところに、今度は冒険者達が詰め寄ってったわね。
どうやら捕まってた女性の中には冒険者も居たようだ。
っていうか最後の奴!
アンタ、私の事をマイエンジェルとか言ってた奴じゃない!こっち見んな!
まさに今、部屋の中は混沌としていた。
ロドリゲスとギルマスに詰め寄る商人と冒険者達、さらに我関せずの私兵達と私達。
これ暫く収拾つかないわね‥‥。
結局、この騒ぎは商業ギルドのギルマスと、冒険者ギルドのサブギルドマスターが来て、この場を収めた。
騒ぎは日を跨いで続き、事情説明で私達まで身動きが取れなくなったため、宿に戻った時には朝日がのぼり始めていた。
まさか初めての徹夜がこんな形で経験する事になろうとは‥‥。
徹夜明け
朝日拝んで
アクビ顔
愛漓、心の俳句。
眷族の紹介
名前:セイレーン 眷族名:セレン
今のところ、一番最後の眷族。
のんびりとした性格で歌が得意。
愛漓が用意したテレビを見て、色んな歌を覚えている。
ただし、選曲チョイスがおかしいとの噂もある。




