ギルドマスター
「意気がってる割には弱いわね」
「‥‥いや、この場合、主が強すぎるんじゃと思うがの」
あの汚ならしい存在を叩きのめした直後、ギルド内のあちこちから歓声が上がった。
単純に「あの子スゲー!」から「アイツらザマァ!」な声まで様々だ。
中には「あぁ僕だけのエンジェル!」とか言ってたのもいるけど、そいつの顔は覚えたから、なるべく近寄らないようにしよう‥‥。
「では、こちらの紙に名前と、使用武器や得意魔法等の記入をお願いします」
言われるまま名前や武器を記入してる途中で気付いたけど、私ったら無意識にこの世界の文字で書いてる‥‥。
これは多分スキルの相互言語のおかげね。
「‥‥あ、魔法名とかは書かなくても‥はい、属性のみで大丈夫です‥‥あ、年齢は記入しないで下さい、私に効くので‥‥はい有難う御座います」
どうやら無事終わったみたいね。
これならアンジェラの登録も問題なさそう。
私が説明を聞いてる最中に、他の3人も登録してもらおう。
「こちらがギルドカードになります。登録直後の方は、Gランクからのスタートになります。依頼を受ける際は、2ランク上のものまでしか受けられませんので、最初はEランクまでの依頼の受注までが可能です」
受けられるのは2つ上までかぁ。
ならCランクくらいまで上げといた方が良さそうね。
「ランクの最上位はSランク?」
「昔はSまでだったのですが、魔王様や覇王様、召喚された勇者様等が現れてから、更に上のランクも出現しまして、今はSSSランクまで存在します」
へぇー、トリプルねぇ‥‥。
私はチラリとアンジェラをに視線を向ける。
‥‥アンジェラならトリプルくらいは成れそうね‥‥モンスターランクがSSSだった訳だし。
「依頼は複数受けられる?」
「はい、一度に複数の依頼を受けてから、遠征に出かけるパーティもいらっしゃいます。ですが、依頼失敗が重なると、ランク降格や罰金が発生する可能性もありますので注意して下さい」
成る程、無茶をする奴は上にはいけないわね。
「それから依頼放棄が発覚した場合、冒険者ギルドの信頼を損ねる行為により、ギルド除名の上、衛兵に突き出す事になります」
これも理解出来る。
冒険者ギルドとしても、依頼失敗はキチンと報告を受けないと、対策もとれないし依頼主への釈明も儘ならないといったとこかな。
だから依頼放棄は最悪の行為ね。
「よくわかったわ、有難う」
調度他の3人も登録が終わったみたいなので、早速依頼を受けようかな。
「依頼を受けるのですねお姉様?」
「ついでだし、どんな依頼が有るかも見てみないとね」
さて、依頼書が貼ってある壁側に‥‥。
「これは何があったのかね!?」
む? 上から誰か降りてきたわね‥‥見た感じ、中肉中背の初老の男性だけど、ギルド内の雰囲気的に立場が上の人なのはわかる。
でも一応受付嬢さんに聞いてみよ。
「あの人は?」
「あの方はこの冒険者ギルドのギルドマスターです」
うん、予想通りだった。
「コヤツらは誰がやったんだね?」
ギルドマスターが、さっき私達に絡んできたアホ共を指さして、近くの職員に確認をとってるようだ。
で、その職員から私達の事が伝えられたギルドマスターは、私達を見て疑惑の視線を職員に向けた。
気持ちはとても理解出来るけど、見た目で判断するなんて素人のする事よ。
「あの男共を伸したのは、お前さんだと聞いたのだが間違いないか?」
「はいそうです。向こうが絡んできたので返り討ちにしました」
「はい、お姉様カッコ良かったです!」
アイカには少し静かにしててもらいたいんだけど‥‥
「‥‥詳しく聞かせてくれるかの?」
「詳しく‥‥といっても、私達が受付に並んでたのを、後ろから割り込んできたアイツらに邪魔だとか言われて殴りかかってきたから、返り討ちにしただけです」
「うむ、無駄のない、いい身のこなしだったぞ」
‥‥アンジェラも静かにしてほしい‥‥。
「しかし、ギルド内での暴力沙汰は見逃す事は出来ん。よって、お前さんには何らかの罰則を与えねばならん」
なんだか話がおかしな方向に向いてきたんだけど‥‥。
「暴力を受けた側なのに罰則があるわけ?」
「応報したのは間違いなかろう?」
「でも私は事前にそこの受付嬢に確認したわよ? 冒険者同士のいざこざには関与しないって」
受付嬢とのやりとりを出した途端、不快そうにギルドマスターに睨まれる受付嬢さん。
ちょっと可哀想な気がしてきた。
「そもそもギルド内の暴力は認めないなら、そこの男共はどうなの? 依然から同じ事を繰り返してるみたいだけど?」
「旅は繰り返し~♪ 世も繰り返し~♪」
‥‥セレン、あんたも黙ってなさい‥‥。
「‥‥じ、事実確認が出来なければ罰する事は出来ない」
言い訳くさい事を言い出したわね‥‥。
「目撃者ならこのギルド内にいっぱい居るじゃない、そうよねみんな!?」
「俺はこの子が殴りかかられてるのをみたぞ!」
「それなら私よ、私もみたわ!」
「そうだそうだ!アイリちゃんは悪くない!」
よし、アイツらかなり嫌われてたみたいだから、みんな賛同してくれたわ。
そして最後の奴、名前知ってるって事は、あんた私のギルドカード覗いたわね!?
「‥‥コホン、だがしかし、基本冒険者ギルドは冒険者同士のいざこざには関与しない」
はい? コイツは何を言ってるの? さっきと言ってる事が逆じゃない!
‥‥っと、少し落ち着かないといけないわね、冷静に冷静に。
「ねぇ、さっきと言ってる事が違うんだけど、どういう事なの?」
「そうじゃの。まるでこの男共には手を出してはならないかのようじゃな」
「‥そ、そんな事はない。先程も言ったように、冒険者同士のいざこざには関与しない」
誤魔化しかたが下手くそだけど、何か裏が有るのは間違いなさそうね。
「だったら私とこの男共が何しようと、あんたには関係ないわね!?」
「う、うむ。そういう事になる‥‥」
とりあえず私達への罰則はなしになった。
当然よね? 私達が絡まれた側なんだから。
何かスッキリしないけど、今回は仕方ない。
この街に居る間、ギルマスとチンピラ共の情報収集を優先しましょう。
『セレンは酒場でアイツらの情報を集めて。アンジェラはセレンの護衛をお願い』
『わかりました~♪』
『承知じゃ』
多分セレンだけでも大丈夫だろつけど、念のためアンジェラに見ててもらいましょう。
『アイカは私と依頼選別よ』
『はいお姉様』
何か面白そうな依頼でもないかしらね。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
結局、特に面白そうな依頼は無かったので、冒険者ギルドの隣にある宿屋で、セレンとアンジェラが戻るのを待つことにした。
宿屋に居る事は2人に念話で伝えてある。
「それにしても許せませんね。あれがギルドのトップとか信じられません!」
「同感ね。何か弱みを握られてるか、元々親しい間柄なのか、何れにしても、今後の冒険者として活動する上で妨げになりそうだから、取り除くまでよ」
ところで‥‥。
「アイカ、今、後ろに隠した物は何?」
「ななななな何の事でしょう?」
そもそも思いっきり私の前で出してたじゃない。
残念ながら、チラッとしか見えなかったけど、あの大きさだと恐らく‥‥。
「今アイカが後ろに隠してるプリンの事よ」
「違います! 後ろにあるのはハーゲ〇ダッツです! ‥‥あ‥‥」
違った! というか、予想よりランクアップしてるじゃないの!
全くもう、最近スマホの使用履歴がおかしいとおもったら、夜中に勝手に入手してたわね、DP使用して。
しかもハーゲ〇ダッツってDP100も消費するのよ。
カツ丼よりも高いのよ!
「申し訳ありませんお姉様。(ハーゲ〇ダッツが)あまりにも魅力的だったもので‥‥つい」
コヤツ、舌が肥えてきておる‥‥。
しょうがないわね‥‥ホントにもう。
まぁアイカのお陰で多少は気が紛れたから、今回は良しとしとこう。
「勝手に使うなとは言わないから、今度からキチンと報告する事」
「有難う御座います、お姉様!」
見てたら私も食べたくなったから、後で召喚しよう。
『主よ、情報収集完了したぞよ』
おっと、アンジェラからの念話だ。
『早いわね、どうだった?』
『うむ。ギルマスに関してはそれほど集まらんかったが、チンピラ共については予想以上じゃった』
うーん、ギルマスの方は仕方ないから、進展するまで暫く放置ね。
『でも~、一応少しは集まりましたよ~♪』
『うんうん、何にせよご苦労様。2人が帰ってきたら一緒に晩御飯にしましょう』
『そう言われるとわ腹が減ったのぅ』
『はい~♪ 直ぐに戻ります~♪』
さて、まずはチンピラ共ね。
一体どんな情報があったのやら‥‥。
その日の夜、食後のデザートに舌鼓をうちながら、今後の作戦を思案するアイリであった。
眷族の紹介
名前:バハムート:眷族名:アンジェラ
愛漓の眷族第1号。
SSSランクという驚異的な存在で、最初にランダムで召喚された者の一つ。
人よりも長寿のため、遥か昔の歴史も知っていたりする。
強さに関しては説明もいるまい‥‥。




