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五章《招かれざる道化師》

 絆を追いかけた私は次のフロアに上がった。

 そこはさっきまで私たちがいたフロアとは雰囲気が全く違っていた。それまでは塔をイメージしたような作りだったのに、そこはテレビの砂嵐でも映してるような感じだった。私の前には絆ともう一人、性別はわからないが青に白のストライプのシルクハット、それに合わせた衣装を来てピエロの仮面をつけた人が宙を浮いていた。

 「ようこそお嬢さんにお坊ちゃん。よくここまでたどり着きましたねぇ」

 いきなりチャット欄に書き込まれる文章。文字は……虹色?こんなチャットの色は今まで見たこともなかった。

 チャットが書き込まれると絆はこちらを振り返った。

 「お前は!?なぜここに来た!」

 「えっと、君を見かけたからじゃ……ダメかな?」

 私は絆に問いかけるようにメッセージを打った。

 「たわけ!いい訳ないだろうが!俺のそばから離れるんじゃねぇぞ!」

 そう言った絆は虹色の文章を発信した主に踵を返した。

 「おや、お仲間じゃないのかな?ふむ。片方は二日目程度のプレイヤーか、それは残念。とりあえず自己紹介とこの部屋のルールを教えるね。ボクの名前はレインボウ、君たちは逃げるウサギに僕はそれを追う狼さ。そしてこの部屋に逃げ道はないよ。そしてボクにやられたらパソコンにウイルスを送るから安心して、ハハハ」

 レインボウは私たちよりはるか上空で月の形をしたオブジェクトに座りながら愉快そうに説明してる。

 「黙れ!貴様のような奴、俺が切り殺してやる!」

 絆がそう打った次の瞬間、絆の刀はレインボウに向かって薙いでいた。が、月のオブジェクトが真っ二つになっただけだった。

 「おー、怖いねぇ。けどその速さじゃ、ボクには到底太刀打ちできないよ。刀だけにってね」

 レインボウは絆の後ろに浮きながら笑っていた。

 「ゲームオーバー、さようならサムライガール。ハングドマンニードル!」

 その次の瞬間無数の巨大なトゲが絆の周囲に発生していた。

 「シールドフォース!」

 気づいたら私は結界魔法を使っていた。絆を串刺しにしようとしたトゲは結界にはじき返され落ちていった。

 「ほう、面白いねぇ。しかしプリーストは厄介だねぇ。ならば先に君から逝ってみようか、そうしようか。」

こちらを見下ろしたレインボウはほくそ笑むように杖を振りかざそうとした。

 「貴様の相手は俺だあああ!」

 絆はレインボウに向け一閃、これは確実に入った。


 「甘ちゃんだねぇ、この切っ先は相変わらず甘ちゃんの切っ先だよ、フフ」

 首が切れたと思ったレインボウは空気のように消え去り、気づけば私の前に立っていた。

 「つっ!?」

 私はレインボウから距離を取り落ちてきた絆を庇うように構えた。


 「お前……」

 絆は驚きを隠せないようにこちらを見てくる。

 「絆さん。うまくいくかわからないですけど、私が動いたらあいつに攻撃してください。多分、これがだめならかなりきついです。」

 絆は私の思いを汲み取ったのか小さくうなずいてくれた。


 「いいですねぇ、弱者の傷の舐め合い。見れば見るほど虫唾が走って仕方がないので、これで終わりにして差し上げましょう。我が二十二の神器が一つ、デスサイスを振るってあげましょう」

そういうとレインボウは闇の空間から体三つ分はあるであろう大きな鎌を取り出した。

 「グッバイ、ラビッツちゃん」

 「シャイニング!」

 「奥義、桜花一閃!」

 三人が必殺技を使った瞬間画面がものすごく重くなりフリーズしたかのように見えた。

 現実の時間にしては十秒もないくらいだったが俺の中では十分はあるだろう長い時間、ゆっくり処理されるゲームの画面はふと見慣れた塔のフロアに戻っていった。


 「……ここは?」

 「……無事戻ってこれたみたいだ。」

 二人とも安否を確認したが特に異常もなく、キャラクターはそれまでのように動いた。

 「はぁ、戻ってこれたんですね。よかったー」

 安堵のため息をつく私に絆は手を差し伸べる。

 「お前、なかなかやるな。助かったよ」

 あれだけ険しい顔してばっかだった絆のはにかんだ顔は好感を覚えた。

 「いえ、あの感じチート使ってゲームに無理やり負荷を与えてる感じがしたので、そこを刺激すれば逃げられるかなと思って。」

 私も笑顔で答え、差し伸べられた絆の手を握り返した。

 すると後ろの階段から人が入ってきた。桜花に海人だ、それに加えてあと一人。

 「レイちゃん!大丈夫!?」

 海人は嬉しそうに私へ抱き着いてきた。と思ったら後ろの桜花に槍で攻撃されていた。

 「お前はそういうのやめろと言ってるだろうが。レイちゃん、無事でよかった。席に戻ったら次のフロアに行くって君の書き込みを見て海人と話したらGMとちょうど会ったんだ。そしたらこの塔に異常な高負荷がかけられているって話で心配で見に来たんだが、無事でよかったよ。次こんな無茶したら怒るからね」

 「ごめんなさい、次からは皆にちゃんと言います……」

 ギルドの人達と話をしていたら割るようにもう一人の男性が話しかけてきた。

 見た感じは燕尾服に包まれすごくニコニコしているけれど、その目の奥には冷血さすら覚えるような張り詰めた感じがした。

 「お話のところ失礼します、私GMのタカスギと申します。先ほどの負荷についてお聞きしたいのですがお時間よろしいでしょうか?」

 「あ、はい。絆さんもいいですか?」

 「構わない」

 気づいたら絆は今までの強面になっていた。


 町に戻った私たちはGMに今までのいきさつを話した。しかし今日初対面の私も、追いかけていた絆も特段詳しいことは知らないという感じでGMは肩を落としているのが見て取れた。

 「それではご協力ありがとうございました。さっきも話しましたが、くれぐれも変な挙動をしているプレイヤーがいたら追いかけずに我々運営にご報告くれると幸いです」

 GMは優しくも厳しめに注意だけ残して私たちから去っていった。

 「さて、私たちも酒場に戻るとするか。絆君、君はどうするんだい?」

 それまでずっと悩んでいる感じだった絆は重い口を開けた。

 「……俺も百花繚乱に入っていいですか?」

 私は嬉しく、海人は少し嫌そうに、桜花は静かに頷いた。

 「わかった、君も思うことがあるのだろう。入隊を許可する、しかしさっきレイちゃんにも言ったが極力危険なことへの単独行動はしないこと。いいね?」

 「わかってます。桜花さん」

 「ふふ、これからギルドも面白くなりそうだな。ようこそ絆君、百花繚乱へ!」


 ふとチャット欄に水色の文字が流れてきた、個別チャットだ。

 「勘違いするなよ、レインボウはまた君を追ってくる。そしたら奴を倒すのが私なだけだ。」

 絆からのメッセージだ。不愛想な感じは否めないけど、それでも守ってくれるような発言に俺は少しうれしくなり肯定のチャットを飛ばそうとした、が俺の顔は一瞬に青くなっていった。

 「あと、君は男の子でしょ?それなら後でここにおいで」

 そう言って飛んできたリンク、思わず宛先を確認したが……これも絆からのものだった。


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