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四章《百花繚乱》

 家に帰った俺はLHOを起動させた。

 まずはキャラクターのレベルを上げて上位職にすることが目標だ。とはいえ俺の職業は僧侶、戦士のような戦い方はできないので同じレベル帯の冒険者でも探すとするか。

 そう思いながら冒険者の集う酒場に入ろうとしたら、声をかけられた。


 「あ、レイちゃん。今から狩りに行くの?それなら俺らと一緒に行こうよ!」

 海人だ。それに隣にもう一人女性の重騎士がいる。

 「えっと、お誘いはうれしいのですがそちらの方は」

 「あぁ、こちらは」

 「先日はウチの海人が迷惑をかけてしまったようだね。私は百花繚乱のマスターの桜花だ。以後お見知りおきを」

 海人が次の文章を打ち込む前に重騎士が話しかけてきてくれた。桜花と名乗る彼女はピンクに桜のディテールが施された鎧を身にまとい二メートルはあるであろう巨大な盾に槍を携えていた。

 私はお辞儀の動作を行いながら桜花に挨拶をした。

 「あなたがギルドマスターでしたか。私はレイ、僧侶をやってます」

 「レイちゃんだね、海人から聞いてるよ。この子は女性アバターの子を見かけてはすぐに声をかけるんだ。それまでは低職でもなんとかなるフィールドだったが、見極めの塔は最低でも上級職に転職してからだと教えたのを忘れたらしくてね。ここに来る前に私がしっかり仕置きは施したので許してやってくれ」

 見極めの塔は私と海人が昨日行ったダンジョンだった。にしても桜花さん、厳しそうだけど落ち着いているしいい人そうだな。

 「姐さんってばこっちはPKされてるのにひたすら蘇生アイテム使っては殺すんだ。なかなか目覚めるものがあったぜ」

 「お前は黙ってろ、でなければグングニルの餌食にするぞ。でだ、お詫びを兼ねて私も一緒に狩りに参加させてもらってもいいかい?」

 「えぇ、こちらこそよろしくお願いしますね。それでご迷惑でなければ、私を百花繚乱に加えていただけないですか?」

 俺の申し出を聞いた桜花は少し驚いたのか少し間をおいてから話してきた。

 「私のギルドは主に雑談だしいいのかい?どうせ海人に誘われたのだろう?別に無理して入る必要はないのだよ」

 「大丈夫ですよ、私もほかの方とプレイできるの楽しいですし。それに海人さんに変な事されそうになったらすぐ助けを呼べますし(笑)」

 そう言うと桜花は嬉しそうに、かつおしとやかに答えた

 「なるほど、それではようこそレイちゃん、百花繚乱へ!」

 「よっしゃー。レイちゃん、これからもよろしくな!」

 ついでに海人も参加を祝福してくれた。これには一応喜んでおくか。


 それから三人でレベルを上げ、海人はブレイバー、私はプリーストとお互い上級職に転職できた。

 桜花からの提案で私たちは再度見極めの塔へ行くことになった。


 「ひゃー、懐かしいっすねー。一日ぶりっすけど」

 「私は片手空いてますので、松明を使いますね」

 相変わらず浮かれている海人を尻目に私は松明に火を灯した。

 「ありがとう、レイちゃん。さて、この塔は迷路のような作りだからな。なるべく固まって動こう」

 桜花はそう言って先頭を切って歩いてくれた。

 「じゃあ俺は後ろにつきますよ。レイちゃん、背中は俺に任せな!」

 「あはは……よろしくお願いしますね」

 「アホは放っといてもいいよレイちゃん。二人とも、上級職とは言えあまり無理はするなよ」

 「はい!」

 「おうよ!」


 そうして一時間が経ったころだろうか、私達は塔の十階にいるモンスターを掃討して休憩していた。

 「皆だいぶレベルも上がったな。そろそろ他のギルドメンバーがログインしてくる頃だし、私たちも一度町に戻ろうか」

 「賛成っす、さすがにこれだけレベリングすれば今度のイベントも何とかなりますよ!」

 「桜花さんって本当にお強いですね、ありがとうございます」

 「そんなに褒められると照れてしまうな、こちらこそありがとう」

 「本当に姉さんがいるだけで全然ダメージ食らわなかったもんな。感謝感謝だぜ。あ、二人とも悪いんだけど、俺飲み物とってきていいかい?」

 「うむ、行ってらっしゃい。私も取ってこようかな。レイちゃんも取ってきたらどうだい?帰ってきたらチャットを入れるよ」

 「わかりました、それでは行ってきますね」

 俺はそう言って飲み物を取りに行こうとした。さすがに一時間もゲームやると疲れるし喉が渇くな……ジュースでも取ってくるか。

 席を立とうとした瞬間二人の影が画面の中の俺たちを横切って行った。

 横切ることは別に珍しいわけではない。見極めの塔は現在のバージョンでも七十はある、かなり高いダンジョンだ。レベルを上げるならもっと高い階に行くのは普通なことだ。

 しかし俺は一人の名前に見覚えがあった。

 「絆だ……」

 気づいた俺はチャットにテキストを打ち込み絆を追いかけた……

ブレイバー:戦士の上位職。キャラの背丈ほどある両手剣は、切るというよりも相手を叩き潰すような攻撃力を秘めている。ブレイバーは困った人を助けるべくその巨大な刀身を振り回す。

プリースト:僧侶の上位職。体力を回復するというよりも補助治癒魔法に長けた職業。プリーストの加護は魔法障壁を生み、冒険者を守るだろう。

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