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第九話 婚約者の友人②
「宇宙のヤツ、何してんだかな。」
私の沈黙を別の意味にとった木霊さんが少し怒ったように言う。
「さっさと起きないとオレが満月ちゃん取っちゃうぞぉ~。」
対外的には宇宙は、集中治療室にいて面会謝絶、ということになっている。
木霊さんはもちろん、私も会わせてもらえていない。
宇宙、今どこにいるんだろ…
「大丈夫だよ。アイツ、丈夫だから。高校の時、部活の全員がインフルエンザにかかってもアイツだけは元気だったし、バーベキューでみんなが腹下した時もアイツだけは元気に次の日に朝飯食ってたし。みかけ弱っちいくせして、実は一番根性あるし。」
黙り続ける私を励ますように木霊さんがおどけて言った。
「ありがとうございます。」
これ以上、心配をかけるわけにはいかない。
私は木霊さんにお礼を言った。
「宇宙は満月ちゃんを置いていくようなことは絶対しないよ。だから元気だしなね。」
木霊さんはそう言うと、またね~と帰っていった。