第八話 婚約者の友人①
「こんにちはぁ…」
病室のドアをそ~っと開けて、中を窺うようにそ~っと声をかけて、木霊さんがお見舞いにきてくれた。
木霊さんは宇宙のお友だちで、こんなことになる前は、木霊さんの彼女と四人でよく遊びにいった。
…といっても、木霊さんの彼女はいつも違う人だったけど…
真面目な人なのに、そこだけはだらしないんだよねぇ、ってよく宇宙と陰で嘆いていたものだ(笑)
「寝てますかぁ…ダメなときですかぁ…出直しましょうかぁ…」
しまった。ぼんやりしちゃった。
「大丈夫ですよ~」
一度、診察中にいきおいよく病室に入ってきて、コントばりに気まずい思いをして以来、木霊さんは病室に入る前にそ~っと声をかけてくる。
ノックでいいような気がするんだけど…っていうか、ドア開けちゃってる時点で意味ないって指摘したら、目をつぶって開けているから大丈夫と言われた。
なんかずれてるんだよねぇ。
「満月ちゃん、相変わらずかわいいねぇ~」
「はいはい、ありがとうございます。」
「…つ、つれない…」
木霊さんがガックリと項垂れる。
いや、アナタ会うたびに言ってるでしょ。挨拶じゃん、ソレ。
「まぁ、いいや。来週には退院できるんだって?お母さんに聞いたよ。よかったね。」
「はい…」
そう、私は来週には退院する。
返事は決まってる。
…でも、お母さん、また泣くよねぇ…それだけが申し訳なくて気が重い…