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第七話 最後の条件は私③
「やっぱりそう言うのね…」
ぽつりと言うとお母さんは寂しそうに微笑んだ。
「満月、お母さんね、あなたには幸せになって欲しいの。宇宙くんは本当にいい子よ。それはわかっている。」
「…でも、でもね。…この先、普通ならしなくていい苦労をたくさんすることになるわ。わざわざ…」
「ううん…わかってはいたの。話せばあなたは必ず宇宙くんが帰ってくることを望むって。それに、何が普通で、何が幸せか、なんて、本人しかわからないのにね。でもね…」
お母さんは私の手を握ったまま静かに泣いていた。
「お母さん…」
その姿に私も言葉に詰まる。
「お母さん…ありがとう…でも…」
でも私は宇宙にあいたい。
もう一度あえるなら何だってしたい。
「わかってる…でも…でも、今、答えをださないで。」
お母さんは私の言葉を遮って、私の手を強く握った。
「あなた自身、まだすぐには退院できないわ。それまでにもう一度よく考えてみて。退院するときにあなたの気持ちをもう一度きかせて。」
「うん。」
その日は、それ以上、宇宙の話はしなかった。