第五話 最後の条件は私①
クローン
私のおばあちゃんが子どもの頃、ヒトは初めて自らの手で生き物を創り出すことに成功したそうだ。
それから数十年、クローン技術は確実に進歩し、それは割と身近な技術になっていた。
高校まではかろうじて理系だった私も授業でクローン細胞の実験があった。
ただ、生き物をまるごと創るのは世界的に禁止されている。
正確に言うと植物は別だけど、でも植物でも技術的にこれはダメとか細かくいろいろ決まっているはず。
おばあちゃんの頃には羊だか猿だかを創り出してしまったそうだから、技術的には当時でもできたらしい。
でも、普通に考えて、まるごと創り出してしまったらどちらが本物?とか、いろいろ問題がでてきそうだし、ましてヒトを創り出してしまった日にはえらいことになってしまう。
なんてことは偉い人たちもすぐに気づいたらしく、世界的に規制されることになった。
…って、ここまでが私が今までにならった知識。
現代では小学生で習うくらいポピュラーな話だ。
でも、お母さんの話はその常識をひっくり返すような話だった。
『宇宙を生き返らせることができる』
正確に言うと、クローン技術を使って宇宙の体を創り、そこに宇宙の脳を移植する。
普通なら絶対にできないはずのことが、いくつかの条件が重なることで可能となる。
それは本当にごくごく僅かの確率で、数字にすれば0が果てしなく続くもので…
そして、その最後の条件が私だった。