第四話 病室のベッドで②
「宇宙のお葬式は…?」
その事に思い至るのに何日かかっただろう。更に言葉にできるまで数日かかった。
認めたくない、嘘だ、ウソだ、うそだ…何度思ったか。宇宙を返してくれるなら、私は何だってできると思った。よくある魂と引き換えに…なんて話、目の前でされたら余裕で交換していた。誰かの命と交換って言われたってもしかしたら…
でも、そんな話、物語の世界だけだ。現実はそんなことは起きない。宇宙は私を置いていってしまった。そして、帰ってはこない。
せめて、最後のお別れを…そう思ってやっと、お葬式に思い至ったのだ。
「あのね…」
お母さんの表情が曇る。
わかっている。あの事故からもうずいぶん時間が経っている。お葬式は多分終わってしまっているのだ。
お別れすら、きちんとできなかった…
「…あのね、満月…あなたに黙っていたことがあるの。」
それだけ言うとお母さんは黙りこんでしまった。
「お母さん…?」
私が先をうながすとお母さんはそっと私の手を握りしめてうつむいた。
「…お母さん…?」
一体何を隠しているの?私がもう一度声をかけると、私の手を握ったままでお母さんが顔をあげた。
「満月、約束して。落ち着いて、きちんと話を最後まで聞いて欲しいの。…それがどんな内容だとしても。…お願いよ。落ち着いて、本当に落ち着いて最後まで聞いて。約束してくれる?」
「お母さん、一体何な…」
「お願い。約束して。」
お母さんのあまりの真剣さに私は思わずうなずいた。
「……あのね…」
重苦しい沈黙の後、お母さんから語られた言葉は予想だにしないものだった。
今でもわからない。
あのとき私に微笑んだのは天使だったのか、悪魔だったのか。