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第二十九話 明かされた真実②

***side 宇宙***

 アナタハ、クローンデス

目の前の二人の口から告げられた言葉の意味が分からなかった。


「驚いているところ申し訳ありませんが、クローンに関する注意事項などを説明させていただきます」

藤と名乗った男はそんな俺を無視して淡々と言葉を紡いでいく。

お前の方がクローンなんじゃないのかっていうくらい無表情で。

……っていうか、クローンってなんだよ。SFじゃあるまいし。なんの冗談だよ。


宇宙そら、ごめんね。びっくりしているよね」

満月みつきが心配そうな顔で俺を見つめている。

悪いのは満月じゃない。子どもができたなんて満月は一言も言わなかった。

俺が勝手に勘違いしただけだ。

……でも、ごめん。今はその心配そうな顔が無性に気に障る。


「満月、少し席を外してくれないか」

出来るだけ穏やかに言おうをしたのに俺の口から零れた声は驚くほど冷たかった。

サッと満月の顔に怯えの色が広がり、直後に立ち上がり叫びだした。

「嫌だ! 嫌!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて」

「もう離れない! 嫌だ! もう置いていかないで!」

急にパニックを起こして俺にしがみつく満月を慌てて受け止める。

満月の異常なまでの取り乱し方を見て、俺は納得がいってしまった。


「……本当、なんだね」

満月を抱きしめたまま尋ねると満月の肩がびくりと震えた。

返事はないけれど、返事がないことが全てを肯定していた。

「マジかぁ」

空を仰ぐ。


 俺、クローンなのかよ。


「満月、落ち着いて聞いて」

俺にしがみついたままの満月に今度こそ穏やかな声で話かける。

「俺、この藤さんって人と二人で話をしたいんだ」

俺の言葉にバッと満月が顔を上げて声をあげようとする。

「大丈夫。どこにも行かない。部屋の外で待っていて」

しがみついたまま満月が下を向く。

「大丈夫。少しの間だけだから」

満月は返事をしてくれない。

「必ず戻るから、ね」

俺にしがみつく満月の手から少しずつ力が抜ける。

「ありがとう」


 俯いたままの満月を部屋の外のベンチに座らせて、俺は部屋に戻った。

「……ごめんなさい」

部屋に向かう俺に満月が掠れた小さな声で呟いた。

その声になんて答えていいかわからなかった。


「さぁ、教えてください」

部屋に戻ると藤と名乗る男に向き合い、俺は席についた。


 クローンとは何か。

何で俺がクローンとして蘇ったのか。

クローンとして生きていくということがどういうことなのか。


 藤さんの話を聞き、差し出されたいくつかの書類にサインをしていく中で、俺は退院してからの違和感に説明がついていくのを感じた。

なんで満月があんなに何度も俺の体調を気にしたのか。

なんであんなにいつも不安そうだったのか。

満月と喧嘩し実家に帰った俺に両親がなぜ帰るように言ったのか。


「俺は誰なんでしょうか」

書類を片付けていた藤さんの手が止まった。

「あなたは宇宙様です。満月様の婚約者の」

「俺は宇宙なんでしょうか? だとしたら死んだのは誰だったんでしょうか?」

「宇宙様」

初めて藤さんの顔に表情らしい顔が浮かぶ。戸惑いの表情が。


「なんて考えても仕方ないんですよね。俺は生きていて、満月は俺を必要としている。それが現実だ」

「宇宙様、満月様はあなたのことを思っています。クローンを創るということは生半可な覚悟でできることではありません」

そう言って藤さんは俺をじっと見つめた。


「わかってますよ」

でも、宇宙クローンの命は満月ゴシュジンサマの意思一つでどうとでもなるんだろ?

満月が間違っていたとも、満月の気持ちを疑うつもりも、俺にはなかった。

ただ、俺と満月の関係は変わってしまった。


俺は誰なのか? これからどうしたらいいのか?


どちらもわからないまま俺は部屋を出て満月を迎えにいった。

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