第二十八話 明かされた真実①
「一緒に来て欲しいところがあるの」
「ん? どうしたの?」
夕ごはんの席で宇宙に切り出すと、案の定、理由を聞かれた。
「何も聞かないで予定だけ空けておいて欲しいの。お願い」
「……わかった。空けておく」
同意書のことも言っておかないといけないとわかってはいたけれど、クローンの話をせずに上手く説明する方法が思いつかなくて、結局、何の説明もせずに無理矢理予定を空けさせることしかできなかった。
「もしかして病院?」
当日、施設に向かう途中で行先に気付いた宇宙が声をあげた。
「……うん」
「……」
うなずく私を見て宇宙が黙り込み、その顔に困惑の色が広がってきた。
「宇宙、あのね」
「満月!」
「えっ?」
私の言葉を遮り、いきなり宇宙が私を抱きしめた。
道路の真ん中で。
「ちょっと、宇宙、どうしたの?」
突然のことに驚く私に宇宙は満面の笑顔を見せた。
そこにさっきまでの困惑の表情は全くない。
「ちょっとじゃないよ! 嬉しい! ありがとう!」
「えっ? 待って」
「さぁ、早く行こう! あっ、でも慎重に! カバンも俺が持つから!」
そう言って、宇宙は右手に私のカバン、左手で私の手を握り、施設に向かって意気揚々と歩きだした。
施設につき、この前と同じような部屋に通されてからも宇宙はずっとそわそわしていた。
「あのさ……」
宇宙の様子に私は不安になって思わず声を掛けかけたのだけど。
「失礼します」
私が次の言葉を告げる前に部屋に藤さんが現れてしまった。
「先生! よろしくお願いします!」
「えっ?」
席を立って深々と頭を下げる宇宙に藤さんは怪訝そうな顔をした。
「あの、ちょっと順番は逆になっちゃってますけど、俺たちこれから結婚する予定ですし、もちろん、子どもは二人でしっかり育てていくつもりですから」
「えぇ!」
続いた宇宙の言葉に私は驚きの声をあげ、青ざめた。
宇宙がそんな誤解をしていたなんて。
「満月様、宇宙様にご説明は?」
宇宙の言葉に藤さんが険しい顔で私を見つめた。
「いえ……」
私の返事に藤さんの眉間の皺が深くなっていく。
「あの~?」
そんな私たちを見て宇宙も怪訝そうに声をあげた。
「満月様は妊娠してはおりません。本日のお話は宇宙様についてのことです。」
「えっ?」
驚いた顔で私を見つめる宇宙に私もうなずいた。
「えっ、嘘……」
宇宙は力が抜けたように椅子に沈み込んだ。
「驚いているところ申し訳ございませんが、本日これからお話することは非常に機密性の高いお話です。事前にこちらの同意書にサインをお願いいたします」
驚く宇宙とは正反対に藤さんは淡々と話を進めていく。
「えっ、ちょっと待って。同意書って何ですか? 俺のことって?」
「申し訳ございませんが、同意書にサインいただかないと何もお話しはできません。このままお帰りになるか、サインされるかのどちらかになりますが、どうされますか?」
まさに取り付く島のないといった様子の藤さんと、青ざめた私を交互に見つめた後、宇宙は軽くため息をついた後、同意書にサインをした。
「こんな状態で何も聞かずに帰るとか無理でしょ。はい、これでいいですか」
「結構です。では、満月様からお話されますか? 私からお話することも可能ですが」
同意書のサインを確認して頷くと藤さんは私を見つめた。
「……私から話します」
「わかりました。では、どうぞ」
私の返事に藤さんは書類をしまい、私たちを見つめた。
「宇宙、ごめんなさい。誤解させるつもりはなかったの。今日、ここに連れてきた理由だけど……」
「嘘だろ」
私の言葉からどれだけの時間が過ぎただろう。
宇宙からうめき声のような一言が漏れた。
「なぁ、嘘だろ?」
今度ははっきりと。宇宙が私を見つめて言った。
「事実です。」
そんな宇宙に無情にも藤さんが告げる。
「宇宙様、貴方はクローンです。オリジナルの宇宙様はすでに交通事故で亡くなられています」




