第二十話 いけなかった夏祭りをもう一度①
「何かいいことあった?」
「えっ、なんで?」
「えっ、大丈夫?ごめん。特に理由はないんだけど、なんか最近機嫌よさそうだったから。」
夕ごはんの時になんとなく聞いたら、宇宙がいきなり咳き込むから私もびっくりする。
木霊さんの話を聞いたせいか、宇宙がなんだか落ち込んでいるように見えたんだけど、少し前からなんだか元気になったような気がしたから聞いただけだったんだけど。
それに定時に帰れることを利用して最近は勉強も始めたって言っていたし、前向きになれているようで何よりだと思っていたところだった。
「そ、そう?別になにもないけど。」
「そっか。」
まぁ、こういうことって意外と本人は気が付かないものなのかもね。
「ところでさ…ちょっと相談したいことがあるんだけど…」
私はしばらく前からずっと考えていたことを切り出す。
「ん?どうしたの?」
宇宙が不思議そうに私を見て首を傾げる。
「嫌なら言ってくれて構わないんだけど…」
「うん?なんかあった?」
「あったというか、あるというか…」
そう言うと私は席を立ち、鞄の中から一枚のチラシを取り出す。
「これ…なんだけどさ…」
席に戻り、宇宙におずおずとそのチラシを差し出す。
「これって…」
チラシを見た瞬間、宇宙が息をのむ。
「だよね?嫌だよね?ごめん!忘れて!!」
私は慌てて宇宙の手からチラシを取り上げようとする。
「いや、行こうよ。…うん。約束したもんな。」
そういって宇宙は穏やかにほほ笑んだ。
「いいの?」
私は宇宙の様子を窺うように見つめる。
「もちろん。満月の浴衣姿観たいしね。髪もまとめ髪っていうの?うなじ出るやつにしてよ。」
茶化すようにいう宇宙に私は思わず吹き出す。
「やだ!おっさんぽい!…宇宙も浴衣用意して2人で一緒に着ようね。」
はしゃぐように言う私に宇宙は、男が着てもなぁ、なんて言って苦笑いしていた。
私が宇宙に渡したのは夏祭りのチラシだ。
そう、事故のあったあの日に行こうと約束した夏祭り。
嫌がるかもと思って随分悩んだんだけれど、宇宙も行こうといってくれたし、言ってよかった。
あの日できなかった約束を果たすことで、先に進めるような気がして行きたいと思ったのだ。
***side宇宙***
チラシを持ってはしゃぐ満月を見て、モヤッとした感情が広がる。
あの日の約束を叶えることで先に進もうとしているのはわかる。
わかるのだけど、でも逆にいつまでたってもあの事故から抜け出せないような息の詰まる思いがした。
満月にも紅花のことは言えずにいた。
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