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第十九話 紅花との出会い②

***続:side宇宙***


「あの…先日はありがとうございました。」

いつも行く書店で先日の店員さんを見つけて、何も言わないのもどうかと思い、先日のお礼を言った。

「えっ?…あぁ。いえ、どういたしまして。」

一瞬、何のことだ?という顔をされたが思い出してくれたらしい。

…が、相変わらずの無表情で会話は続かない。

自分もとりあえずお礼を言っておきたかっただけなので、その場を去ろうとしたのだが…

「最近、いつもいらしてますね。お仕事ですか?」

予想外に彼女から声をかけられてびっくりしてしまう。

「あっ、いや。仕事が定時で終わる部署に変わったので少し勉強しようかと…」

「そうなんですか。」

その日はそれきり。

特に会話が弾むこともなく、彼女は仕事に戻り、自分はいつもの場所に陣取って勉強を始めた。


その後も特に彼女と何があるわけでもなく。

ただ、目があえば一言二言交わすような日々が続いた。


一言二言のうちに彼女の名前が紅花べにばなということを知り、自分の名前を伝え、

紅花が満月みつきの2つ下であることを知り、自分の年齢に驚かれ、その時のちょっと驚いた紅花の年相応の表情が微笑ましかった。


紅花が将来は自分の本屋さんを持ちたいことを知り、小さくていいから自分で選んだ本を並べたいこと、そのためにまとまった休みが取れた時は国内外の書店巡りをして本を集めていることを知り、若いのに偉いなぁと感心した。

そして、自分が今は内勤業務だけど以前は営業にいて、いつか戻りたくて勉強していることを話した。


そして、ある日、初めて自分からあの事故の被害者であることを話した。

「それは…」

言葉を失う紅花を見て、しまったと思った。

冗談にしてしまおうと思ったその瞬間。

「その事故について私はニュースで流れていた程度の知識しかないけれど、確か亡くなった方もいましたよね。」

紅花はそう言った後、

「その方たちに対してすごくひどいことを言うようだけど、宇宙そらさんが無事でよかった。」

そう言った時の紅花の表情がひどく優しくて…

その顔を見た時、なぜか泣きたくなったけれど、なんでだかはわからなかった。


その後も書店に行く度に紅花とたくさんの話をした。

他愛のない日々の話から、将来の夢まで。


でも、満月のことはまだ話せていない。

話す機会がなかっただけで、聞かれればいつでも話すつもりはあった。

でも、機会がなくて結局話せないままでいる。

***********

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