子狐神祇官、最初の冒険
ルートガイア・プロジェクト 第一回東京回。
その中のCR5卓のオープニングから。
うつら、うつらとひなたぼっこ。
〈冒険斡旋所〉のある大広場は今日も人の出入りが多い。
ぼんやりと、日向の石に腰掛けて何を思うでもなく窓口の方を見ながらぽかぽかと。
窓口の前には何回も来た。けど、未だに一回もここで依頼を受けたことはない。
わたしのデータの組み方、ビルドというのだっけ、は〈障壁〉特化巫女。攻撃手段を全く持たない、〈障壁〉の強さだけを求めた組み方。
わたし一人じゃ万が一エネミーに遭遇した場合に対処できないから。
そして一緒に依頼を受けよう、といえる人がいないから。
「…やっぱり、大人の人多いなぁー……」
ぱっと見渡しただけでもわかる、圧倒的に背の高い人たち。男の人も、女の人もいるけど。でもみんなわたしなんかよりも、ずっと、ずっと大人ばっかりで。
怖い。
そっと耳を頭にぴったり押さえつけて丸くなる。
大丈夫、もう誰も傷めつけてこない。怯える必要なんてない。わかってはいるのに。
怖いよ。
「だーろぉ?だからさー俺、ひと山当てようかと思ってー」
ビクリ、と肩を震わせたのはなんでだったか。
聞き覚えのある、気がする声がしたからだったか。それともはたまた声音にどこかあの人達を思わせるものを感じたからか。
思わず聞こえた声に反応して顔を上げると、男の人と女の人が広場を横切って行く、そのすれ違う瞬間だった。
「えーでもマージぃ?テン街道にー誰も知らないダンジョンがあるのぉー?」
反射的に駄目だ、と感じてそろそろと立ち上がる。
この人達のそばはいけない。なにか、なにか嫌な予感がする。
関わっちゃいけない。そんな気がして。
パッと反対側に走りだそうとした瞬間。
広場の反対側の真っ赤な服の〈守護戦士〉さんと目があった。
きょとんとした目。それが次の瞬間に悪戯っぽい、楽しそうな目に。そしてこちらを手招きする動作。それに合わせて気づいたらしい他の人たちも振り返る。
周りを見渡してもわたしの他にそっちを見ている人はいなくって。だからその手招きがわたしを呼んでいる、ことはわかる。
わかるけど。
足がすくむ。
大丈夫、だろうか。あの人達とは違うだろうか。
大人に混じって、上手くやれるだろうか。
わかんない。わかんないけど。
大きく、息を吸って。
わたしは一歩前に踏み出した。
セッション時系列的に、この子の冒険はこれが最初。
ちゃんと仲間たちとダンジョン攻略して、
[籠目の千早]をゲットしてキャッキャしながら帰ってくることでしょう。