子狐神祇官の最初の一歩
駆け抜けた先は、まぶしすぎる光の中だった。
ミノリちゃんの言葉を信じるがまま。押し出されて、あの長くくらい廊下を駆け抜けて、飛び出した先はギルド会館の廊下。
そこで、沢山の人に囲まれて、固まっているうちにあ大丈夫だよ、とかもう怖がらなくてもいいよ、とかいろんな言葉をかけられて。
別のとこでは色々あったみたい、と言うのは後から聞いた話。
そんななかで、わたしは光の中に放り出されて。
それでもどうしたらいいのかわからなかったの。
「大丈夫?」
ぼんやりと、ギルド会館の端っこに座り込んで助けてくれた人たちが一緒にいたみんなに服とか手続きのやり方とかを説明しているのを見ていると、不意に横から声をかけられた。
思わず肩を震わせて。
パッと振り返った先には薄緑色の髪を長く伸ばした女の人。
おずおずと手を伸ばしたようなポーズで、あ、と声を上げて止まってしまったその人に悪気がないのはすぐにわかって。
でも、やっぱり急に声をかけられたりすると、どうにも怖くって。
「ご、ごめんなさいっ」
パッと立ち上がって慌てて頭を下げてしまう。
反射的に身についてしまった癖、というか。
大人の、特に男の人の声には過剰反応してしまうし。できれば誰かの後ろに隠れていたい。
手を伸ばしていいのか、わかんない。
けど、そんなわたしにかけてくれるその人の声はすっごく優しくって。
「謝らんでもええよ、もう大丈夫やよ」
ゆっくりと、頭に置かれ手にも思わずびくっと体が震えてしまう、けど。
その手は優しくて。こんな状況になってから初めてこんなふうに触れてくれる人に会えて。
「大丈夫、もう見捨てたりせえへんから」
くしゃり、と撫でられた髪の毛がくすぐったい。久々に感じるぬくもりも心地いい。けれど、何よりも。
「遅うなってごめんな?」
見上げた、ふわりと咲いた、その人の笑顔に。
一筋の温かい涙が零れ落ちるのと同時に見惚れていた。
後で、この人がわたしたちを助けてくれた〈三日月同盟〉のギルドマスターであり、〈アキバのひまわり〉とその笑顔から呼ばれている事を知って、凄く納得したのを覚えている。
この人みたいに、周りを優しい気持ちにさせられる人になりたい。
そう、願って一歩踏み出した。
それが、わたしの〈三日月同盟〉への志望理由。
ようやく最初の前置き完了です。
こっから参加したセッションの話がちょくちょく出てくることになるかな。
やっとこの子らしさを表に出せます…ε=(´∀`*)ホッ