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子狐神祇官の悪夢

「さー、チビスケどこ行ったー?」


わたしの意思とは関係なくカタカタと震える身体。

上げてしまいそうになる悲鳴を必死で両手で抑えて樹の根元でうずくまって。

近づいてくる男たちの足音に怯えながら。わたしはただ考えていた。


どうして、どうしてこんなことになってしまったんだろう。


ギュッと縮こまった、その拍子に目の前にウィンドウが飛び出す。

メニュー画面、ゲーム時代に使いこなすことが必須だった、データの画面。

そこに出てくるのは無情なまでの現実。


キャラクターネーム、コハギ。種族は狐尾族。

メイン職業は〈神祇官〉。レベルは22。サブ職業の〈調剤師〉のレベルは43。


所属ギルド、〈ハーメルン〉。

どうして、こんなギルドに入っちゃったのだろう。


くいしばったはずの歯がカチカチと震え、文字を眺める眼から涙が一つ、こぼれ落ちる。

誰も頼れなくって。ウロウロと町中を彷徨っていた時に声をかけられた。

その時はこんなところだと思ってなくって。ただ誰かと一緒にいたくって。

でもそれは、間違いだったのかもしれない。

この世界は誰も頼ってはいけない場所だったのかもしれない。


「逃げられると思うなよぉ?」


さっきよりもずっと近い所で聞こえた声に身体がビクッと震え上がる。

思わずひうっと喉を通った空気が変な声を立ててしまう。

ダメなのに。見つかったら、見つかったら殺されてしまう。連れ戻されてしまう。あの薄暗い、コンクリートの部屋に。


それは嫌なのに。

逃げないといけないのに。

身体は動かない。


「みぃつけた。」


飛び出す小さな悲鳴は、首の真横にダンっと強く叩きつけられた拳の音でかき消された。


「なぁ、お前俺らから逃げられるとでも思ったの?」


抑えていた震えが止まらない。

恐る恐る見上げているはずなのに、焦点は合わなくって。見ているはずの〈ハーメルン〉の大人たちの顔もよくわかんない。


「何もできないお前ら初心者に住む場所と仕事を与えてやったのは誰だと思ってるんだ?」


グイッとショートの黄色い髪を掴まれて引っ張りあげられる。

その痛みも、喉から漏れるよくわからない声も、わたしのものとは思えない。

どこか、遠くでの出来事みたい。


「まぁいい。お前、逃げたってことはそれ相応の罰も覚悟しているんだろうな?」


止まらない声、震え。それに背筋を伝う寒気。

言われている言葉が頭に入ってこない。

入ってこないけど、この後に続く事がなにかだけは悟ってしまう。


「安心しろ、〈大神殿〉には迎えに行ってやる」


振りかざされる、銀色に光る剣。

月明かりに煌めいたそれが振り下ろされるより先に、反射的に悲鳴が飛び出す。


「あぁぁぁぁ―――!!」


ナニカガ ワレル オトガ シタ。

もーちょっとだけ、セッションで出会った人達と出会うのは先になりそうです(・ω・)ノ

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