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きらびやかに輝く満天の星空を、少女は見上げていた。海賊専門の泥棒である少女は今、敵船の中にいる。あまりの綺麗な星達に見とれてしまい、自分の状況を忘れていた。

いけない。今のうちにこの宝石を盗まないと。

少女は今しがた倒してきた見張りの数人の猛者達に目をやる。相手がもっと増え、幹部達が出てきては面倒だ。

他の猛者達を起こさないよう、ゆっくり進むと、先ほど自分が乗ってきた小舟が海に揺らめいていた。

よかった。今回も無事に・・・

バン!

後ろから大きな物音がした。

「お頭、マグマッグです!!海の怪物マグマッグが2時の方角に出ました!」

「何?何頭だ?」

「そ、それが」

ウゴゴゴゴ。

大きな尻尾のようなものが2時の方向に出没する。

「ギィィィィ!」

「うわっ!」

マグマッグが甲高い声で鳴くと、猛者の耳が潰れそうに痛んだ。離れていたが少女も例外ではなく。

「あ、たま・・・が」

少女の声に気が付き、猛者が大声をあげる。

「何だあの女!?」

「今は女などに構っている余裕はない。ったく、見張りの奴らはどうしたんだ?」

赤い目をした海賊の頭は倒れている仲間に目をやると、はーっとため息をついた。

「ヴァン船長、どうしやすか?」

「・・・全大砲用意!」

ドン!ドン!

大砲から放たれた球が目標に直撃しているはずなのに、マグマッグは一向に船から離れない。

「こりゃ、オスの方だな」

ヴァンが冷静にそう呟いたそのすぐ後、急に雲行きが怪しくなり、数分後には凄まじい雨が降り、雷が鳴りだした。ヴァンはタバコの火が付きにくくなっているのに苛立ちを覚える。

時間が経つにつれ状況は悪化し、船の揺れは大きくなっていった。

「きゃあああ!」

少女が手元の宝石を落とすと、カラカラと鳴り船を伝った。

「あれは!?あの女。俺の宝石盗もうとしやがったな」

「お、お頭、今は宝石より命の方が大じ・・・」

下っ端が言い終わる前にヴァンがもの凄いスピードで宝石の後を追いかける。

「私の宝石が!」

続いて少女も追いかける。

2人が同時に宝石を掴みかけたその時、マグマッグの体に押し上げられ船が垂直になった。必至に船体にしがみ付いていた海賊達がどんどん海に投げ出される。

「うおお!」

ヴァンは船の先の手すりに摑まりふうっと息を吐く。だが下半身に妙な違和感を覚えた。見ると、先ほどの少女が自分の足にしがみ付いている。

「おいおい、嬢ちゃん離してくんねーかな」

「離したら私、海に落ちちゃうじゃない!」

「あのな~。何で俺がお前の心配しなきゃならねぇ。重いんだよ。落ちろ」

ヴァンは腰に携えていた拳銃をゴリゴリと少女のこめかみに押さえつけた。

「ええええ!」

少女の驚きの声も嵐にかき消される。その顔を冷静に見ていたヴァンだがすぐに絶句した。

「お前は!?・・・気が変わった。お前を助けよう」

ヴァンは拳銃を終うと、その空いた手で少女の片手を掴み、ぐいっと自分の顔の位置まで引き上げた。

しばらくヴァンは少女を睨みつけるように見つめた。

「な、何ですか?」

「沈むぞ」

「えっ?」

ヴァンがぶっきらぼうにそう告げると、船はみるみるうちに海の中へと入っていく。

「目つむってろ」

ヴァンに言われたからではないが、少女はその光景が怖くてぎゅっと目をつむった。



うっすらと少女が目覚めた時は、見知らぬ天井、見知らぬベッドの上だった。




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