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VRMMOFPS

 あるゲームが流行っていた。

 それは、俺の生活になくてはならないと言っても過言じゃない。

 その名もVRMMOFPS―バーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ファースト・パーソン・シューティング。

 俺たちはこれを昔のゲームのジャンルからとってきて、簡単にFPSと呼んでいる。

 FPSとはいったい何なのか?

 簡単に言ってしまえば銃などを使った戦争ゲーム。

 しかし、そんな野蛮なゲームがなぜ俺の生活になくてはならないのか?

 理由は単純さ。

 俺の所属する部活がFPS部、だからだ。

 戦争ゲームをする部活なんてあってたまるかなんていう時代は随分と昔のことだ。

 今、この時代には公式に学校対抗戦なんか常日頃行われている。

 もちろん強豪校もいたりするわけだが、俺たちの学校は中堅といったところ。

 具体的な活動内容は銃器の扱い方を覚えたり、照準の練習、体力をつけるために外周や筋トレもしたりする。

 そのほかに実践練習などもする。

 体力作りはとても重要なトレーニングメニューだ。

 ゲームなのに体力作りが必要なのかという疑問もこの時代にはない。

 FPSと言っても、一昔前の平面のモニターで行われるただの戦争ゲームではないという点が重要だ。

 そうだからこそ、今この時代に部活として存在しているのだろう。

 つまり、自分の体力や運動神経、容姿などを反映することのできる究極のハードが数十年前に登場した。

 その名もMG――マジック・ギア。通称マジギア。

 マジギアは頭から足まで体全部がすっぽりとはまるボックス状の装置があり、そこに自分の体をはめ込める。

 どういう構造、仕組みなのかは正直そいつを発明した人物でもないので詳しくはわからんが、見た感じではボックスの内側には脳に直接呼びかけるなんらかの装置が複数あり、脳だけではなく体をスキャンする特殊な装置もついてあることが見てわかる。

 おそらく、装置からは脳に直接視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの五感情報を与えらる仕組みになっていると思うのが妥当か。スキャンする装置は容姿から細かな脂肪や筋肉量などもが測定されるんだろう。

 そして、それら全てが仮想世界に反映されることになっているはずだ。

 仮想世界で歩き回ることはおろか、食事から風呂だって入ることができる。

 しかし、これではいくつか心配する点があると思う。仮想世界で歩くように指令を出すと、現実の自分が歩いてしまうじゃないかという点である。マジギアにはこのようなことが起きないように対策が施されてある。

 現実の自分への命令信号は全てシャットアウトされるようになっているのだ。

 だから、仮想世界で歩いても現実の自分が歩き出すことはない。

 反対に仮想世界で行った行動、たとえば筋トレや食事といった物理的な行動については現実の自分に反映されることはない。

 つまり、仮想世界で筋トレをしたところで現実の自分に筋肉はつかないし、食事も同じように空腹を満たすことは不可能だ。一応ゲーム世界での空腹を満たすことはできるが、現実ではお腹が空腹なのにはかわりがなく、一週間マジギアを連続で装着した人が死亡した例もあるので、そこらへんは注意しなければならない。

 しかし、これは物理的な行動についてであって、見たことや感じたこと、経験したことなどは現実の自分に反映され、忘れることはない。

 それに加えて、仮想世界の自分への信号命令はシャットアウトされないようになっている。

 空腹や尿意も含んだ、まあ五感全てのことだが、現実世界に起きたことは全て仮想世界で気づくことができる。

 だから、マジギアをプレイするときは安全な場所でする点に気を付けなければならない。

 そいうことで、俺らの部室にも鍵付の仕切りがあって、自身を保護できるようになっている。プレイ中にどつかれたりする隙が丸出しなわけだし、コレはとても重要。

 その他にもマジギアには色々な特性がある。

 つまるところ、現実世界の自分を仮想世界へと連れて行くことを可能とする素晴らしい装置がマジック・ギアってことだ。

 そして、そんな俺もFPS部に入部して一年が経ち二年生へと進級したわけだ。

そういうわけで、新一年生を獲得すべく部活勧誘をしなければいかんかった。

 が、今年の一年はおかしなやつらばかりだったとは、当時の俺は知るよしもなかった。

 別にそんなやつらを勧誘したことについて後悔などはしていない。

 そんなやつらも含めて俺はこの部活が好きだし、この俺の目標、全国大会出場も果たされた。

 しかしなぁ、こんなあっさりとその目標が達成されようとは……。

 県大会出場すら怪しい俺たちが全国大会への切符を手に入れてしまったのだ。

 これでいいのか?

 これもこいつらのおかげなんだがな。

 そう、この春に俺は超人たちと出会ったのだった。

 俺は出会いたくなかったかな――。


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