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試験3


 リングに上がったシャロンを、皆が静かに見つめていた。試験官も、スヴェンの時のように声をかけてはこない。

 この状況に、シャロンは苦笑いを顔に浮かべる。

 

「うーん…あまり注目されても困なあ。僕は兄さんと違って目立つの苦手だから」


 そう言ってちらりと兄を見ると、睨まれた。兄の期待通りな反応に、くすくす笑っていると対戦相手が扉の向こうから登場した。


 意外や意外。対戦相手は女性だった。彼女は右手に一丁の銃を握っている。シャロンはにこりと笑った。


 ――武器(えもの)は同じかぁ。


 シャロンも腰に下げているホルダーから一丁の銃を取り出した。ホルダーの中には二丁の銃が入っているが、彼はあえて片方だけを手に取った。


 試合開始の合図がまだだというのに、彼女は既に銃を構えていた。対してシャロンはやる気があるのかないのか、銃を構えるどころか戦闘態勢を取っているようにすら見えない。


 ただ終始微笑んでいるだけだった。


「お手柔らかに」


 そうシャロンが口にした直後、開始の合図が告げられた。開始と同時に、彼女はシャロン目掛けて銃を連射。


 シャロンは走った。


 もちろんサイドに。と言いたいが、違う。彼は彼女のもとへ走り出した。撃って来る相手の方へ走るなど、正気の沙汰ではない。普通は弾に当たって死ぬ。


 しかし、シャロンには不思議と当たらなかった。いや、正しくは彼が弾を避けていたと言うべきか。


 棲さまじい速さで彼女に近づいたシャロンは、まず彼女の右手に蹴りを入れた。蹴りの衝撃で彼女は銃を手放してしまう。急いで銃を拾おうとした彼女だが、時既に遅し。額には冷たいものが、カチリと押し当てられていた。


 彼女の額に銃口を向けて、シャロンは柔らかくほほ笑む。


「はい、チェックメイト。さあ、どうする?降参する?」


 彼女は感情のつかめない笑みを睨みつつも、ゆっくりと両手を上げた。


「ええ…。降参、だわ…」


 その言葉を聞き、シャロンは彼女から銃口を下げた。


「勝者、45番」


 シャロンは試験官に一礼してリングを降りた。



「お前、手加減しすぎだろ」


 戻って開口一番にそんなことを言う兄に、弟は溜息を吐いた。


「手加減って、相手は女性だよ?それに、殺さなきゃいけないってルールでもないしね」


「だからお前は甘いんだ。相手は囚人だぞ?しかも死刑決定済みのな。生かしといたって、どうせ死ぬんだ」


「それなら、尚更僕が殺す必要は無いでしょ。必要以上の殺生はしない主義なんだ」


 弟の言葉に、スヴェンは呆れ顔で息を吐いた。


「…その甘いプライドは捨てろ。じゃなきゃ、それのせいで命落とすぞ」


 凄みを利かせた兄の言葉に、シャロンは両肩を上げただけだった。


 その後も、二人は順調に勝ち進み、48名いた受験者は残り5名となった。試験中、この監獄を出て行った者は一人もいない。43名は屍となって、どこか別の場所へ消えた。



 

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